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第百七十三話

「尋問は終わったよ」

「そうか」


 次の日だった。

 明美を捕らえて次の日に、アースーがそう言ってきた。

 明美本人が抵抗したとしても無駄だということが分かっているのか……いや、違うな。


「まだ早いな。諦めたのか?」

「カテゴリとしてはそんな感じかな。FTRでは計画を提案した場合、上のものが許可するまでは基本的に出撃できないんだけど、彼女の階級だと独断専行は一応認められている見たい」

「ほう……」


 臨機応変が認められる立場ということだろう。確かに悪くはない。


「ただ……その独断専行権を行使した場合、失敗したら捨てられるんだ」

「……そうか」


 秀星は一つ、結論付けた。

 神器持ちですら、一度の失敗で切り捨てる。

 なるほど、それほど厳しい世界であるならば、独断専行権が認められている特権階級のものが秀星をはじめとした『底が見えない連中』に対して挑まないのも無理はない。

 だが、神器を二つ持っていたものですら、規定通り切り捨てる。

 一体どういうことなのか。


「……僕なら考えられないね。神器を二つ使っていた人を一度の失敗で捨てるなんて」

「俺も普通なら考えられないが……」


 絶対的な力を持つものであっても捨てられるパターンはいくつかある。

 神器を二つ持っている。ということはこの世界からの平均からすれば大きなことなので感覚が鈍るのだが、そのパターンを考えれば別に差はない。


「……そもそも、FTRという組織そのものが、大きな『契約』によって縛られていると思うがな」

「契約?」

「最初は性格的な問題かもしれないと思ったが、ぶっちゃけ、あの程度であれば犯罪組織なら許容範囲だろ」

「……まあ、確かに」

「性格が問題でないと分かれば、単純に組織のシステムなんだが……出来上ったばかりの組織は、お互いに信用ができてないから地盤がゆるゆるだ。最悪、一番強いものが恐怖支配をするしかないんだが、神器がかかわっている可能性がある」

「なるほど」

「だが、運営に適した神器ではないだろうな。神器のスペックを考えれば、そんな神器があれば今頃、FTRはすでにどこかの国を支配してるだろ」

「そう言うレベルか……」


 実際にそう言う神器を見たことがあるわけではない。

 ただ、非戦闘系の神器というのは、それだけで何か異様なものを持っている時がある。


「運営の神器ではないが、そういった状況になっているとすれば、できて現状維持の神器。となれば、『契約』くらいだろ」


 もっとも、下手にごちゃごちゃした効果を持つ神器より、『契約』という、絶対性があっても人が決めることが出来る神器の方がいい。


「でも、秀星がそう考えるのはそれだけじゃないよね」

「ああ。明美が何の躊躇もなく、俺を勧誘してきたことだ」


 通常ならあり得ない。


「確かに、俺が強いから寝返らせるというのは一つの手段だが、俺は日本にいた時も、数多くの犯罪組織を潰してきた。どれほど大きかろうと関係なくだ。普通に考えて、勧誘するよりは抹殺する方を優先するだろ」

「まあ、普通ならそうだね。あと、自分のことを普通に抹殺するとか、そう言うことを言える秀星の神経が太いって思うのは今更なのかな」

「今更だな」

「そっか」


 その程度なら今更である。

 ぶっちゃけ、恨まれることだっていろいろやってるし殺されそうになったら反撃はするが文句は言えないだろう。


「しかし……契約か……どんな感じなんだろ」

「単純に戻れないっていうだけじゃないだろうな……いっそ普通に送り返してみるか?」

「……」

「何だその目は」


 アースーは変なものを見るような目で秀星を見る。


「いや、俺だってな。わざわざ犯罪者を捕まえておくためだけに税金を使っているんだから、その駄賃として手紙を書いて郵便配達にすることくらいまでならちゃんと考えてるんだぞ?」

「秀星って時々世界観が違うこと言うよね」

「まあな」


 秀星だって五年間は異世界で過ごしているのだ。最近忘れられている気がするが。

 激動の五年間だったのだ。当然価値観も変わる。

 ただし、アルテマセンスのおかげで視野が広いため、普通に生きていけるというだけの話だ。


「とりあえず、今は政務の方をどうにか軌道に乗せることに集中するべきだと思うぞ」

「それもそうだね」


 まだ終わっていないことはいろいろある。

 ツケというのは、責任を負わなければならないものになればなるほど、大きくなるのだ。

 そして最初と言うのはまだ任せることができるほど部下が育っていない。

 さらに言えば、国力というのは日々の積み重ねである。

 手は抜かない方がいい。それだけのことだ。

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