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第百二十話

 FTRの近藤育美の命令に拠って集められた沖野宮高校襲撃部隊。

 人が多く、襲撃に向いている時間帯として授業中を選んだ。

 目的は、朝森秀星の抹殺である。


 秀星は体内時計が正確であり、風邪もひかないので一日たりとも学校を休んでいない。

 のだが、この日ばかりは少々異なった。

 舵牙源一の要請で、どうしても話しあいたいことがある。ということで学校を休んでいるのである。

 なお、源一本人には特に何か裏があるわけではなく、単に間が悪かっただけなのだが、沖野宮高校に秀星がいないというのはまぎれもない事実である。


 とまあ、そのような状況で、アメリカの傭兵、アイザック・マーティンの任務は始まった。

 さすがに出席確認と言うのは、あまりやらないものである。


 ★


 最初に襲撃部隊の存在に気が付いたのは、雫であった。

 まあもともと勘がいいのだが、カースド・アイテムの影響でそう言った部分を探知できる。

 そんな奇襲任務がある相手に取っては地獄のような条件だが、当然襲撃部隊がそれを知るはずもない。

 まだ授業の真っ最中。

 しかも、魔法社会とはかかわりのない人間も少なくない。


 できる限り隠れてやりたいし、騒動にならないのが一番なのだが、この状況下では圧倒的にそれは難しい。

 一応、魔法社会の存在が知れ渡る可能性がある場合のマニュアルと言うのは評議会に存在していたが、その評議会はない。

 だからと言ってその通りにできないわけではないし、そもそも秀星なら人の記憶くらいどうにかしてしまう可能性だって十分にある。


 とはいえ、ここにはいない人のことを考えても仕方がない。

 雫は机の下でチャットを開いた。


『雫  :あの、ちょっとヤバい状況になっていると思うんだけど……』

『宗一郎:こちらもわかっているが、学校を休んでいる秀星に連絡が取れん』

『風香 :どうするの?』

『英里 :もちろん、こちらから先手を打ちます』

『宗一郎:人を集めることなど楽だからな』

『英里 :ところで、羽計さんとエイミーさんが入ってこないのですが……』

『風香 :二人とも授業中は電源切ってるよ』

『宗一郎:まじめすぎる!』


 まあ、少々グダグダになったが、それはいいとしよう。雫としてもなんだか面倒になって来る。

 ただ、雫としては、人を集める手段と言ってもどうするのか。と考えていた。

 と思った時、放送が聞こえてきた。


『茅宮雫さん。八代風香さん。御剣羽計さん。エイミー・ルイスさん。今すぐ応接室に来てください』


 なるほど。と雫は思った。

 確かに、勝手に抜ける分には使えないが、誰かと連絡をとって抜けるというのなら十分に使える手段である。

 おバカな雫には考え付かない方法だ。

 授業と言うのは眠る……ではなく、しっかり勉強するものだから。という固定観念がいまいち抜けないのである。


 いろいろな意味であやしすぎる呼び出しに、クラスの雰囲気がドエライことになっているが、それを気にしても仕方がない。

 そして応接室にまっすぐ向かう。


 中では、宗一郎と英里が待っていた。


「……あの、お二人は大丈夫なのですか?放送はなかったですけど」

「私と英里のクラスは、全員が魔戦士になるようにクラス分けをしているからな。用件を言えば抜けるくらいはたやすい」

「それは今は置いておきましょう。問題は、今こちらに向かっている襲撃部隊の話です」

「本当に来ているのだな。私は気が付かなかったぞ」

「私もです……」


 羽計とエイミーががっくりしているが、相手だって訓練を受けているのだ。

 アメリカにいたころに狙われていたはずのエイミーが気が付かなかったのは、それだけ最近は平和になっているということだろう。

 悪いことではない。

 それに、そこまで緊張感を高める必要も普段はないのだからそれで十分。


「秀星君は?」

「連絡が取れないな。電源を切っているのではなく、電波が届かない場所にいるようだが」


 宗一郎、英里、エイミーはなんとなく分かるのだが、ヴィズダム・プラントに行ったことが無いメンバーの方は分からない。


「まあいい。襲撃部隊が来ているようだが。ここは私たちだけで叩き潰すぞ」

「……作戦とかあるの?」

「そんなものはない」


 きっぱりと言いきる宗一郎。

 そんな彼を棍棒で叩く英里。


「痛い!叩くことないだろ」

「せっかく呼び出したのに作戦すらないとか、それは言ってはダメでしょう」

「でもないぞ。というか、そこまで言うのなら英里はあるのか?」

「私が呼びだした訳ではないので」

「いけしゃあしゃあと……」


 宗一郎と英里がそろっているとギャグパートにしかならない。


「まあいい。とにかく、調子に乗っているようだからちょっと叩いてあげようじゃないか」


 宗一郎は最終的にそう言った。

 というより、このメンバーなのでそれ以上に特に何も言えない。というのが実情である。

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