第二幕 4章 8話 レナ
8話になります
「どうしたらいいと思う?攻撃を読まれるんじゃどうしようもないよ?」
「あの邪鬼は予知能力を持っているってことよね?」
「ううん、確か『算術』だったかな……計算で確率を求めてるみたい」
「なるほど、それならなんとかなるわ♪」
「ホント!?」
「ええ、任せて♪」
レナはそう言うと、細身の剣を抜く……変装をしたレナはいつものアネルの姿とは違い、本来の女神であるレナの姿に近い。髪の色だけは変わらないが、見た目は昔ディータの過去を見たときに出てきたレナその人である。
「それでどうするの?」
「計算できなければいいのよ」
「へ?……そりゃあそうだけど、どうやって?」
確かに、計算できなければ読めないだろうけど……そんなこと出来るのかな?
計算できない攻撃?……そんなものあるの?
いや、待てよ……そもそもどうやって相手の攻撃を予測する?
一番考えられるのは、普通ならどう考えるかを思い浮かべて、相手の性格からどの攻撃をしてくるかを考えるってことだよね?それなら相手の性格が解らなければ攻撃を読めない?
なら、まだ戦いに参加したばかりのレナなら……?
「それじゃ、行くわよ!光弾!」
「魔法攻撃で私の顔を狙ってくる可能性95%」
レナの放った光の弾丸がジェラーノの顔面目掛けて一直線で突き進む。
だけど、それを予期していたのか、ジェラーノは顔を少しズラすだけでその攻撃を回避した。
そんな……まだ会ったばかりの相手の攻撃を読めるの!?
「ふん、大方出会ったばかりの自分の攻撃は読まれないとでも思ったのだろうが……残念だな。邪鬼になったことで私はお前たちの細かな動きですらよく見通せる。筋肉の動きや視線の動きから貴様らの攻撃を予測し計算しているのだ。私に読めない攻撃などな……ぐおおお!?」
ジェラーノが長々と自分の力を騙っていると、突如、彼の後頭部に光の弾丸が当たった。
ジェラーノまるでぶん殴られたかの様に弾丸に後頭部を押しやられ、頭部を大きく地面に近づけた。
その弾丸は普通の光の弾丸と少し違う?……今のジェラーノのやられ方少しおかしくない?
「それじゃ、もう一発行くわね?光弾」
「くっ、今の攻撃はなんだ!?……だが、今度のは確実に……避ける!」
今度は光の弾丸を大きく後ろに飛び避け、悠々と回避するジェラーノ。
確かに、確実に避けた……と思うのだが、光の弾丸は今度はジェラーノの左から現れ、まるでボディーブローのようにジェラーノの脇腹を抉る。
「ぐはっ!………なんだ……何が起きている!」
「どんどん、数が増えるわよ♪光弾」
数が増える?……って、何あの光弾!?
私がレナの放った光弾を目で追うと、光の弾丸は部屋の壁に当たるとまるでゴムボールのように跳ね返っている。
そっか、さっきの違和感の正体がわかったよ……普通、光弾が当たったら当たった瞬間炸裂するのに、さっきの弾丸はまるでジェラーノを殴っているかのような状態であった。
恐らく、レナが魔法に細工をして性質を変えたんだろうけど……器用なことするなぁ。
そして、跳弾はレナの意識で動かしているわけじゃないから動きがランダムだ、部屋にあるでっぱりに当たっただけで予想外の行動を取る……そして、意思のない攻撃は計算では予測できない……なるほど、レナ頭いい~♪
「すごい、レナ!これなら勝て……ぺぎょ!?」
私が目を輝かせてレナを褒め称えようとすると、光の弾丸が私の顔面をぶん殴っていった。
「あ、ごめんなさい。カモメちゃん……私もどこに飛ぶか分からないから危ないわよって遅いわよね?」
「遅いよ!?っていうか、これ私達も危険だよ……って、わきゃ!?」
今度は紙一重で光の弾丸を躱す私……うう、確かにこれならジェラーノに攻撃できるけど、こっちも気が気じゃないよ。
「まあ、とりあえず……光弾!」
「まだ増やすの!?」
「ぐはぁ!?」
「って、あれ?」
今、レナが放った光の弾丸は先ほどまでのゴムボールのような弾丸ではない。普通の光弾だ。
その証拠に、真っ直ぐジェラーノに飛んでいき、ジェラーノに当たり炸裂した。
うん、真っ直ぐ飛んでいったのに当たった?
「飛び回ってる光の弾丸を避けるのに夢中で計算する余裕が無くなったみたいね♪……って、きゃん!」
可愛く人差し指を顔の横で立て、そう言うレナの足元にゴムボール光弾が飛んでくる。
自分も当たる可能性あるんだ……まあ、そうだよね。
でも、そうか、今ならジェラーノに攻撃しても避けられない可能性が高いってことだね……よぉし。
「闇魔滅砲!」
「何っ!?……ぐおおおおお!?」
予想通り、ジェラーノはこちらの攻撃を警戒していなかったのか、私の攻撃をまともに受ける。
「やったぁ……ぎゃん!?」
ガッツポーズをとる私にレナの光弾が襲来した。
……もう。
「ぐ……貴様ら……」
「後ろ、気を付けなくていいの?」
こちらを睨みつけてくるジェラーノにレナが後ろを指さして言う。
あ、ゴムボールのような光弾が二つ一緒になってジェラーノの後頭部を襲撃する。
「がっ!?」
「チャンス!魔水風圧弾!」
「ぐほっ!?」
私の水と風の合成魔法が、ジェラーノの胸を撃ち抜いた。
咄嗟に少し体をズラしたのだろう……心臓のあたりを狙ったのだがジェラーノの体の右胸あたりを私の魔法は貫通する。
「馬鹿な……」
とはいえ、かなりのダメージのはずである。
邪鬼とはいえ、あの状態ならまともには戦えないはずだ。
「もう、良さそうね」
レナは指を鳴らすと、飛び回っていた光のゴムボールを霧散させる。
さすが女神だよね……簡単にやってるけど魔法性質を変化させるなんて……しかも、あんな感じに……私も多少は出来るけどあんなに繊細な変化は無理だろう……すごい。
「さあ、形勢逆転ね」
レナは腰に手を当てると、勝ち誇った表情でジェラーノの方を見るのであった。
レナの機転でジェラーノに深手を負わせたカモメ。
これでジェラーノを倒すことが出来るのだろうか?