第百五十九話
この部屋にいるのは、王位継承戦などと言う戦いに呼ばれた者たちだ。
エインズワース王国の中でも最高に位置する実力を持つ者たちが、魔法と超能力をぶつけ合って、敵の大将を倒すのだ。
規定はある。といったが、そのルールは言い換えるなら大抵はグロとエロはダメ。というだけのものであり、ほぼ何でもありだ。
そして、今回のこの環境。
優秀と呼ばれる者たちが集まっているので、気温や湿度に対して無抵抗ということはない。
しかし、それだけでは如何にもならないのが世の中というものだ。
細かいことはいい。
要するにどういうことなのか。
それは『暑い』ということである。
「なんか、数が多すぎる」
秀星はタブレットを取り出して、超能力に見える魔法を使って戦っていた。
今回、秀星は超能力派閥の人間としてここに立っている。
使うのも魔法というよりは超能力の方がいい。
技術的には異なるものだが、広義の上で大した差はない。
そういった事情で超能力を使っているわけだが、妙なものを感じた。
中には実力が足りていない者が多数混じっているし、そもそも戦うことを想定していなかったような練度の者もいる。
「政治の匂いがプンプンするなぁ……まあ、今更っぽい気もするけど」
すでに超能力派閥には必要な官僚が揃っている。
魔法派閥側が何を考えていたとしても問題はない。
「ま、俺はとりあえず削るとするか」
ちなみに、バテたジークフリートは後退している。
秀星が前線に来る前に戻っていったので、警戒しているのはわかるが、気温も湿度も大して関係のない秀星からすれば、倒すのがあとになるだけのことだ。
近くにいるものから削っていけば、最終的にたどり着く。
ちなみに、容赦なく削っている秀星だが、敵からすれば化物だった。
この地獄のような環境下で、暑さに対抗する超能力や魔法を使っている様子はないのに、容赦なくこちらの戦力を削ってくる。
だが、それならば逆に考えると、この男の方に向かって突撃していけば、散っていったとしても普通なのだということ。
そういうこともあって、秀星の方に人が寄ってきているのだ。
秀星がなにか人数が多いと考えるのはそこが原因である。
自分が戦うと思っていた人数よりはるかに上なのだ。不思議に思って当然である。
「まあいいか」
大体のことを片手間にできる秀星。
これを言い替えるなら、何かを認識したとき、それをどうでもいいと思うまでの時間が早いということだ。
いずれにせよ、秀星の今回の役目は戦闘員だとアースーは言っていた。
ならば、継承戦という舞台に立っている以上。秀星はそれに従うだけである。