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  作者: 恵樟 仁
アンダールシアの危機
7/81

第二幕 4章 7話 算術

7話になります。


「はああああ!!」

「があっ!」



 私のバトーネがジェラーノの側頭部にヒットする。

 


「く……餓鬼共がぁ!」

「背中がお留守ですよ!」



 怒りの形相で私の方を向くジェラーノにクオンが背後から斬り裂く。

 だが、寸でのところで後ろに気づいたのか、ジェラーノはその場を退きクオンの攻撃を避けようとした。

 完全には避けきれはしなかったが、深い傷を負わせることは出来なかった。



「ぐぁ……貴様らぁ……」

「邪鬼になっていても戦い慣れしていない貴方では僕らの敵ではありませんね」

「戦いの駆け引きが全然出来ていないよ……おまけに頭に血が上ってて目の前の敵にただ攻撃するだけだし」

「餓鬼どもが偉そうにするなぁ!!……いや……ふう……確かに君たちの言う通りだ……」

「へ?」


 

 先ほどまでの激昂が嘘のように落ち着くジェラーノ。

 なになに……いきなりどしたの!?



「ふう……妻にもよく言われたよ、私の悪いところはすぐ熱くなるところだと……そう、私の天啓スキルは『算術』だ……要は計算が得意でね……だが、熱くなっては計算など出来はしない」

「いきなり意味の解らないこと言われても……それが何だって言うのさ……あなたが戦い慣れしていないっていうのは変わらないよ?」

「そうだな……だが、それなら君たちの動きを予想すればいい」

「僕たちの動きを予想?……そう簡単に出来るとは思わない方がいいですよ」

「いや、データは十分に取れた……後は計算式に当てはめるだけだ」

「なら、やってみなよ!」



 私はバトーネを手に、ジェラーノへと突っ込む。

 


「正面から私の頭部を狙って振り下ろす可能性99%……まるで猪だな」

「なっ!?」



 確かに、直線的過ぎたかもしれない……いや、正直、どこを攻撃するかなんて読まれても問題ない……私はそう思っていた。攻撃ラインを読まれても、防いだり避けたり出来なければ意味がない……そう思っていた私は、何も考えず、正面から攻撃を放ったのだ。


 だが、ジェラーノは簡単に私の攻撃を止める。

 真正面から堂々と受けた訳ではない、私の攻撃に力が乗り切る前に、バトーネを持った手の部分を止めることで、軽々と私の攻撃を止めたのだ。



「ふむ、計算はいい……人間のように嘘を吐かないからな……なるほど、ちからの乗る前であればこうも容易く止められるのか」

「ま……まだだよ!闇の刃よ!」

「近距離で魔法を放つ可能性70%……悪いが使わせん」

「きゃあ!?」



 ジェラーノの足が私の顎を蹴り上げる。

 私はその衝撃で魔法を使えず、後ろへと転がった。



「背後からの攻撃の可能性85%」

「なっ……がふっ!」



 私が気をそらしているうちに後ろへと回り込んでいたクオンがクレイジュを振ろうとした瞬間、ジェラーノが後ろへと赤い光球を投げる。

 逆に不意を突かれて、その光球を避けることのできなかったクオンは壁を突き破り、再び庭へと吹き飛ばされた。



「クオン!!」

「ふむ……冷静になればこれほどまでに容易いとはな……少々拍子抜けだ……なあ、魔女よ?」

「………」




 ただ計算をするだけで私たちの攻撃が読まれるなんて……どうする?

 今の調子で攻撃を防がれたら成す術がない……いや、待って……それなら……。



「後ろへ飛びのき私の攻撃が届かない範囲から攻撃を仕掛ける可能性79%」

「え……きゃあ!?」



 私が後ろに飛びのいた瞬間、ジェラーノは赤い光球を数発同時に発生させ、私に投げつける。

 私は、飛びのいている最中だった為、その攻撃を躱すことは出来ない。

 咄嗟に風の魔法でガードするが、その威力は強く、風の結界を突き破り、私へと届く。

 私は、その光球の衝撃で壁を突き破りながら、館の中央へと吹き飛ばされる。



「かはっ……どうしろっていうのさ……」



 正直、今の一撃で私を殺せなかったことを考えれば、ジェラーノの攻撃力はそこまで強いわけではない。完全に虚を突いていて相手を仕留めきれないのだから……だけど……正直手詰まりだ……何をどうすれば倒せるのか全然わからない。

 頭がいいっていうのはこれほどまでにやりにくいものなの?

 これじゃ、ほとんど予知能力だよ……。



「その場から動いていない可能性70%……死ね魔女よ」

「くっ……お断りするよ!魔水風圧弾(アクアウィレス)!」



 私の魔法は一直線に声の下方向へと突き進む。

 だが、敵の悲鳴は聞こえない。



「ふむ、声を頼りに攻撃してくると思ったぞ、悪いが私が貴様に近づくためにわざと攻撃させ時間を作ったのだ」

「あ……」



 いつの間にか真横に現れたジェラーノが大きな赤い光球を頭上に発生させている。

 やばい……。



「さあ、死ぬがいい魔女よ」

「クオン……ごめん……」



 躱すことも出来ない、防ぐことも無理だ……完全にやられる……。

 そう思った時である。



光神裁(ラ・ピュリオン)!」

「ぐおおおおおおおおお!!??」



 突如現れた光の柱がジェラーノを包み込む。

 光の攻撃魔法……誰が?……いや、この魔法を使える人物でこの場にいるのは一人しかいない。



「レナ!!」

「大丈夫、カモメちゃん?変装の最中にすごい音がするんですもの、びっくりしたわ」



 そうだ、レナは私達と一緒にローランシアに行くために、変装をしに部屋を出ていた。

 それにしても、いるならもっと早く来てくれればよかったのに……。



「遅れちゃってごめんなさい、てっきりお姉さまが駄々をこねて暴れているのかなって思っちゃって……」



 酷い理由だった……。

 そもそも、ディータが駄々をこねる理由がないような……いや、ディータは駄々をこねて魔法で暴れるなんてことしないよ!?……え、しないよね?……もしかしてするの?



「ふふふ、冗談よ。レディちゃんやコハクちゃんたちと館の人を逃がしてて遅れたわ、ごめんなさいね」

「……もう……びっくりしたよ。でも助かった」

「随分、苦戦しているみたいね」

「うん、相手にこっちの攻撃が読まれちゃって……どうしたらいいのか」



 私はレナに手を引いてもらい、立ち上がる。

 私が立ち上がると同時に、さっきの光の魔法で壊れた天井の瓦礫の下敷きになっていたジェラーノが瓦礫を崩しながら這い出して来る。



「まだ、仲間がいたか……」

「あれが邪鬼ね……おぞましい姿ね……なんであんなものを作ったのかしら……」

「あれ、元人間なんだよ……」

「……何ですって?そう……歪められているのね……でも何故?」

「どういうこと?」

「詳しいことはアイツを倒してからにしましょう……今は敵に集中よ」

「わかった」



 とはいえ、ジェラーノが私の攻撃を予想してくる以上、どうやって攻撃をすればいいのか……。

 私は頭を捻りながらジェラーノと対峙するのであった。



 

攻撃を読まれてしまうカモメ。

果たしてジェラーノを攻略することは出来るのだろうか?

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