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第百三十三話

 犯罪組織の皆さんも頑張っていたようだ。

 ロボットでの出撃がまた開始されたのである。

 とはいえ、前回のあれは秀星がコードを撃ち抜いただけなので、単なる事故と片づけるものも多かったかもしれない。

 というかコードがあからさますぎる。

 もう少し隠すことを覚えてほしいものだが、これ以上言っても仕方がないのでさっさと俺たちも出撃することにした。


「よし。行くぞ!……えーと……秀星、このロボットの名前ってなんていうんだ?」

「いや、決めてないけど」


 レシピブックは目的に沿ったアイテムを検索することが可能だ。

 それ故に、名前がわからなくとも勝手に設計図を引いてくれる。

 それはいいのだが、あまりにもやりすぎるとレシピブックのほうが名前を決められない。

 結果的に、名前がわからないが完成するのだ。


「それなら、オレが乗っているこいつは『CIゴリラ号』だな!」

「CIって何の略なの?」


 来夏の宣言に雫が首をかしげる。


「クレイジーイレーザーだ!」

「来夏。イレーザーの最初の文字は『I』じゃなくて『E』ですよ」


 アレシアがため息を吐きながらつぶやいた。


「え、そうなのか?」

「そうです。『eraser』という綴りでイレーザーになるです」

「来夏って美咲よりも英語力ないんだ……」


 来夏は首をかしげて、美咲が答えて、優奈はあきれた。


「というか、その、なんだ。訳すると『頭のおかしい消しゴム』になるのか?」

「間違ってねえだろ」

「確かにな」


 羽計が聞くと、来夏はうなずき、設計者である秀星が即座にうなずく。


「ちょっ。秀星君がそれ言っちゃダメでしょ!」

「だって反論なんてできねえんだもん」

「もう少し考えて作れ!」


 風香驚愕。秀星は顔をそむけて、羽計は叫んだ。


「いやだ!俺は『悪乗り同盟』の会員番号二番だからな!こういう時にネタに走らずしてどうする!」

「そんな頭のおかしいところに入っているんですね」

「ん?オレも入ってるけど。会員番号三番で」


 秀星は開き直ることにしたようだ。

 まあ、彼はそういう男である。

 エイミーが呆れて、来夏はどうでもよさそうにつぶやいた。


「脱線してきたからそろそろ出動しよう。というわけでゴー!」

「あ、雫!お前が一番早く動き出すな!ナマケモノ型のロボットでシャカシャカ動いたらイメージが崩れる!」

「私には常識も社会的通念も論理的整合性も通用しないんだよ!」


 雫が動かして、秀星がストップをかけるが、その程度では雫は止まらない。


「デュエリストかお前は……」

「オレたちも行くぞ!」

「うおっ!ゴリラが暴れるな!」

「暴れないゴリラがいる訳ねえだろ!」

「来夏。それは偏見ですよ」


 秀星はあきれて、今度は来夏が動かし始める。

 だが、いきなりエネルギーがすごかったようだ。

 批判する秀星だが、開き直るのは来夏も同じ。

 アレシアも思わずあきれる。


「CEポチ号!発信です~!」

「美咲、あんたノリノリね」


 平和なのは美咲と優奈くらいである。


「それなら俺も出動だ。行くぞ!『CE粗大ゴミ号』!あばばばばばば!」


 急に悲鳴を上げる秀星。


「え、なに!?」


 風香は驚いた。


「ちっ、くそ、このポンコツ。椅子に電流流してきやがった!」

「そんな名前を付けられたらそうなりますよ……あれ、千春さんと美咲ちゃんと雫さんと来夏は?」


 秀星は悪態をついたが、エイミーは普通だと思った。

 だが、先ほどから何人か足りない。


「現地ですでに銃撃戦を展開していますよ」

「出遅れた!ていうかあいつら意外と真面目!」


 アレシアの説明に驚く秀星。


「秀星君が遊んでるからでしょ!ていうか、四人だけで大丈夫なの?」

「安心しろ。敵ロボットを一撃で粉砕できるくらいの威力を持つレーザー砲を全機に搭載していて、危なくなったら強制的にブッパするから」

「オーバースペックだな!?」


 風香は心配して、秀星は問題ないとばかりに腕を組んだ。

 羽計は何を言えばいいのかわからなくなった。

 ぐだぐだになっているが、とにかく出撃。


 ★


 ロボットを操縦している『ニアー・バンクラプシィ』のメンバーだが、イヌとトラとナマケモノとゴリラというどう考えればこうなるのかわからないロボット四体を相手していた。

 ニアー・バンクラプシィが用意してきたロボットは五体。

 これでもかなりの予算を積んできているのだが、何とも分からぬ銃撃戦になっていた。


 まあ、単純にCEシリーズがハイスペックなので問題はない。

 安全性には少々難があるかもしれないが、任務遂行力は高いように設計されている。

 悪乗り同盟の監督下で設計されたものなのでいろいろとロマン武装が積み込まれているが、使ってしまうと相手が耐えられないのでそれはちょっとお預けである。


「あ、なんか増えた」


 ニアー・バンクラプシィ一号機……NB1と呼称するが、それに乗っている奴がつぶやいた。

 新しく増えたのは、鷹と妖精と猿と馬と鮫と……よくわからない金色の球体である。


「みんなすまん!遅れた!」

「遅い!こっちはいろいろと苦労してるのよ!」


 秀星の言い分にカチンとくる千春。


「いやまあ、単純に千春が操作に慣れていないだけだと思うぞ。来夏なんてゴリラロボにヨガやらせてるし」

「遊ぶな!」


 秀星が来夏を見て納得していると、千春が再度叫ぶ。


「アッハッハ!いやー。面白くていっづ!」

「え、何があったの!?」


 驚く雫。


「こいつ!頭から鋼鉄のバナナ落としてきやがった!」

「え……あ……うぅん!?」

「風香、コメントに困りすぎだ」


 そんなことを言いながらも戦い始める者たち。

 いろいろとやっているが、秀星は球体から銃口を出して援護射撃だけである。

 はっきり言って一番楽である。


「よし、第二幕に移るぞ。合体機能だ!」

「え、そんなすごいものがあるの!?」

「雫、期待しすぎるな。きっとろくでもないぞ」


 羽計はもういい加減に理解していた。


「安心しろ。ちょっとシートベルトがきつくなるだけだ。胸のでかい人たちは我慢しろ!というわけで、ゴッドロボの権限発動。強制合体!」

「「「「いたたたたたたた!」」」」


 来夏、雫、風香、羽計が悲鳴を上げる。

 アレシアは我慢した。


「ちょ。私が貧乳だって言いたいの!?」

「いででで、私は千春ちゃんのペチャパイも大好きだよ!」

「美咲はまだ可能性があるです」

「私だってまだ中学生だから……」

「私は胸を大きくすることはあきらめました。代わりに肌のケアに努めてます」

「あ、合体が進んでる」


 ゴリラを中心にして、妖精と鷹が変形して頭に装着。

 虎と馬が変形して、ゴリラの両足の下にそれぞれ装着される。

 犬と鮫が変形して、ゴリラの両腕の先に装着。

 ナマケモノと猿はすごい勢いでバラバラになって、いたるところに銃として設置される。

 最後に、球体が変形して大剣になった。


 という予定なのだ。


「あ!馬とゴリラの接続部が狙撃されたぞ!」

「これは精密機械だから、こういう事故が起こると接続に失敗するんじゃないか!?」


 来夏が驚いて、羽計が叫ぶ。


「どうやらそういうことみたいですね。さっきから警戒音がすごいですよ」

「ていうか、敵さんもこういう時はまってくれていたらうれしいのに」


 そしてなぜか冷静なアレシアと、うまくいかないものだと感じた雫。


「特撮みたいにはいかないな。仕方がない。最終手段だ!」


 秀星は操縦席から飛び降りると、工具を取り出して馬の接続部をわちゃわちゃしてなんとかした。

 そして、ゴリラの足をつかんで無理矢理に引っ付ける。

 で、瞬間接着剤で補強しておいた。


「え、人力接続なのですか?」

「まあ、そういうことも可能というわけだ」


 エイミーからの通信を尻目に急いで戻る秀星。


 合体完了。

 すべての操縦席が一つの広い部屋に集まった。

 二列になっている。

 外から見た並び方で説明すると。

 上段は右から羽計、アレシア、来夏、秀星、風香。

 下段は右から優奈、エイミー、千春、羽計、雫。

 といった並びだ。


「おお!すごいな!ただ、なんで席が移動するんじゃなくて転移なんだ?」

「移動させる通路を作ることも不可能ではなかったんだけど、これがもうめんどくさいのなんのって……全部組み立て終わった後に全員集合案を思いついたんだよな。ボトルシップじゃないんだし、もう転移でよくね?っておもったから結果的にこうなった」

「グダグダですね」


 来夏の疑問に秀星は答えるが、アレシアはいつも通りだと感じたようだ。


「あれ?エイミー。それって」


 千春がエイミーの手元を見た。


「これですか?ファイティングスティックです。中古で三千円くらいでした」


 CEの操作だが、基本的にはボタンが付いた操縦レバーが二本と、操縦席に広がるタッチパネルである。

 だが、ジャックがあるので、自前の入力装置でなんとかすることもできるのだ。


「ゲーセンファンだと思っていたが、まさかこんな時でもそんなものを持ち出すとは……」

「敵さんが唖然としています。必殺技なら今のうちですよ」

「だな。で、どうするんだ?」

「全員の操縦席の一番上に赤いボタンがあるだろ?それを押すんだ」


 押してみた。

 すると、ロボットが輝きだす。


「はい、あとは自動でやってくれるから操縦桿から手を放しても大丈夫だ」

「ちなみに必殺技名は?」

「『アプローチ・スラッシュ』だ」


 それを聞いた英語がわかるメンバーは察した。

 アプローチ・スラッシュ。

 『approach slash』だとするなら、答えは一つ。


 『近づいて斬る』である。


 ★


「なんというか、乗らなくて正解だったね」


 はたから見ていたアトムは、そう思ったそうだ。

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