第百八十一話
打ち上げ花火が上がっている。
異世界に行く前、既に花火から興味がなくなり、ゲーム媒体やパソコンに向かっていた秀星だが、五年も異世界に行けばさすがに何か愛着がわき上がるというものだ。
秀星も、様々な魅力あるものには研鑽があることくらいは知っている。
花火が上がると聞いて、なんとなくそれを見ていたい気分になったのだ。
「この国でも打ち上げ花火ってあるんだな」
「日本から花火師に来てもらっています」
「国民の見た目が完全にヨーロッパ系で着物を着て花火見てるって言うのもなかなかギャップを感じるけどな」
「そんなものですよ」
「ホテルでも和食がすごかったが、あれって……」
「日本から来てもらっていますね」
「頼りきりだな」
「エインズワース王国は勤労意欲はありますが研究意欲が少々……」
七発連発で上がる花火を背にちょっとどんよりしてきた。
アレシアとこうして話している訳だが、やはりと言うか、国のことはよくわかっているのでこうして話すだけでもいいものである。
ちなみに、普段ドレス型の服装であるアレシアだが、今日は着物である。しかも白。
「まあでも、外国に来て祭りとかどうなるんだろうなって思ってたけど、これもこれでいいもんだな……アースーが神輿の上で踊ってる」
「……お兄様は相変わらずですね」
ノリがいいと言うか、どうでもいいことなら何でもやってやるというのがアースーの基本思考である。
それに、元々こういうのが好きなのだろう。
王様が神輿の上で踊っていいのかと言う点に関してはもうこの際置いておくことにする。
秀星だって思考放棄はするのだ。
「ひとまず、一段落着きましたね」
ふと、アレシアがそう言った。
「ま、問題は山積みだけどな」
「え?」
「いろいろあるんだが、根本的なところを考えると、何故FTRがエインズワース王国を狙い、そして国王まで殺そうとしたのか、それがまだ分かっていないし、そもそも、資金源が鉱山って言うのがなぁ」
「何もわかっていないということですね。そして、鉱山がだめと言うのは?」
「俺、魔法一発で鉱山を再使用不可能にできる」
「え?」
「そしておそらく、FTRにも似たようなことができるやつはいる。絶対的な存在じゃないんだこれが」
「……常識にとらわれるべきではない。ということですか?」
「アレシアには無理な話だけどな」
「……」
アレシアが表情を曇らせる。
「まあ、なんていうか、大丈夫だろ」
「……それもそうですね」
何故、とは聞かない。
どうして、というつもりもない。
秀星は、俺に任せろ。と言える強さがあり、それを示し続けているからだ。
「ま、今は楽しい祭りだ……アースーが射的の屋台に挑戦してるな。ていうか、射撃下手だな。念力で的の方を動かしてるけど」
「反則ですよ。お兄様……」
今日も平和である。