第百九十三話
「まーた出てきたのか」
秀星は再びの空中遊泳中である。
どうやら、別の海域からモンスターが泳いできたそうで、その対応をしてほしいとのことだった。
「別の海域からか……そうなると、そっちでも原因があったりするもんだが、一体どうなってんだろ」
ちなみに海中での魔法戦闘は可能なのかどうかと言われると普通にできる。
魔法そのものを付与術で保護してしまえばいいのだから簡単な話だ。
神器が十個もあるといろいろなところで過剰戦力になる。
まだモンスターは海域を移動中というだけであって、まだ貿易ルートに接触しているわけではない。
魔石産業が主軸なのでいずれにせよ無視はできない。
最近、対応の難しいモンスターによる接近はほとんどなかったそうなのだが、最近は多いようだ。
ちなみに、後がなくなると王が直々に出てきたり、魔石貿易が滞ると困る国が必要な戦力を送ってくるそうだ。
「……ある程度まとまったモンスターの反応は向こうか」
海の有る一点を見てそうつぶやく秀星。
アルテマセンスのおかげで、意識すれば感覚神経が通常の数倍レベルではすまないくらいまで引き上げることが出来る。
ただ……。
「なんだあれ」
遠目からだと若干分かりにくい。
近づいていく秀星。
ただ、そんな秀星の耳に、モーター音が聞こえてくる。
振り向くと、モーターボートを乗り回す少年がいた。
金髪碧眼で儚い印象のある少年だ。
「誰だ?」
視線を向けていると、向こうもこちらに気が付いたようだ。
ボートは当然まだ乗れそうだったので、爆走中だが、乗ることにする。
「ふう……で、すまんな。自己紹介した方がいいか?」
「飛行魔法はともかく、爆走中のモーターボートに降りることが出来るなんてね……僕はリアン・フローレス。簡単に言えば、MGPの一員だよ。あと、僕は君のこと知ってるから、別に言わなくてもいいよ」
リアンはそういって、進行方向に視線を戻す。
「モンスターがこのあたりにいるっていうのは気が付いてるよな」
「もちろん。それくらいのことは分かってる」
「俺もそれを倒すように言われているんだが……共闘した方がいいか?」
「いや、僕の戦闘手段からすると、今は黙ってみてるだけでいいよ」
秀星はそう言うリアンの言葉の中に、事実であると同時に、まだ何か違うものが混ざっている気がした。
そして、それを理解したうえで、秀星は頷く。
「なら、ボートの上で待ってるのはそれなりにマズいな。空で待ってる」
「それでいい」
リアンはこちらに目を向けない。
秀星はそこは気にしていない。
ただ、これから出現するであろう海のモンスターに対して、剣一本でどう戦うのか、それを知りたいと思った。