第百五十五話
いろいろと衝撃的なことがあったわけだが、それでも、終着点は変わらない。悲しいことだが。
官僚は余裕がある人数までそろえることはできた。
というより、王宮で務めていない人間であっても問題など皆無なのだから、広範囲鑑定と探索の魔法を組み合わせれば一発だった。
そこからはヘッドハンティングである。
いきなり国政についていけるかどうかと言われると微妙だが、そればかりはアースーが引っ張る形で最初は鍛えていくしかない。
国王が死んでしまったのが急だったので、本当に時間がないのだ。
「なんだかんだ言って揃えてきやがった……もう始めてもいいな」
「ジーク様。楽しそうですね」
「父上にとって良い形で王位をアースーに継承する。そこまでが私の役目だ。早いところ任務を終えてこの服をどうにかしたい」
「四十七のおっさんにはきついですよね」
「言い方!」
ジークフリートは自室でタブレットをいじりながらマーカスと話していた。
「それにしても、わざわざ継承戦とは……面倒なものですね。他の選出方法よりも金がかかるのですが……」
「主に後始末でな。まあ、他にもいろいろあるが、こちらの目的としては、余分な連中をまとめて始末することだ」
ジークフリートとしては、既にアースーが王になった時にどうするのか、という計画でいろいろと進めているのだ。
それこそ、アースーが生まれた時からであり、国王であるアーロンが考えるよりも前である。
そこからここまで進めているのだ。
ただ、アースーが生まれた当時、ジークフリートは三十一。
王族で、この年で独身と言うのは相当やばいのだが、そこはまああれである。
追及するな!ということだ。
「あとは、バカ四天王をどさくさに紛れて監視しやすいところに放り込めば完璧だな」
「……思ったのですが、あの四人、一体何なのですか?」
「私が王になった場合、私以上に良い思いができる連中だ。裏側でごちゃごちゃとやる人間って言うのは、表に生きる奴よりも金を持っているもんだからな」
「はぁ……」
「まあ、動きがかなり分かりやすかったから発見もかなり楽だったけどな」
アースーが新しい王となった時、最初に椅子に座る人間がヤバい頭をしていると国政など役に立たないのだ。
国でも世界でも何でもいいが、この世は巨大なゼロサムゲームである。
誰かの消費が誰かの利益となるのだが、もっと大きく言えば、誰かが貧しければ、誰かが裕福なのだ。
そのため、誰かを立てるためには誰かを下げるしかない。
そして人間は、自分を立ててほしいと思うものだ。
こればかりは仕方がない。
だからこそ利用されるものである。
「持っている金のほとんどを、現金でも金塊でもなく、銀行に預けているだけの奴らだから、はっきり言ってつぶすのなんて糞みたいに楽なんだが……それをするとまた面倒だしな。ちょっと回りくどいが、継承戦で痛い目にあってもらおうか」
「そうですね。一応、書類上は才能があると言われたもの達です。こう言った場で立ってもらわないと、納得しない人も多いですからね」
嘘も真実も金で買える。
だが、本質という、金では届かないものに対しては、無力なのだ。
「はぁ……この格好クソヤバい……」
「もともと汗の出やすい体質ですからね」
「ああ。なんていうか……消臭剤の原液をそのままぶち込みたい気分だ。ていうかぶち込んでんだけど」
「あまり効果がないようですね」
「そのあたりの体質も含めて私には適さないような……ていうか、デブの格好をしてやれって言ってたの父上だけどさ。別に痩せていても傲慢な奴っているんだから別に必要ないと思うんだが……」
「私もその話をアーロン様にしたことがありますが、アーロン様は笑った後に逃げていましたよ」
「うがあああああああああああああああ!!」
プライベートでは余計なことしかしない親である。
それで困るのは、当然、子供たちなのだ。