第百四十八話
超能力派閥と魔法派閥の戦い。
確かに、結果的には『王位継承戦』で決めることだ。
しかし、これは重要な一戦である。
事前にどんな準備をすればいいのか、どんなものを揃えるべきなのか。
王位継承戦は基本的に制限を決めるルールがあるだけで、それを違反しない限りはほぼ何でもアリである。
相手がどんな戦力を持つのか、それを正確に把握して、戦況を有利に進める。
そんなことをお互いにやっているのだ。
「それで、超能力派閥の要注意人物のデータはまとまっているのか?」
とある会議室。
王宮から離れたところに存在する『隠れ家』とも呼べる場所で、会議に出席する者も少ない。
丸いテーブルに座っているのは、たったの四人だ。
「以前話した部分と大きな違いはない。ただ、日本から来た朝森秀星。コイツに関しては底が見えないといえる」
テーブルに写真が並べられる。
全て、王宮から離れて町を散策している時に撮られたものだ。
そしてそれを一目見て、もっとも強者の雰囲気を持っている大柄な男が疑問を抱く。
「……確認しておくが、これらの写真は『盗撮写真』なのか?」
「当然よ。そんな堂々ととるわけないじゃない」
「ならば……なぜ、全てカメラ目線なんだ?」
「え?」
全員がもう一度写真を見る。
確かに、写真に写っている秀星はすべて、カメラの方を向いている。
疑問に思うと同時に、中にはまったく同じ時刻に撮っているのに、そのどちらもしっかりとカメラ目線なので不気味だ。
「まさか、気がついていたというの?」
「でなければ、これが偶然と言うことになりますが、その言葉で片づけるのは難しいでしょうねぇ」
もしこれが本当に偶然であれば、それはそれで厄介である。
もし偶然だった場合、次はどんな偶然が起こるのか予想がつかないからだ。
もちろん、普段はそんなことはなく、局所的に何かがあるからこそ偶然と呼ばれるわけで、次もこうなる可能性は低いのだが、それを言うのは野暮と言うものだろう。
「戦闘力は?」
「日本にいたころのデータも合わせて見てみたが……圧倒的だな。それから、これは先ほど捕らえられた奴から聞いた話だが、どうやら、魔法が使えなくなった時があったらしい」
「魔法が使えない?」
全員が驚いた。
魔法を相殺することで無力化する。というのは、魔法が浸透する国なのでやろうと思えばできるものは多い。
だが、そもそも魔法を使え無くするような技術など、彼らは知らない。
「だとすればそれはマズいですね。効果範囲はどの程度なのかと言うところを始め、何か仕様に制限があるのかどうかをしっかり確認する必要があります」
それは要するに……。
「また襲撃事件を起こすということか?」
「我々の勝利のためですよ」
ためらい。と言う状況が発生した瞬間に、誰かがそれを切り捨てる。
彼らは、いつもそうして進んできた。
今回も、その一つである。
とはいえ、彼らにも不安はある。
あまりにもイレギュラーな男なのだ。
今回ばかりは、用心するに越したことはない。