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  作者: 恵樟 仁
アンダールシアの危機
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第二幕 5章 4話 万事休す

4話になります。


「シルネア、気をつけろ!ランクの高いモンスターも何匹か混ざってやがる!」

「うん!皆さん、早く逃げて!」



 シルネアとクルードは門へと向かう途中に魔物に追いかけられている街の人達を見つけていた。

 その街の人達を守りながら、一度、領主の館へと進路を変えたのだが、魔物は次から次へと襲い掛かってくる。



「ちっ、兵士共は何をやってやがんだ!」

「多分、それだけ魔物の数が多いんだと思う……はあっ!」



 シルネアは持っているレイピアでゴブリンを突き刺すとゴブリンはその一撃で絶命し、魔石へと姿を変える。Eランク冒険者であるシルネアはゴブリン程度であれば余裕で倒せるが、魔物の群れの中にはハイオークやオーガと言ったランクCの魔物も数匹紛れている。



「種族の違う魔物が連携をとるなんて……これってやっぱり……」



 恐らく、以前と同じく邪鬼が後ろで糸を引いているのだろう。

 しかし、このままでは魔物たちが領主の館へと攻め込んでしまう……今、自分たちがいる場所は領主の館が見える程、館に近い場所なのだ……そして、すでに何匹かの魔物が館の方へと向かって行ってしまっている。



「どうしよう兄さん、このままじゃ魔物が館に!」

「つっても、こっちも手一杯だ……こんな時に魔女の嬢ちゃんは何やってんだよ!」

「ローランシアに行ってるって聞いてるよ……多分、ここが襲われていることも知らないんじゃないかな……」

「ったく……間のわりぃ!」



 確かに間が悪い……いや、むしろその時を狙って襲ってきたのではないだろうか……邪鬼たちにとってもカモメさんは脅威となりえるのだろう……だからこそ、そのカモメさんの拠点であるこの街をカモメさんがいないうちに潰してしまおうと考えたんじゃ……あいつ等なら……いや、アイツならそう考えてもおかしくない……どうする……このままじゃこの街の人達が殺されてしまう……いっそ……。



「おいシルネア!馬鹿な事を考えるんじゃねぇぞ!」

「でも、兄さんこのままじゃ!」

「駄目だ駄目だ、お前が危険になる!絶対に駄目だ!」



 それでも、私はこの街の人達を助けたい……カモメさんみたいに人を護りたいんだ……そう思って私が手に付いている指輪を外そうと手を動かした瞬間……。


 凄まじい轟音と共に、領主の館へと向かっていた魔物たちがこちらに吹き飛んできた。



「うっふぅ~~ん!ここから先には行かせないわよぉん!」



 現れたのは恰幅の良い女性で、先ほど市場であった人だ……確かレディさんと言ったっけ……その人がウォーアクスを振るいながら魔物をなぎ払っていく。



「おいおい、なんだありゃあ……見た目だけじゃなく、強さも化け物じゃねぇか……」

「だぁ~れぇ~がぁ~、化け物ですってぇええええん!」

「ぎゃあああああああああ!いつの間に近づきやがったんだよ!?」



 クルードの悪態を聞いたレディが、近くにいた魔物を一瞬にしてミンチにすると、その次の瞬間にはクルードの目の前へと瞬間移動していた。

 そのあまりの出来事に、クルードは驚きすぎて、仰け反るを通り越してそのまま地面へと頭をぶつける。



「って、あらぁん、シルネアちゃんとクルードちゃんじゃない?」

「レディさん……その……お強いんですね」

「まぁねぇん♪……それより二人も速く館に避難した方がいいわよぉん?ここは私が護るからぁん」

「いえ、私達も冒険者です……微力ながらお手伝い致します」

「あらぁん、それじゃあ……領主の館の入り口を護ってくれるかしらぁん?私が逃した敵が行っちゃうかもしれないしぃん」

「解りました」



 シルネアは頷くと、後頭部を打って悶えている兄の足を掴み、そのまま引きずりながら領主の館へと向かって走っていった。



「良い目をしてるわねぇん♪なんとなくエリンシアちゃんと話している気分になったわぁん♪」



 真っ直ぐな眼をしているシルネアを見て、レディはそう呟く。

 だが、悠長に感慨に深けっている場合ではない、魔物のおかわりはいくらでも来るのだ。



「マズいわねぇん……この量が街に入ってきてるとなると……フィルディナンドちゃんの方も心配になってくるわぁん」



 レディはウォーアクスを振り回しながら、街の外で戦っているであろうフィルディナンドたちを心配するのであった。





 一方、そのフィルディナンドたちと言えば、フィルディナンドとその兵士達、そしてコハクとリーナ、さらにララ王女と獣王国の兵士達、最後にセリシアナとアンダールシアの近衛隊の人達が街の外の平原を埋め付くほどの数である魔物たちと奮戦していた。


 魔物は数が多いもののランクの高い魔物は一部であり、なんとか戦えてはいるのだが、如何せん敵の数が多く、その全てを抑え込むことは出来ずにいた。

 だがそれでも、街の外で魔物を引き付けている為、街へと行く魔物の数は数千程度に抑えられている……だが、それでも数千だ……このままでは街が堕ちるのも時間の問題だろう……。



「ララ王女!すまないが貴殿は街へと戻って防備を固めてくれ!」

「馬鹿言え!ここだってギリギリじゃないか!私が抜けたら抑えられないぞ!」

「だが、このままでは街がっ」

「ちっ……」



 どうしようもないのだ、ここが崩れれば残った魔物も街へと攻め込んでしまう……それは避けなければならない……だからと言って、このまま街へ行った魔物を放置してもやはりラリアスは滅んでしまうだろう……どうしようもない……詰みなのだ……。



「くそっ、なんとかならんのか!」

「なりませんねぇ……いえ、それよりも酷くなりますよ?」



 悪態を吐くフィルディナンドの頭上から声が聞こえる。

 その声に導かれてフィルディナンドは頭上を見上げると、そこには一人の男が浮かんでいた。

 魔法……?そう思ったフィルディナンドだが、浮かんでいる男の髪を見て息を飲んだ。


 赤い髪……そして紫の肌に金色の眼……この特徴は聞いていた『邪鬼』のそれだ……。



「おいおい、黒幕はもっと後に出てくるものじゃないのか?」

「あはは、面白い人ですねぇ……私はこらえ性が無いんですよ……すみませんねぇ」



 フィルディナンドは舌打ちをすると、目の前にいたコボルトの首を剣で跳ね飛ばす。



「おや、お強いですねぇ」

「お褒めに預かり光栄だ………」

「フィルディナンド王!」



 その状況に気づいたコハクがフィルディナンドの元へとやってくる。

 状況は二対一……だが、カモメに聞いた邪鬼の強さが本当であれば、それでも勝ち目がないだろう……せめて、レディでもいれば別だったのだが……いつまでたっても現れないところを見るとレディは街の防衛で手一杯なのだろう。


 万事休すか……。


 フィルディナンドの額に冷たい汗が一つ流れ落ちるのであった。


魔物に数で押され、さらには邪鬼も現れてしまった。

果たしてフィルディナンドとラリアスはどうなってしまうのか?

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