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第百六十話

 秀星に対してなだれ込んできている訳だが、これは秀星の方に行けば名誉の戦死くらいと思われるのではないか。とか、どさくさに紛れて早く帰りたいものが群れている。

 秀星は一定以上の規模の魔法を使わないが、それでも、しっかり人数を削っていく。

 はっきり言って見苦しいものだが、マイナス方向にすごく理にかなっている。


 もとより、自分が今の地位で手にいれた利益を受けることに満足して鍛錬などサボっていたのだ。

 二割くらいは文官らしいが、それにしたって脆すぎである。


 既に勝つとか負けるとかそう言うことを考えず、退室することしか考えていない人間がほとんどだ。

 とはいえ、秀星に遭遇してすぐに退室できる人間はまだいい。

 中には、アーロンのアレで体力が全て奪われるが、敵のもとにたどり着くことができないもの達もいる。

 ジークフリートが言う『バカ四天王』もこれに分類する。


 そして、超能力派閥だが、士気は高い。

 暑さ対策の魔法をそれぞれ使っているが、疑似太陽の副次効果の影響であまりにも熱い。

 だが、理不尽なものはいる。


 秀星からすれば、数億人程度を相手にして、一度に付与魔法をかけることは可能だ。

 暑さが通用しなくなる魔法を使えばいいのだ。

 神器の力を使った上で作られた太陽のようだが、神器には到底及ばない。

 そのため、こちらが一方的に有利になるのだ。


「さて、そろそろお兄ちゃんと一騎打ちでもやってくるかな」

「いつの間にかアレシアもいなくなってるしな」


 適当に氷射出系の超能力を使いながら、ドントコ倒していく秀星。

 はっきり言ってアースーに出番がないのだ。

 王など、出番がないほうがいいと思うのだが、これは王位継承戦。

 王族が本当に強いのかどうか、それを国民にもしっかりと公開する必要があるのだ。

 今使っているこの施設だが、維持費も高いのに使用費はもっと高い。

 単に王を決める程度のことでいちいち引っ張り出していたらきりがない代物だそうだ。

 さりげなく王族をディスっているような匂いがプンプンするのだが、それはおいておくとする。


「じゃあ、行ってくる」

「逝ってらっしゃい」


 秀星はアースーを送り届けた。

 アースーは一瞬、『え?』と言いたそうな顔だったが、すぐに表情を戻して戦場の中心まで飛んでいく。


「それにしても、暑い中頑張る男の娘を見て肴とは……上級者だな。アーロン」

『それは褒め言葉なのかい?』

「いや、貶してる」

『ハッハッハ!手厳しいねぇ。まあ、エインズワース家は基本、威厳とか風格からは縁の遠い家族だからなぁ』

「そんな貧相な体じゃ無理だろ」

『そうだね』

「ジークフリートの太った体のほうがまだ男らしく感じるぞ」

『クフフ……どうだろうねぇ』


 秀星は含みのある言い方をするんだな。と思った。


「あ、早速弾幕パーティーになってるな」

『当然といえば当然だよ。魔法も超能力も、遠距離攻撃は多くなるからね』

「あんたとアースーはちょっとチートだと思うがな」


 念ずるだけで何でもできる。

 そして、それに加えて脳の機能を強化する神器。

 組み合わせとしては、出来すぎている。


「あまりにも、もとの性能が高い。それに加えて、それをブーストする神器……あんたもそうだったと言われると、作為的なものを感じる」

『どこまで考えてるの?』

「初代からそうだったんだろうな。王族で、神器がありながら、小国に収まる程度の発展しかないとなると、代々、制限された状態でしか使えなかったと考えるのは、誰かが思いつくだろう」

『たしかに君の言うとおりだ。最初からそうだったんだよ。僕が使っていたときも制限されていたんだよね』


 アーロンはそう言いながらも笑う。


「じゃあ、アーロンは、それをアースーに伝えるために、幽霊になってまで残ったのか?」

『いや、三途の川を渡るのが面倒だったから戻ってきただけだよ』

「……え、三途の川ってあるのか?」

『僕が求めてたツッコミと少し違う……』


 知らないな。


「まあ、思っていたよりめちゃくちゃなのは今更か」

『そうだね。それと……君が忙しくなるのは、この継承戦が終わってからだ。覚えておくといいよ』

「……わかった」


 秀星はどっかりとあぐらをかく。

 遠くの方で、小型の太陽みたいな炎球をジークフリートに直撃させたアースーが、Vサインで勝利を宣言していた。


「あ、これ前途多難だな」


 秀星の隣で、アーロンは笑っていた。

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