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第百四十四話

 ジークフリートが来てから、王宮内ではバトルの話で持ちきりになっている。

 確かにジークフリートはいろいろと面倒な思考をしているが、行動理念は単純だ。

 先のことを全く考えておらず、全ての行動がいきあたりばったりなので、予測して先回りするより誘導する方がいいと言うことをアースーは分かっているので、秀星としても別に言うことがあるわけではない。

 そう言うわけで、秀星は暇になった。

 なお、アレシアはいろいろと顔を出す時期になってきたようで回っているらしい。


「なんていうか、可愛い王女様の帰国って言うのは盛り上がるものなのかね……」


 可愛らしく慎ましい王女様。

 それが、一般市民からアレシアに対する評価である。

 案外、化けの皮と言うのは分からないものだ。

 アレシアはそのあたりがすごく上手いので、結果的にそうなるのだ。

 納得できるかどうかは別だが、王族が市民に悪い影響を与えているよりはずっといいので秀星は気にしないことにした。


「ここでも持ちきりだな」


 秀星は商店街をふらふらしながらそうつぶやいた。

 ショッピングモールではなくそういう場所を選んだのは、単純に、何か面白いものがあるのではないかと思っただけである。

 あえて定番にはいかず、そう言った商店街を選ぶ。

 その選択に価値があるといいたいのだ。異論は認めない。


「いろいろあるんだなぁ……魔法関係の品物がそれなりに多くないけど」


 当然だが、様々なものが並んでいる。

 しかし、食料品や電化製品をはじめとして、レストランもそれなりにあるのだが、魔法関係の店は少ない。


「……嫌な予感がするな」


 商店街には当然のように裏路地がある。

 至るところから、そういった雰囲気を感じた。

 秀星の感覚神経とそれを伝える脳は、共感覚を必要に応じて使うことができる。

 雰囲気、というものを、五感で認識することも可能だ。


「!」


 突然だった。

 古本屋が爆発したのである。

 炎上して、そのまま周辺を巻き込もうとしていた。


「よし、ここは終わりだ。次に行くぞ」


 秀星の耳には、まだ炎上する店の中でそんなことを言っているのが聞こえた。

 それと同時に、走り去っていく足音も聞こえる。


「何かの事故という可能性がなくなっただけいいとしよう」


 事件なのか事故なのか。気の緩みとかはあるのでタイミング的に事故がありえないというわけではないが、判断材料があるのはいいことだ。


「逃げ遅れている人がいるな……」


 秀星は左手の上にオールマジック・タブレットを出現させる。

 セフィアに『遅れたやつをどうにかしろ』というテレパシーを送った。


「さて、あっちか」


 次の瞬間、秀星は転移していた。


「次のポイントは何処だ」

「こっちだ。抜け道を予め用意している」


 走りながら話しているのは二人。

 身軽そうな格好だが、着ている服は少し強化すれば火に強い材質だ。

 顔がわからないようにフルフェイスヘルメットをつけている。


「スマンな。計画はとりあえず中断してもらうぞ」


 秀星は彼らの前方に陣取った。

 二人が止まった。


「なんだお前は」

「あれ、こっちでは顔は知られていないのか?」


 日本でもアメリカでも知られているのだが。

 ……いや、よく観察すると、二人は思った以上に警戒している。

 どうやら、知らないふりを装うことで、油断しているとこちらに伝えたいのだろう。

 だがまあ、秀星が相手だと無意味である。

 言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーションの二種類がある。

 言語的コミュニケーションは文字通り『言葉』であり、非言語的コミュニケーションは、それ以外のほぼ全て

だ。

 服装や仕草、雰囲気や表情、いろいろあるが、口で何を言っているのかということ以外はだいたいこの非言語的コミュニケーションに位置する。

 そして、人が相手に何かを伝えるとき、この非言語的コミュニケーションの割合は驚異の『93%』である。

 アルテマセンスですべてを見逃さない秀星からすれば、そこにいるだけでわかるものだ。

 それも、戦闘時や緊張状態なら尚更である。


「くらえ!」


 片方の男が手をかざすと、すぐさま炎のたまが出てきてこちらに飛んでくる。


「術式が薄いが情報は濃いな。超能力か」


 オールマジック・タブレットが光ると、魔法陣が出現して水の触手のようなものが出現。

 炎のたまを簡単に飲み込んだ。

 爆弾魔……いや、爆炎魔だろうか、どちらでもいいが驚いているようだ。


「なら、これでどうだ!」


 もう片方が手を前に出して、風が刃が飛んでくる。


「それも無駄だ」


 風など、ただの空気の流れである。

 刃になろうと変わらない。

 オールマジック・タブレットを光らせて、魔力の圧力をぶつけた。

 すぐさま消え去る。


「せっかくの襲撃者だが、レベルはこんなもんか」

「ふ、ふざけるな!なら、複合技で……」


 秀星は指をパチンと鳴らした。

 男たちが手を出すが、超能力が発生しない。


「え、な、なんでだよ。なんで使えないんだ!?」

「貴様がなにかやったのか!」

「俺がやったに決まってるだろ。ただまあ、説明する義務なんてないからな」

「くそ……」

「しかし、超能力者か。目的は、超能力派閥の支持率の低下か……まあそんなところだろうな」


 面倒な話だが、人というのは発生した現象を、一歩引いたところからは見られないものだ。

 超能力で事件が起これば、必ず超能力者に対する支持率が下がる。


「まあ、詳しいことは尋問担当者に任せますか」


 タブレットを使って、スタン弾を発射。

 二人共直撃して、その場に倒れる。


「ちょっと面倒なことになってきてるみたいだなぁ。まあ、以下のところはモグラたたきで十分だろ」


 秀星は爆炎魔を連行することにした。

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