第百八十四話
現状、まだ多くのことは終わっていないに等しい。
秀星はまだエインズワース王国ことで知らないことが多すぎる。
そのため、執拗に狙ってくるFTRがどんな目的で動いているのかが分からない。
そうなると、一体どれほど重要なことに首を突っ込んでいるのかが分からないのだ。
もちろん、仕掛けてくればそれを返り討ちにすることはたやすい。
しかしそれだけでは根本的な解決にならないのだ。
こちらから打って出るくらいじゃないと、作戦を考えている奴も懲りないだろう。
面倒なのは、神器を二つ使った状態では、秀星には勝てないがアースーには勝てる。という目安が既にFTRの中に存在するということである。
相性の問題もいろいろあるのだが、基本的には神器の数と言うのはそれだけで十分力になる。
さらに言えば、上位神が作った神器も中にはあると分かった。
こうなってくると、秀星がその場にいるかいないかでかなり変わってくる。
厄介なのは、明美が襲撃してきたとき、秀星が明美を倒したと言う状況の目撃者が多いことだ。
人の口には戸が立てられないというのは当たり前と言うよりただの常識だが、今の状況もほぼ変わらない。
そのため、エインズワース王国にとって、現状、いざという時の最終手段はアースーではなく秀星になってしまっている。
別に秀星はこの国に骨を埋めるつもりはない。
一部のものに一夫多妻制が適用されるという、ハーレム系小説でラブコメった後に結婚を考え始めるとヤバいことになりそうなものを一気に解決してくれそうな制度もあるが、骨を埋めるつもりはない。
アレシアも今は政務にちょくちょく顔を出している程度であり、現在は鍛えている最中だ。
神器クラスになるまでブーストしているだけとはいえ、そう言ったものを持っている相手に手も足も出なかった。
しかも、自分の能力を勘違いしたままである。
このままではダメだと思ったのだろう。
アレシアらしいと秀星は思う。
ただし、羽計以上にアレシアはまじめであり、確かに本人の価値観で左右される状況もあるにはあるが、いつも全力で取り組んでいることは確かだ。
そのため、伸び悩んでいるというのが現状だろう。
ならば、その先に行くためにはどうすればいいのか。それが分からないようだ。
秀星からすれば、それは『想像力』というものだけですべて解決するものだと思う。
もともと、多くの常識と言うのは科学から来るものだ。
魔法と言うのは科学に対して正面から喧嘩を売る技術だが、まだ科学ほど単純ではないので、当たり前のことや常識と言った点では、多くの人間は魔法と言う存在を度外視しようとする。
だが、見るのをやめれば、それだけで止まってしまう。
できるかできないか。それを考える前に、まずやってみるといい。
できるかもしれないができないと思っている。などという中途半端な状況では、この先、神器持ちには通用しない。
とはいえ、今すぐにできることだって限られている。
一日。
一日だけでいいので、まず剣をおいて、しっかり考えること。
なぜなら、がむしゃらにやった努力など、神器持ちが持つ知識一つで吹き飛ぶからだ。
まとめるなら……。
社会が思っているよりは複雑だが、人が考えているよりは単純なのである。