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第百四十六話

「僕たちに対する反勢力かぁ……」

「そう言った連中がいることそのものが珍しいと言いたいわけじゃないが、だからと言って露骨すぎるだろ」


 リビングで話すのが普通になっている秀星とアースー。


「だね。今回のこれはかなり大胆な感じだ。多分、上からの指示を曲解したもの達がかなり混じっていた感じだろうね」


 アースーとしてはそういう判断のようだ。

 それはいいのだが、秀星としてはある可能性を考えているので、一体どの程度までが向こうにとっての本気なのかわからないのだ。

 行き当たりばったり、というのは、敵の行動を予測して行動するものからすればギャンブルに挑むようなものである。

 だからこそ、アースーは誘導する形で進めているそうだが、最近になって効果が薄くなってきているようだ。


「終着点は変わらない。過程は向こうとは大きく違うみたいだけどね」


 アースーはふうっと息を吐いた。


「でも、こう言うのはよくある話なんだ」

「ん?」

「自分たちが台頭するために相手を落とすっていうものだけど、それそのものはどこにでもいる。そして、そんな中でも過激派に出るのは、この国ではよくあることなんだ」

「大変だな」

「そうだね」


 過激な方法をあえて選ぶ思考回路を持つものが多い国。

 無論、下手に治安が悪いというわけではない。

 先ほど強硬派の連中を叩いたわけだが、警察や消防が動くのは早かった。

 とはいえ、そう言った職業のものの仕事が多いことは喜ばしいことではないのだが、何をどう考えても今更である。


「そもそも、選挙じゃなくてバトルで決めるんだから、過激派とかそう言うのは今更だと思うんだが……」

「あえて考えないようにしていたところだから言わないでほしかった……」


 秀星の追及に対して顔を両手で覆って悲しい雰囲気を出し始めるアースー。

 そう、過激派とかどうとか言っているが、もっとも過激なのがどこなのかと問われると、それはまぎれもなく王族なのである。


「昔からそうみたいなんだよね。超能力だとか魔法だとか、そう言ったものが国の全域にわたって広まっているようなものなんだ」

「力を所持するのが楽と言うか制限がないというか……まあ、こう言うのは法律で使用を制限することはできても、所持は止まらないからな」


 そしてその所持した力を、自衛のみに使う人間がどれほどいるのか、と言う話でもある。

 魔法も超能力も、言いかえれば暴力だ。

 人を守る力とよく言うが、それはいい変えるなら、守る必要があるほどどうしようもない状況になっているということだ。

 人間である以上仕方のないことである。

 そういったいじめがあることを当然のことだと思っているのは認めるが、変わらないし、変わったとしてもその先でまた違ういじめが発生するものなのだ。

 人を害する欲望と言うのは、時と場合によって形を変えるものである。


 そして、そんな分かりやすく、優劣がはっきりするおもちゃを与えられた人間が、果たして崇高な目的のためだけにその力を使うかどうか。

 そんなわけがない。

 社会と言うのは複雑だ。

 たとえ絶対的な力を持つものが正義感にあふれた行動をしても、変わらない。


 力と言うのは絶対だ。

 科学的な軍事力において最強のアメリカが頂点に立っているのは、その理由として分かりやすい例である。


「まあでも、そうなんだよね。魔法っていうのはこの国に浸透していて、超能力派閥よりも受けがいいんだ。特に、状況が変わるのを嫌っているお年寄りにとってはね」

「だが、最近は不正があると分かっているものも多く、不信感がある」

「そうなんだ。だけど、『わざわざ超能力派閥を台頭させるほどのものなのか?』って考えている人が多いんだ」


 政権交代。

 アースーが狙っているのはまさにそれだ。

 だが人というのは、無難に進むのであればどちらであってもかまわないのだ。

 政治に対して向上心・探究心にあふれている人間と言うものは多くない。


「武力を使った戦いっていうのはね、本来、消去法の末の妥協案のはずなんだ。でも、エンターテインメントを求めるっていうのかな。王族がそう言ったことを率先してやるせいで、こんなことになってるんだよ」

「アースーは変えたいって思うのか?」

「一部はね」


 苦労している目になり始めるアース-。


「話を戻すけど、それでも僕が戦うことにしたのは、それしか方法が無いんだ。だって、国民は政治に興味を示してくれないからね。今だからこそ緊迫した感じになっているけど、新しい国王が決まれば、それもすぐにもと通りになる」


 知っている。

 異世界でも見てきた。

 とはいえ、である。


「対して情報も公開していない状態での選挙より、バトルのほうが白黒つけられる。それでいいだろ。責任を抱えきれるほど自分が強くないことを知っているのなら、開き直るべきだ」


 秀星は席を立つ。


「君は強いね」

「俺みたいに強くなったら、それはそれで困るだろうけどな」


 要するに、困るのは誰でも同じなのである。

 秀星は部屋を出て、角を曲がると、少しだけ視線を変える。


「アンタはどう思うんだ?先代の国王さん?」


 秀星の視線の先にいるのは、ふよふよと浮いている、半透明の少女のような男だった。

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