第千三百三十九話
「みゅ~……むぅ。んー……よしっ! お母さん! そろそろ私たちも中央のエリアに戦いに行きますよ!」
風香に抱き着いて寝ていた椿だが、どうやら起きた様子。
「お母さんも起きるんですよ! 未来のお母さんは毎日毎日体重計に乗って気にしてるんですから、若いうちからちゃんと動くことを……痛いですうううっ!」
頭をガシッと……いや違うな。グワシィッ! とつかまれて力が加えられる。
相当な力が加えられているのか、完全に悶絶している様子。
……まあ、母子と言えど、体重の話はNGということだ。
「うー。うー。痛いですううう……」
数秒で解放された椿。
風香もそのころにはしっかり起きて、腕を伸ばしたり体を曲げたりしていた。
「……よし、椿ちゃん。私たちも行こっか」
「むっ。そうですね!」
二パッと笑う椿。
アイアンクローをされたばかりだというのにまあなんとも元気なものである。
「今のところ、戦況ってどうなってるの?」
「うーん。アトムさんと栞がめちゃくちゃ暴れまわってますね。ただ、何人かをまとめて吹き飛ばしてるのか、皆ポイントは高くなさそうです」
「そっか……なるほど」
倒せば2ポイント増えて、倒されると1ポイント減る。
そういう形式故に、『一発逆転』と言える要素がない。
いや、これから出てくる可能性は否定できないが、今のところは影も気配もないので、ないと思った方が無難だろう。
地道にコツコツ戦った方が得点もしっかり溜まる。ということだ。この手のゲームの基本である。
「どうしようかな……」
強さに応じて討伐スコアがそれぞれ違う。みたいな感じであれば、一発逆転もあり得るが、まあなさそうなのでそろそろ行くべき。というのが椿の意見なのだろう。きっと。多分。
風香としてはそれに異論はない。
そもそも風香は参加者の中では十分強い方なので、一発逆転とかそういうのはあまり関係のない話だ。
「まあ、行ってから考えようか」
「そうですね! 中央エリアはまだ行ったことがないので、どんな感じになっているのか楽しみです!」
頑丈に作られている。ということしか広まっておらず、戦えているということは、それは絶対の事実である。
「今なら、秀星君とかもいないだろうし、稼いでおこうかな」
「むっふふ~! 私も頑張りますよ!」
「……」
いてもいなくても変わらない。というのが椿に対する戦闘面での判断だが、風香はそれを口にしない程度には大人だったようだ。




