第百五十二話
「俺を狙った襲撃が多かったが……そろそろ通用しないって気が付いたみたいだな」
秀星は収まったようでなんとなく安心した。
とはいえ、それはそれなりに刺激を求める性格なので、襲撃がなくなったらなくなったでそれはまたいろいろと考え始めるのだが、平和であればそれはそれでいいと考えるタイプだ。
基本的に、平和と言うのは奇跡的な確率の上で成り立つものだからである。
それがある以上。秀星としては文句を言うつもりはない。
「ここから一気に継承戦に進んで行くのか……ん?」
タブレットを確認している秀星。
アースーから、見てもかまわないと判断されたデータに関してはパスワードを聞いているので見られるのだ。
マシニクルを持っている秀星を相手に電子製品のパスワードなど意味がないのだが、それはおいておくことにしよう。
「そもそもヤバイな……これは」
秀星はとあるデータを見てつぶやく。
それは、この国の収入源だ。
「魔石の鉱山が国の収入の殆どなのか……」
秀星はそれを見て愕然とした。
この国では、魔法の研究に莫大な金額が使われている。
その殆どは人件費なのだが、裏でしか出回らない素材を手に入れなければならない時もあるので、研究費は高くなるそうだ。
その収入を支えているのは、魔石の鉱山である。
文字通りであり、金や銀の代わりに魔石が産出するのだ。
重要なエネルギー源として魔石の需要は高く、さらに、モンスターを相手にするわけでもなく、採掘という点において、機材の力は優秀だ。
この鉱山の権利を確保していると、油田を持っていることと同じくらいの金が出てくる。
とはいえ、大量に取れるのは事実だが、いつまでも続くわけではないということも確かだ。
「俺、白人の出身国なんて見ただけじゃ区別がつかないからなぁ」
欧米だろうとヨーロッパだろうとあまり関係はない。
日本人からすれば外国人である。当たり前だ。
エインズワース王国はヨーロッパにある小国である。
他の国の人間がいたとしても不思議ではないし、大量に抱えているのだろう。
「まあ、長期間頼れるわけでもない鉱山を当てにしたらどうなるのかなんて、すでに王族は察していると思うが……思えば、こんな収入源があるから王族だとかそういったものが権力を持ってるのかね?」
日本も天皇家が存在するので君主国家と言えるだろう。
とはいえ、日本の場合は象徴である。
エインズワース王国のように、政治的な権限を持っているわけではない。
「鉱山の方も調べておくべきだろうなぁ……エインズワース王国民の勤労意欲にもよるけどな」
見たところ低いわけではない。
接客業は可愛い顔した男がメイド服を着てやっていたところもある……誤字ではない。
それがあるのならなんとかなるだろう。
食料自給率が五割を切り、エネルギー自給率が5%という地獄のような数値を叩き出す日本も、人数が多いのでGDPは高いからな。ブラック企業とかもあって個人が持つ生産性が世界と比べてヤバイけど。
「このまま継承戦をやっても、問題は解決しないか……こんな落とし穴があるとはな」
このままでは、アースーが毒針だらけの王の椅子に座ることになる。
どうにかすることにしよう。