第百三十一話
「何だあれ」
秀星はビルの屋上から呟いた。
犯罪組織『ニアー・バンクラプシィ』が戦車などを集めている。と言う情報は聞いた。
だがしかし……。
「巨大ロボットだね。あれ」
横にいるアトムが望遠鏡を覗きながらそう言った。
十八メートルくらいの高さのロボットが町を破壊しているのだ。いつから世界はSFになったのだろうか。意味が分からん。
「かなり高性能だが……動きが少しカクカクしてるな」
「人間が持つ操縦能力ならそんなものだろう。人の形をしたロボットは調節部分が膨大だ。まだそこまで大きなことは……」
「バク転してるけど」
「思ったより高性能だね」
アトムは一瞬で手のひらを返した。
しかし、アトムの言いたいこともわかる。
ロボットは全身白塗りで、シャープな印象。
ビームソードのようなエネルギーを無駄に消費するものはつけておらず、魔法で強化したブレードか銃で暴れている。
「しかし、魔力の消費が抑えられているのか?目に見える電力消費がかなり膨大なんだが、あのシャープなロボットに、ロボットで十分に継戦力を維持できる蓄電池なんてあったかな。それとも、内部に魔力を使った発電機があるのか?」
「そこまでの案を一瞬で導き出せるのは君のいいところだけど、残念ながらそうではないようだ」
「え?」
「腰に長いコードがある。見てみるといい。電線から盗電しているよ」
「セコいっ!」
電力を補うために電線を利用するとは……合理的だがものすごく腹立つな。
「なぁ、あれってコードきったら止まるのかな」
「いや、帰ることができる程度の予備電力は残しているだろう」
次善策などなかった。
「ちょっと狙ってみるか」
秀星はマシニクルを出して、スナイパーライフル用のセットを追加させる。
そして発砲。
一発でコードに命中。切断した。
コードの数は十本。
すべて切断していく。
「あ、帰っていったね」
「ほとんどの装置が電気制御だったのか?」
「電気制御にしたいというわけではなく、魔法側の技術が追いついていないだけだと私は思うのだが……」
その可能性はあるな。
製造難易度を考えると戦車のほうがいいのだ。
人が無意識に行っている重心の調節。それらをすべて自動にするとなれば、その量は膨大である。内側にしても外側にしてもセンサーまみれになるだろう。
魔法で全て解決するにはまだ技術力が足りない。
魔法は便利だが、難関なのである。
「フッフッフ。なら俺達も、目には目を。ということでやってやろうじゃないか」
「いいね。私も賛成だ。竜一を呼んでおこう」
することは決まった。
あとは、悪乗りするだけである。