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第百九十七話

「そこまで急激に増えてる様子がないんだがな」


 生態系と言うのは、天敵が紛れ込んだり、バランスが取れないほど乱獲しない限り安定して続いて行くものだ。

 ただし、秀星が森を見た限り、そこまで数が変わっているようには見えない。


「じゃあ、そもそも、生態系の変化でダイオウイカが来たわけではないということですか?」

「俺はそう思う。ていうか、よほど大規模なことにならない限り、あのイカが移動してくるなんてことにはならないだろ」


 そもそも、あのダイオウイカが脅威と感じる状況があるとすれば、それは餌が急激に少なくなるか、ダイオウイカを倒せるレベルの大型モンスターがダイオウイカの生息区域に来ることだ。

 ただし、大規模な環境変化があった形跡はなく、大方生物と言う点に関してもあのダイオウイカの食生活を同じとする巨大生物が寄ってきて、さらにそれがダイオウイカ以上の存在でなければならない。

 明らかに食物連鎖の頂点あたりに立っていそうなあのダイオウイカが追いだされた。

 生半可な事情ではないが、だからと言ってそれを説明できるほど大規模なことが起こっていない。


「考えられる原因としては……人為的なものですよね」

「ダイオウイカは海にいる生物だからな。よほどのことがあったと思うんだが……なんか、森に入ってから、普通に狩猟にきた気分だ」


 異世界でも地球でもモンスターの間引きをしたことがある秀星だが、平常時と同じだ。


「まあ、モンスター側はそんなこと関係ないから襲ってくるんだけどな」

「当然ですね」

「当然だ。で、多分どこかの誰かが拠点か何か作ってそこから何か迷惑なことをおっぱじめてるんだろうけど、俺としてはそれを見つけるべきだと思うがな」

「誰かがこの島で何かをたくらんでるってことですか?」

「そもそも、エインズワース王国の近隣にある島だが、鉱山を持っている国からすれば、少なからず危険がある島なんて入っても仕方がないからな。ちょっと資料を確認すれば、それはそれなりにひとが入っているのは分かったよ」

「僕、知らされてないんですけどね」

「そこは分からんよ」


 秀星としては、上層部が何かを隠していると思う。

 そもそも、現国王であるアースーと知り合いの秀星だが、その肝心のアースーの権力は浅く広い。

 どうしても見れないもの。見ることができないものがある。

 秀星から見て、アースーに継承された神器は脳の機能の向上だ。

 神器クラスとなると、制限されているとはいえ国の運営くらいは滞りなくできるだろう。

 だが、アースーを見る限りでは、確かに悪くはないが特別良くもない。

 おそらくそうなるように制限項目を調節されている。

 アーロンの資料を確認した範囲ではいろいろ出来そうだったが、おそらく、制限との付き合い方がよかったのだ。


 さて、それはそれとして、どうしてもアースーには見えないところがある。

 人が集まれば、誰かにとっての死角が出来るのは必然である。

 そういった場所に何かを置く。それだけでいいのだ。アースー以上に政治の世界で生きている人間からすれば楽なものだろう。

 秀星にも言えることだが、神器使いと言うのは、その神器込みの実力を考えると『天才』ではあるが『優秀』ではない。

 当然、本当に政治の世界で生きていくとなれば、秀星にだって隙はできるだろう。


 そういった場所に入りこんでいる者達をどうにか動かす必要がありそうだ。

 最も、そんな権限はアースーにはまだないだろう。

 王権神授説などと言うものはエインズワース王国には存在しない。


「ま、俺達は俺達でできることをするしかないってことだ。ただ、ほぼ確実に人為的に何かがあったのは事実だ。そのあたりも探すぞ」

「はい」


 面倒なことになったな。と思いながら、秀星は進んでいた。

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