第二百一話
チームメンバーの変更はない。
ただし、ある程度のエリアの再振り分けはあった。
というより、秀星チームが集めた情報が他と比べて多すぎたので、エリアを調節しないと秀星のチームが突出してしまうのだ。
そうなると問題が増えるので、組み替えたわけである。
それぞれのチームのリーダーから方法やコツについて質問されたが、さすがに本当にやっていることを伝えたとしても、答えにはなるが参考にはならないので、疑似的にそれを行うための魔法をいくつか教えた。
さすが、魔法国家の公安。それも探索特化のチーム。
ある意味『完成された魔法』を提供するオールマジック・タブレットの中でも難易度がそこそこの魔法を即座に習得、魔法の効力をキーワード管理して使いこなしていた。
コツとかそう言ったものではなく技術力の差があったと、悔しそうではあったが納得していたメンバーを見て、良いチームだと思いながら秀星はリアンと探索を始めた。
「間引きから拠点発見に完全シフトするって言われましたけど、実際、見つける方法ってあるんですか?」
ある程度の任務をデータとして転送して伝えられたが、あくまでも戦闘員であるリアンは流石にまだそのあたり慣れていないようだ。
「拠点って言う以上、必ず誰かの意思が介在するから、ちょっとでも痕跡が見つかれば何とかなるよ」
「そうですか?ランダムって可能性もあると思いますけど」
「そのランダムって言うのが一番難しいんだよな」
「はぁ……そうですか?」
「たとえば、黒板にチョークで円を書いて、そのなかにマグネットを五つランダムにおけって言われた時、ランダムだからどこにおいてもいいわけだが、俺の場合は癖で一つずつ手に取って等間隔に、十字型に置く。それと似たようなもんだ」
「確かにそうですね。拠点と言うと重要なものになりますから、本当にサイコロで決める人はいないでしょうし」
「そういうことだ」
秀星はいろいろと思うところはあるが、リアンと言うのは本当に戦闘特化だと感じた。
確かに、リアンのスキルを考えると、あまり誰かと組んでも意味が無い。
いや、自分よりも格上の人間と組めば、その格上の人間からリアンに対する評価の情報を得られるのだが、人材不足なので分けられるだろう。
知らないことを知るためには調べるしかないし、調べてもわからないのなら聞くしかない。
人と接することを避けようとするリアンは、その経験が少ないように秀星は感じる。
秀星も人のことは言えないのだが。
「それで、決定的な手掛かりってあったんですか?」
「いや、じつはこれがさっぱりなんだよな」
「え?」
首をかしげるリアン。
当然である。
とはいえ、本当に手掛かりといえるものがなかったのは事実だ。
この場所に拠点があるというものにつながるかどうかと言われると変な分類である。
拠点を作るのであれば、機材を空から運んでくるか陸で運搬するかのどちらかなのだが、空であれば魔法国家であるエインズワース王国は大体気が付くだろう。
前国王であるアーロンが見落とすとは思えない。
だがしかし、陸で運搬するとなれば必然的に存在するはずの車輪の跡がなかった。
靴の痕跡はあったが車輪はない。
ここまで来ると意味不明だ。
もちろん、コンテナを低空飛行で運び込んだ可能性も十分にあるのだが、ありとあらゆる可能性を考えていると日が五回は暮れるので除外する。
「じゃあ、拠点ってないんですか?」
「いや、あるよ。シンプルで、技術力がぶっちぎっていれば十分にできる方法がな」
「それって順番に考えていたら日が暮れると思いますけど」
「まあそうなんだが、今回の場合は別空間に作るタイプの拠点だな」
やりたいことや言いたいことを統合すると、イリーガル・ドラゴンが沖野宮高校に来て合同訓練した時に秀星が作った『コリドー・コネクター』と同じようなものである。
秀星が作ったものはとても便利だが地獄のような燃費の悪さを誇る。
様々な組織の技術が集まった組織であれば、ある程度便利さを下げても十分満足できる性能になるだろう。
別の空間にそういった拠点を作ることで、敵の近くでも感知されることなく作ることが出来るのだ。
とはいえ、その別空間のための拠点にも色々種類はある。
秀星が探索しているのは、その種類を特定するためだ。
最初から、草根をかきわけて見つかるような場所に拠点の入り口があるとは思っていない。
そして、その拠点が神器の場合、オールマジック・タブレットでは若干荷が重い。
そのため地道に探している。
「かなりぶっとんだ技術力ですね」
「頭がおかしい連中が多いんだろ。そう言った奴らは、自分が作った成果を見せびらかしたり、組織の中でも誇示するのに余念がないんだ。要するに、保管されず使ってるってことだよ」
秀星は森の中でも湖があるエリアに来た。
かなりたまっているようだが、何処ともつながっておらず、波もない場所。
「で、ある程度ゲートの展開に衝撃が発生するパターンなら、地面に立ってやりたくはない。その際に一番簡単な方法は、湖の上に、つくることだ」
何もないように見える湖。
だが秀星の瞳には、魔力の密集部分が映っていた。
リアンもスキルを使って、秀星が得た情報を得る。
「こんな簡単に見つかるなんて……」
「コツさえつかめば、相手がどれほど技術力があろうと、想像力があろうと、だいたいわかるもんだ」
秀星はどうしたものかと思いながら、その魔力の集合体を見つめていた。




