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  作者: 恵樟 仁
アンダールシアの危機
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第二幕 5章 1話 ラリアスの危機

5章になります。


「アンリエッタ様!フィルディナンド殿!」

「何事です!」



 ラリアスの街の人達、そしてフィルディナンド王の兵たちの協力により建て直された領主の館。その中にあるアンリエッタの執務室に兵士が一人駆け込んでくる。

 


「魔物です!魔物の大群が攻めてまいりました!!」

「なんだと!?」



 兵士の報告を聞いてフィルディナンドが驚愕する。

 魔女殿達のいないこのタイミングで魔物の襲来が起きようとは……いや、以前にもこのラリアスは魔物に襲われたと魔女殿が言っていた……その時は確か、邪鬼という化け物が魔物を操っていたという……。

 もしや、今回のも偶然ではないのだろうか?



「フィルディナンド様!」

「ああ、魔物の襲撃というのであれば我々も力を貸すことが出来る……すまないがこの館にいる我が兵を呼んできてもらえないか?」

「は、はいっ!」

「それと、ララ王女にも伝えなさい後、ギルドマスターのフランクにも!」

「はい!」



 兵士は返事をすると部屋から飛び出していった。

 


「このタイミング……」

「ああ、恐らく誰かが裏で糸を引いているのだろう……それも恐らく邪鬼と呼ばれる存在だろうな」

「まさか、お父様が……」

「可能性はないとはいえん……だが、魔女殿のいないこの時に魔物の大群はマズいな」



 少数の魔物であれば、レディやララ王女のいるラリアスが落とされることはないだろう。

 だが、大軍となれば対処が仕切れない可能性もある……。



「敵の数次第か……」

「はい……私は門へと行ってきます……敵の正確な数を把握したいので……」

「いや、それは俺が行こう……こう見えても戦闘も得意でな俺が見たほうがいいだろう」

「お願いします」

「アンリエッタ殿は周辺の国で援軍を頼める場所がないか探してくれないか?」

「解りました……ですが……」

「ヴァルガン以外は期待できないか……」



 ヴァルガンから援軍が来ればそれでもいいのだろうが、すでにララ王女が兵を連れてきている状態であるこれ以上に兵をよこせとは言えないだろう。

 となれば、やはり敵の数次第か……こちらにはレディもいるある程度の数であればなんとかなるだろうが……いや、考えていても仕方がない……先ずは自分で確認をしに行ってみるか。

 


「では、行ってくる」

「はい、お願いいたします」



 フィルディナンドは領主の館を出ると、まっすぐに門へと向かった。

 一国の王でありながら、最前線で戦いを行うフィルディナンドはフットワークが軽い。

 ソフィーナに言わせれば鉄砲玉の様で危なっかしいというのだろうが、この王だからこそ付いてくるものも多いともいえるのだ。



「どんな感じだ?」

「ツァインの王!?……なぜこのような所に!」

「敵を確認しに来た……ここから見えるのか?」

「いえ、肉眼ではまだ確認できておりません……ですが、クエストに出かけていた冒険者の話では1万を超える数の魔物がこちらに向かっていると……」



 1万を超えるか……魔女殿がいればそれほど多い数ではないのだが……こういう時、大規模な魔法が使える人間がいないのは辛いな……しかし、そこまで多い数ではない。

 自分がツァインから連れてきた兵の数は120人……このラリアスにいる兵の数は200人程だろう。

 それに加え、この間、魔女殿達が助けたアンダールシアの近衛隊が250人、さらにヴァルガンの姫が連れてきた兵が150人……合計720人か……。


 他にも冒険者たちがいるが合わせても800人くらいだろう……個々の能力が高いとはいえ1万の敵……そして恐らくいるであろう邪鬼をも相手にするとなると厳しいものがあるな。



「魔物の種類は解るか?」

「報告では様々な魔物がいたとしか……ゴブリンなどの弱い魔物Mいたようですが、ゴブリンキングやハイオークを見たという報告も……」



 ランクFからランクCまでの様々な魔物がいるということか……確実に自然現象ではないな。

 となれば、裏に邪鬼がいるのは確実か……こちらで邪鬼に勝てそうな戦力と言えばレディ、コハク、リーナ……それにララ王女くらいだろうか?

 だが、その者たちを抑えられればこちらの勝ち目はなくなる……どうする?



「おい、レディたちをここに呼べ!」

「はっ!」



 この門に来る途中に、恐らく部屋へと飛び込んできた兵士が呼んでくれたであろうツァインの兵士を捕まえ、連れてきていた。その兵士に、命令をしフィルディナンドは顎に手をやり考える。



 まずはこちらの戦力の確認もしなければならない……アンダールシアやヴァルガンの兵士は魔物の討伐に協力をしてくれるのだろうか?……恐らくしてくれはするだろうが彼らの一人一人の強さは?

 それがわからなければ作戦も立てられない……幸い、まだここから敵の姿は見えない……レディたちが来たら一度、館に戻って作戦を立てなければならないか……。


 そう考えていた時である、隣で門の外を見張っていた兵士が叫びだした。



「魔物だ!魔物が見えたぞ!!!」

「ちっ……もっとゆっくりしていればいいものをっ」



 フィルディナンは悪態を吐くと門の外に目をやる……そこにはおびただしい数の魔物が森の中から出てくるところであった。



「おいおい……一万って数じゃないように見えるのだが?」



 すでに森から出てきているだけでも一万を超えていそうな数である……だというのに、魔物の数はどんどんと増えていく………。



「マズいな……」



 フィルディナンドが難色を示す……一万であれば作戦次第ではなんとかなったかもしれないと思っていた………だが、森から出きった魔物たちの数をざっと数えると一万の倍……約二万の魔物たちが狂気の眼を宿しながらこちらに近づいてきてた。


 万事休すか……。

突如ラリアスに襲い掛かる魔物の牙……カモメ達のいない状況で果たして撃退できるのだろうか?

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