第百八十二話
「……もう帰るんだな」
「滞在することはいくらでもできるけどな。剣の精鋭としていろいろと日本ですることがあって、もうそろそろ戻っておいた方がいいんだよ」
「なるほど」
剣の精鋭としていろいろすることがあるらしい。
そういうことなら、とりあえずメンバー全員で楽しむために来てみた。というのが正確なところだろう。
「というわけで、私たちは早めに日本に帰るんだよ。秀星君たちも頑張ってね!」
「頑張るのはまあそうするが……雫、その月刊誌みたいなのは何だ?」
「写真集だよ!」
思いっきり表紙は英語だが、確かに写真集のようだ。
表紙にはアースーが写っている。
水着でのあれとか夏祭り中のあれこれを収録したものらしい。
「ちなみにこれは全部で五種類あるんだけど、私は全部買ったよ!」
「国民性……」
もうなんていうか、王って言うよりアイドルみたいな扱いである。
しかもかなり露骨な感じである。
アースーがノリノリと言うのが一番それに拍車をかけているだろう。
一体何考えてんだろ。アイツ。
「なんか……結局こうなった感じだな。で、そんなもの五冊も買って鞄の中大丈夫なのか?」
「♪」
ニコニコしている雫。
(……そう言えば、カースド・アイテムの中には収納機能があるものがあるな。ていうか、それがあるからたくさんあるカースド・アイテムを保管して置けるわけだが……すっかり忘れてた)
短剣二本しか基本的に使わないので記憶に残りにくいのだが、そういう奴だった。
「というか、秀星はどういった状況になったら帰って来るつもりなんだ?」
羽計が聞いて来る。
まあ当然の疑問だ。
「俺が思う『ほとぼり冷めた』って言える状況だな。まだ分かっていないことがいろいろあるんだよ」
「そうか……まあ、秀星なら大丈夫だろう」
「ああ。もちろん」
「ただ、わざと見ていない部分も多そうだけどね」
秀星は目を背けた。
風香、かなり鋭くなったものである。
「まあ、私はこの国でやっておきたいことはもう全部やったけど、やっぱり王族にかかわっちゃうと長くなるのね」
「私も魔装具の強化案もいろいろ考えることが出来るくらいには知識を集めました。秀星さんも頑張ってください」
千春とエイミーもそれぞれ仕上げたようだ。
次に見るタイミングが楽しみである。
「外国の祭りってどんなものかと思ってたけど、日本っぽくて楽しかったね」
「美咲も楽しかったです。ポチも楽しそうでしたよ」
「ふにゃあ~」
優奈と美咲が感想を述べる。
この二人に関しては、まあいつも通りと言えるが。
「まっ!いいじゃねえか。そんじゃ、オレたちも頑張るから、秀星もヘマするなよ!」
「ああ」
会話は終わりだ。
もうそろそろ時間と言うことで、来夏たちは荷物を引っ張って空港に入って行く。
一時間後、飛行機に乗って日本に帰って行く来夏たちを見て、秀星はこれからどうするか考え始める。
「第三王子……シュラウドだったか。アイツの裏に誰かがいるんだろうな」
かなりやみくもな感じだったが、そのようなものだろう。
器の狭いものほど、少し大きな力があるだけで傲慢になるものだ。
「アーロンも面倒な問題を残して死んだもんだな……そういえば……」
秀星は一つ、知らないことがあった。
「アーロンの死因って……なんだ?」