第百八十三話
気になることは知っていそうな奴に聞くのが一番早い。ということは誰もが分かっていることだ。
セフィアに聞くのが一番早かったりするが、時折はぐらかしたりするので別の人に聞く方がいい時もそれはそれなりにある。
「なあ、アースー。ちょっと聞きたいことがあるんだが、アーロンの死因って何だ?」
「ん?どうしたの急に」
「いや、亡くなったことは知っていたけど、どうして亡くなったのか分からんからな」
というより死んでも元気なのだが。
朝起きた時に見たら女湯に突入していた。
ただし、さすがの魔法国家であるエインズワース王国であっても、幽霊を裁く法律は存在しない。
そもそもあっても無駄である。
魔法を使えることと幽霊を知覚であることは別問題なのだ。
「老衰だよ」
「……意外と短命なんだな」
「うん」
七十すらも生きることができないとは……。
「でも、父さんはまだ長い方だよ。大体五十歳で亡くなるが多いし」
「……ほう」
「基本的にはそうだね。でも、それは僕みたいな女っぽい感じの男だけで、ジークにいちゃんやシュラウドは違うんだよ」
「体の方が長くは持たないのか……」
死んでも魂が元気な奴が泣きながら廊下を歩いてるけどな。
おそらく風呂場に誰もいなかったのだろう。
「何かの代償みたいな話なのか?」
「そう言うわけではないと思っているけど、こればっかりは長年研究してもわからないんだよ。魔法や超能力に特化した人間がかなり生まれるし、僕みたいな見た目になる場合はそれも大きくなるんだ」
そう言う感じに聞くと、エインズワース王国の原点までさかのぼらなければならないような気がしてくるのですごく面倒なのだが、こればかりは考え始めた秀星が悪い。
「アーロンでも長く生きた方か……」
というより、五十年しか生きられないなど、医療技術が高くなった現代では考えられない。
戦国時代じゃないのだから。
「……ん?ていうか、もとから短命ってことか、それだけ生きていたアーロンは老衰で死ぬ間近だったってことだよな」
「そうだね」
「体力的に問題が出ていたはずだが……それでもあんなことやこんなことをやってたのか?」
「いや、そのあたりになればそれはそれなりに考慮したことをやっていたと僕は聞いているけどね」
アースーはげんなりしたような声でそう言った。
「……まあよく分からんが、アースーもいずれアーロンの二の舞になるのか?」
「言い方……まあでもそうなるかもしれないね。ところで、秀星って何連戦まで行けるの?」
「……」
秀星にはエリクサーブラッドがある。
そのため……。
「……基本的に制限はないな」
「うらやましいいいいいいいいいいい!」
吠えるアースー。
気持ちは分かるのだが、こればかりはどうしようもない。
そんなアースーを尻目に、秀星は椅子に座り直す。
(もとから短命か……どおりで、七十年も生きていない国王が死んでも悲観していないはずだ)
厳密には悲しんでいる人はいるだろう。あれで人気だったそうなので。
だが、割りきるにしろ受け入れるにしろ、そう言うものだったのかもしれない。
(それにしても、ここまで短命なのが国中で共通してるって言うのも珍しいな。ちょっと調べてみるか)