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第百話

 ダンジョンを新しく作るということだが、別にそれそのものは珍しくはない。

 この世界のダンジョンと言うのは、とある『コア』のような役目を果たす生物が、空気や地中、水中に存在する魔力を掻き集めて、その上で、自らが更に魔力を集めやすいようにダンジョン化するのだ。


 秀星が言った『簡単』と言うのは、今もどこかにいるであろうコアを見つけてきて、それに適した場所に移して、そしてそのコアの活動を活性化させればいい。

 そうすることで、コアは比較的簡単に『ダンジョン』になる。

 ただし、コアと言うのは隠蔽能力が非常に高い。

 秀星からすれば隠れきれていない間抜けも同然だが、地球に存在する技術ではそれらを発見することは困難だ。

 そもそも人の目につくようなところには出てこないということもある。

 それでいて、人がめったに入らないところなどいくらでもあるのだ。


 まあ、中には例外もいて、部屋のタンスの中にダンジョンの入り口ができていた。と言うケースもあるのだが、準備するにしても乗りこむにしても、異様な雰囲気になることは間違いないだろう。


 ちなみに、ダンジョンのコアは簡単に言えばただの水晶のようなものだ。

 大きさもたいしたことはなく、それがコアだと思うまでにはかなりの時間がかかる。


 いや、そもそも地球では、コアからダンジョンになると言う情報そのものが存在しないので、そもそも分かるはずもない。


 とにかく、ダンジョンその物を作るというより、ダンジョンが出来る環境を用意することは普通に可能だ。


 秀星が魔法でダンジョンを作ることも一応可能。

 安全装置を設けたものにすることも普通にできる。

 だが、あまりいいものではないのだ。

 『意思が介在するダンジョン』と言うのは、『不自然』とか『不快感』を感じる人間が多いのである。言いかえるならストレスがたまる。


 他にもいろいろ理由はあるが、客観的に判断するのであれば、ダンジョンのコアを見つけてくる方がいいのだ。

 ただし、とあることに気が付いている人間にとっては、魔法で作る方がいい場合もあるのだが、それは別の話である。


 ★


「ふむ、これがダンジョンのコアか」

「こいつをうまく活性化させると、ダンジョンになる」

「ダンジョンの最奥にいるラスボスを倒した場合にダンジョンの機能が停止するのは、このコアがラスボスの体内に存在するから。と言うことになるのか?」

「まあそう言うパターンもあるな」


 アトムと話している秀星。

 秀星の手には、紫色に光る結晶があった。


「ちなみに、手足はないが動くことはできる。今は俺達二人に囲まれて気絶してるからびくともしないが」

「それは少しかわいそうなことをしたね。それにしても、このコアからあれほど大きなダンジョンになるとは……」

「本人たちにとっては、魔力を効率よく集めるだけの物だと思っているんだがな……まあ、周りの動物の習性を利用して生活を豊かにするのは人間は昔からやってきただろ。それと同じだ」

「そのように考えると不自然な感じはないね」


 アトムは理解するのが極端に速いので説明が少なくて済む。


「それにしても、モンスターを生み出すことが出来るコアの存在。興味深いものだね」

「地上で発見される多くのモンスターは、ダンジョンからあふれて出てきているものが多いからな」


 そしてそのモンスターが生態系に混じることで、環境を変えていく。

 それが『魔獣島』などの成立過程のようなものである。


「……ただ、それにしてはモンスターたちは統率が取れているようには見えないが……」


 アトムもダンジョンには入る。

 だが、入って来た魔戦士を倒して、ダンジョンに吸収することで魔力を集めようとするのなら、モンスターには統率をしっかり取らせるべきだと思ったのだろう。


「いや、コアが持つ能力は、死者をとりこんで糧にするだけのものであって、モンスターの出現は副産物だよ」

「?」

「魔石を持ち、そして体のほとんどが魔力で構成されているモンスターたちだが、言ってしまえば『あまりもの』だとかそう言った感じなんだ」

「コアが余った分をモンスターの生成に当てているわけか」

「当てている訳ではない。偶然そうなっただけだ」


 秀星は一呼吸置いた。


「人で考えるといい。人はいろいろなものを食べるだろ?ダンジョンで言うと、言いにくいがそれは倒された魔戦士だ」

「ふむ」

「人はそれらを消化し、必要なものとそうじゃないものに分ける。必要じゃないものはさ。出す必要があるだろ?」

「……」


 アトムが相槌すらしなくなった。


「まあ、要するに、そういうことなんだよ」

「……そうか。まあ、この話は続けない方がよさそうだな」

「ああ。まあとりあえず、このコアをどこかに埋めて、それを活性化させればいいんだ。と言うわけで行ってくる」

「わかった」


 秀星は、アトムの顔を見ることができなかった。

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