第百五十六話
王位継承戦。
エインズワース王国において、次の王を決めずに崩御があった場合の選定手段の一つである。
最も、その王が生きているうちに、決めることが困難だとされていたら行われるときもあるのだが、今回はそういう状況ではないので置いておこう。
周りからすればバトルエンターテインメント以外の何物でもないのだが、本人たちにとっては一応まじめに取り組むべきところだ。
ルールは整備されており、時代が進むにつれて発生するインフレにも常に対応している。
当然の処置であり、昔のままのルールで続けていると、制限された攻撃力が発達した防御力を超えることができないのだ。みる方も飽きる。
国内に存在する様々な資料を用いているのだ。
とはいえ、確認にも時間が必要であり、その時間が経過する間に新しい技術が発見されることもあるので、変更は大体二年おきである。
そもそも、継承戦などと言う面倒なことをしなければならない状況になると、一部のものが喜ぶだけで不安になるものも多いのだ。
何度か行われている継承戦だが、これは、エインズワース王国の王族の魔法技術が、他国に劣らないという宣伝も兼ねていることがほとんどだ。
当然だが、王族が使う魔法などそんなホイホイ見られるわけではない。
国民が王族の実力に不安を抱くのも必然と言える。
そのため、継承戦で見せることもあるのだ。
決して、第一王子とかが余計な人間の処分に使うような軽いものではない。
継承戦で求められることはいろいろあるのだが、本人の実力もそうだが、優秀な人材を集めることも必要だ。
一対一ではなく、集団戦である。
さらに言えば、戦闘力だけで見れば勝てそうになくとも、作戦で勝てばそれはそれでいい。
ただ、一つだけ大きな欠点がある。
まあ、一つだけ重要な欠点があるのだが……それに関してはジークも覚えておらず、セフィアくらいしか気が付いていないのでノーカンだ。
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「官僚もしっかりそろえた。僕たちのための金の流れも作った。そしてこちらの陣営にはロクでなしの理不尽共が勢ぞろい!もう怖いものは何もないね!」
アースーはとても良い笑顔でそう言った。
「……継承戦についての説明をしてほしいんだがな」
「あ、ごめんごめん。継承戦をするという話になったからね。僕としてはうれしいんだよね」
コホンと咳をすると、アースーは説明し始める。
「集団対集団で、それぞれ、王になることを立候補する人間で集まって戦うんだ。いろいろと規定もあるけど、近接攻撃だって禁止されていないんだよ」
「する奴いるのか?」
「したととしてもたどり着けない場合がほとんどだし、多くの魔法使いたちは近接戦闘なんてできないから、集中砲火で一瞬で焼かれるね」
それもそれで嫌だな。
「しかし、俺がいるっていうのに継承戦をするなんて……調べてないのか?」
「お兄ちゃんは結構行き当たりばったりなところがあるからね。ある意味、臨機応変に何か出来ればいいと思っているのか……そのあたりのことは僕もよく分からないんだけど、いずれにしても、お兄ちゃんが集められる戦力で僕らに勝てないのは明白だよ」
そこは秀星も否定しない。
「で、何処でやるんだ?」
「表のスタジアムでやると、魔法社会に関係のない人達にばれる可能性があるから、地下に存在する巨大な空間でやるんだよ」
把握した。
「さて、まずはルールを覚えないとな」
「まあ、パンフレットみたいなサイズだけどね」
「……意味あんの?」
真面目に、秀星はそう思った。