第二百十話
拠点防衛をしているメンバーというのは、それ相応の実勢を積んでいる。
拠点として機能するがそこまで大きいというものではない場合、奇襲を仕掛けやすい。
それは拠点を防衛しているもの達もわかっているので、奇襲に備えている。
一応、警笛すら鳴らさないことにも理由はあるのだが、それは置いておこう。
ただ一つ確かなのは、一応、防衛任務中の彼らは、雇って常駐させておいて損はないレベルに仕上がっている。ということだ。
ただし……神器は、それを構成している物質ゆえに、理不尽が存在する。
秀星が予想する拠点攻略の難易度。
一番難易度が高い拠点にアースーが向かっているとして、
アースー、リアン、アレシア、デイビット、ミラベル、アリアナ。
と言う順番だ。
要するに、アースーが今挑んでいる拠点が一番難易度が高い。
しかし……今までの努力だとか、そう言ったものを全て踏みにじることが出来る力が、神器には備わっている。
「おりゃあああああ!」
「ギイヤアアアアア!」
アースーが冷気を生み出して、それを槍みたいに固めて射出する。
魔法としても超能力としても別に珍しい手段と言うわけで刃ない。
魔法なら『アイスランス』みたいな感じでそのような魔法が存在するだろうし、空気分子の調節やサイコキネシスの分野を利用することで氷の槍を射出できるものは多いだろう。
だが、威力、速度、数、強度。全てが想定を超えるとなると、対応などできない。
必ず……とは言いきれないが、当たるものだ。
それだけで戦線が崩壊し、アースーがぶち抜くのだ。
……まあ、今回は拘束することが目的である。
実際、アースーは威力だけはギリギリ気絶するにとどまる程度に抑えている。
とはいえ、狭い通路でそう言うことをされるとかなり怖いものである。
「ふう、すっきりした」
最近いろいろと問題が生じているエインズワース王国。
いや、政務に影響はないがたくらんでいるものが多すぎる。
というわけで、彼としてもストレスがたまるのだ。
左腕に帯状疱疹ができたくらいには疲れとストレスがたまっている。
まあ、それはもう直したのだが、あれがもう痛いのなんのって。
そんな感じで、この拠点に攻め込むのはノリノリだった。王としてどうなのかと言わざるを得ないだろう。
「さてと、それにしても、いろいろと資料があるなぁ……」
見る限り量もすごい。
それでいて、電子媒体が少ない。
しかも、通信されていないというか、電子的なつながりが薄いようだ。
資料室にはファイルが大量に並んでいる。
「すごい数ですね」
「だね。ただ……エレベーターもエスカレーターもないし階段も少ないのに、資料室の数がすごく少ないっていう、研究員に喧嘩を売っているとしか思えない設計だけど……」
攻め込まれた際の対応にかかり切りと言っていい。
ただ、それにしては隊員の戦力が微妙だが。
「かなり入り組んでるなぁ……ええと。こっちだね」
超能力で作った音波を利用して周辺の構造を確認。
まっすぐ階段に向かって進んでいく。
セオリーで動いているものや、経験から来るもので動いているものが多い中。
ある意味、アースーが一番力技で進んでいるようだ。




