第百十四話
源一は汗をかきながらどうしたものかと考えていた。
神器を手に入れることは難易度があまりにも高い。
それをクリアした源一は確かに実力者である。
神器を手にいれる場合、そこまで戦闘能力を必要としない場合もあるのだが、この神器はそう言ったタイプのものだ。
神器を手にいれまくった秀星からすると、神器を手に入れる際の感覚と言うのは、『テストで満点をとるような感じ』である。
話を戻そう。
神器を手に入れたことで圧倒的な生産能力を手に入れた源一だが、工場と言うのはあくまでも道具であり、レシピが分かるわけでもなければ、素材だって自分で確保する必要がある。
だが、源一本人は戦闘能力と言う点においては高いものではないので、誰かを雇う必要があるだろう。
しかし、足元を見られることはほぼ間違いない。
そのため、最初から源一は『使用料をとる』というスタンスで進めていた。
神器の工場。その性能は素晴らしいものである。
秀星にだってできないことはあるが、それを可能にするからだ。
どれほど大きな作業であろうと、どれほど細かい作業であろうと、この工場は達成する。
さらに言えば、神器である故に源一のみ使用することが可能。
そうなれば、どう考え始めるのかは目に見えていた。
圧倒的なほどの手札であり、さらに言えば使っても減るものではなく、影響力も大きい。
もちろん秀星にも同じことが言えるのだが、秀星個人と工場を持つ源一では、どちらが大人数がかかわることが出来るのかは一目瞭然。
長い時間をかけて、自分が持つ手札を研究し、そして確信に変わった。
そこまではいい。
ただし、何事にも例外はある。
ある意味、神器を持つ源一と言うのは、世間からすればその例外に属する側に立っているだろう。
ただし、秀星もまた例外であり、彼の方が世間から離れているのだ。
慎重さがないわけではない。
ただ、野心家な部分が顔を出してしまった。
源一の間違いは、言ってしまえばそこ。
世の中と言うのは、常識的に考えて手札が通じない相手と言うものがいる。
それを忘れた。
多くの者達が秀星と関わることができているといえるが、それは来夏を通したものであることがほとんど。
彼も、そうするべきだったといえるだろう。
無論、これ以上調子に乗らないというのであれば秀星も何もするつもりはない。
ただし、彼らの間に信用はない。
第一印象は悪い。
積み上げていかなければならないものは、多くなったといえる。