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  作者: 恵樟 仁
アンダールシアの危機
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第二幕 5章 5話 二人目

5話になります。


強射(ストリングショット)!」



 コハクの放った矢が邪鬼へと迫る。

 だが、邪鬼はその矢を片手を翳すとまるで子供の水鉄砲から発射された水を防ぐ大人のように軽々と防いでしまう。



「ふふふ、どうしました?この程度では私は倒せませんよ?」

「くっ」

「はあっ!」



 邪鬼の背後からフィルディナンドが剣を抜き放ち飛び掛かる。



「おっと」



 だが、それにも反応した邪鬼に剣を持った手首を掴まれ、そのまま投げ飛ばされてしまう。

 地面を転がり全身を打ち付けながら止まるフィルディナンドにコハクが駆け寄る。



「フィルディナンド王!」

「大丈夫だ……しかし、ここまでとはな……」



 邪鬼の強さは魔女殿から聞いていた、だが、実際に戦ってみるとその強さがよくわかる。

 勝てんな……ここにいる猛者を集めても勝てる気がしない……あるいはララ王女ならと思いもしたが……恐らく無理だろう……。



「王は下がって兵に指示を与えながら魔物を防いでください……こいつは僕が止めます」

「馬鹿を言うなコハク……命を捨てる気か?」

「捨てませんよ……でも、誰かがこいつを止めなければこの街は助かりません……魔物を全滅させるまで時間を稼げばいいんです」



 それはその通りである……だが、それが可能なのかといえばノーだ。

 魔物を全滅させられたとしても何時間かかるか……それまでコハクが無事でいられる保証はない。

 なにせ邪鬼は未だ本気を出していない……ともすれば、遊んでいるような状況なのである。

 そんな相手に何時間も戦えるわけがないだろう……いや、それだけではない。

 魔物を全滅させることすら可能かどうか……仮に全滅させられたとしてもその時にラリアスの街は無事でいられるか?……こちらも可能性は低いだろう……戦力が足りなすぎる……せめて、もう少し兵がいれば……。



「行ってください!貴方が兵に指示を出さなければ勝ち目はありません!」

「ふんっ、俺の兵を甘く見るな……あいつらは俺の指示などなくても戦って見せる……それにここで背を向ければ俺は愚王となろう……コハク、お前も我が国の民なのだ……民を見捨てるなど俺には出来ん」



 全身を打ち付けられ、ふらつくフィルディナンド……その眼はまっすぐにコハクを見ていた。

 


「……フィルディナンド王」

「ははっ、言うじゃねぇか外の世界の王様よ!アタシは好きだぜ、そう言うの!」



 邪鬼の存在に気付いたララ王女が操作した鉄を拳に巻き付け、その拳を振り上げながら邪鬼へと特攻する。



「……おや」

「おっと、私の鉄に触れてていいのかい?」

「……どういう意味です?……っ!?」



 拳に巻き付けられた鉄がララ王女の鉄操作のスキルにより形を変え、槍のような形状になると邪鬼の顔を目掛けて襲い掛かった。

 だが、寸でのところで邪鬼はその槍を躱すと、ララ王女から距離を取る。

 それでも、ララ王女は鉄操作で槍を自在に操りながら邪鬼へと襲わせる。


「面倒ですね……これならどうです?」



 邪鬼は自分の周りにバリアーみたいなものを張るとララ王女の槍を防ぐ。

 全体をバリアーで覆っているため、いくら鉄を操作しようと、邪鬼へは届かなかった。



「ちっ」

「ララ王女どうしてここへ!?」

「どうしてって……邪鬼がいるからに決まってるじゃねぇか!」

「いや、そんな危険な場所に王女の貴方が来ては……」

「あん?何言ってやがる……強い奴がいるならそこがアタシの戦場さ!」



 出鱈目な……いや、ラガナと同じ戦闘好きか……。

 しかし、これで3対1だ……相手はまだ実力を出していないとはいえこれならば時間を稼ぐくらいは……いや、時間を稼いだところで兵力が少ないことに変わりはない……ここはまだ街にいるレディが街の魔物をすべて倒しきるまで時間を稼げば……いや、それも現実的ではない。時間を掛ければレディは街の魔物を倒しきるだろう……だが、街の人間を護りながらとなれば街の人間を一か所に集めるしか手はない。しかし魔物がそれを追いかけ一か所に集まってくれるとは限らないのだ……街を破壊する魔物……逃げ遅れた人間を追いかける魔物……それらをすべて倒すには時間が掛かるだろう……いくら3対1になったとはいえ、そこまで時間が稼げるわけでは……いや、そもそも邪鬼は一体だけとは限らないではないか……もし、街にも邪鬼が現れていたら……。



 最悪の予想が頭を掠める……だが、フィルディナンドのその予想は当たっていたのであった。

 ララ王女が参戦したのと同じ時刻……街ではレディが奮闘を続けていた。

 迫りくる魔物をその斧で一瞬にして魔石に変える、そしてシルネア達、冒険者が街の人達を領主の館へと導く……だが……。



「ふん、何かと思えば……醜い化け物が暴れていやがるのか?」

「だぁああれがっ醜いですってぇええええん!!」



 レディたちの前に燃えるような赤い髪、そして紫の肌に金色の眼をもった邪鬼がまた一人……

現れたのだった。

二人目の邪鬼がレディたちの前に現れてしまう……このままラリアスの街は落とされてしまうのか?

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