第百四十九話
「俺を直接狙った襲撃が多くなったな」
「秀星様をどうにか倒すことが出来れば、それだけで変わりますからね」
秀星に当てられた王宮のゲストルーム。
そこで、セフィアが作った茶菓子を食べながら、秀星はセフィアと話していた。
「最初から過激だとは思っていたが、まさかここまで懲りない連中だとは思っていなかったな」
出てきた連中のほとんどは超能力者だった。
何かあった時、魔法使いが何か不祥事を起こしたと言う情報を与えたくないということが考えられるが、それにしたって露骨である。
「まあ、俺をいくら相手にしたところで、魔法も超能力も使えないからたいした意味はないけどな」
「経験でも戦術でもなく、単なる知識で彼らを圧倒していると考えると、私としては呆れて何も言えませんね」
秀星が指をパチンと鳴らして魔法や超能力を封殺している時、実は、そういった魔法を使っているわけではないのだ。
秀星がやっているのは、単なる技術の行使である。
「まあ、やってみないと分からないからな。こういうのって」
「発動だけは普通に行われますから、なおさらですね」
魔力が絡むフィクションを呼んでいる時、こう思ったことはないだろうか。
様々な技術や現象に使える物質である魔力が圧倒的に体内に存在するのに、なぜ体重が他の人間と同じなのか。
というものである。
どんなものでも、質量がある以上重量がある。
無論、全てが霊的なものだから重さとしては反映されない。と言うものがいて、それを実証してしまうと話が終わるのだが、そうはならない。
原子の中で一番軽い水素よりもさらに小さいのだが、しっかりと重量は存在する。
魔力だけを風船の中にいれて膨らませると、水素よりも軽い魔力が入った風船は上に向かって浮かび上がるのだ。
「マイナスエリア。一体どれほどの人間が気付いているのかね?」
マイナスエリア。
簡単に言えば、物体の質量や重量が全て、表に出て来る数字ではなく、裏に存在している。と言う概念だ。
魔力を生成した瞬間、専門器官が『×-1』を全てに行うことで、自分の体内に存在する専用の場所に放り込むのだ。
それによって、重量的な問題を解決している。
ちなみに、何も存在しない状態よりも軽い物質が体内にあって、体が浮かび上がらないのか、と言う質問に対してだが、浮かび上がることはない。
それだけを防御するシステムがちゃんとある。
「まあ、それに気が付かなかったから、ヴィズダム・プラントで魔力を貯蔵する媒体を作ることができなかったわけだし……意外と知っているものは少ないのかもな」
秀星がやったのは、魔法を発動した時に本来『×-1』されて表に出て来るはずの魔力を、そのままの状態にさせること。
それによって、現象を発生させるためのエネルギーが発生しない。
単純に外に魔力が放出されるだけで、無駄骨なのだ。
これを突破する手段としては、自動で行われている現象のすべてを手動に切り替えて、魔力一つ一つを『+』に変えるしかない。
ただ、脳の機能を向上させる神器がなければ、これは不可能である。
「さて、こっちは特に何もないのと同じだ。さっさとバトルを始めてくれると助かるんだがなぁ」
一人の人間の思った通りにはいかない。
優柔不断?もっと別のものが原因である。