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  作者: 恵樟 仁
アンダールシアの危機
28/29

第二幕 5章 25話 滅びの力

お待たせいたしました、25話になります。


 シルネアとクルードが邪鬼だと判明した5階を後にし、私達は続く6階へと移動してきた。

 そこには、予想通り、ランクSの魔物がこちらを睨みつけている。



「ドラゴン……」

「ま、想像通りってところか?」



 上の5階にいたのはランクAのキメラだった。

 それを考えれば6階にいるのはランクSの魔物である可能性が高い。それは解っていたが……。



「6階でランクSか……7階以降はどうなるんだろうね?」

「7階はランクSSの魔物だろう?」

「じゃあ、8階は?」

「……さあな」



 基本的に魔物のランクはSSまでしかない。

 SSの魔物だって、伝説上の魔物であり、そうそうご対面できるものでもないのだ。

 それ以上となると……正直想像も出来ないんだけど……。



「まあ、行ってみりゃ解るか」

「そだね」


 クルードの言う通り、考えても仕方ないかな。

 とりあえずは目の前のドラゴンを倒すことに集中しよう。

 目の前でこちらを睨んでいるドラゴンもやはり強化されているようで、目が血走っている。

 となるとランクはSSS……・そんなランクの魔物は存在しないけどそれだけの強さはあると考えるべき……かな?



「で、魔女の嬢ちゃん……どうする?」

「どーするって倒すしかないよ?」

「いや、どうやって倒すかってのを聞いているんだが……正直さっきのネコもどき程、楽に倒せる相手じゃねぇぜ?」

「私からしたら先ほどのキメラも十分脅威だったんですけど……」



 クルードの言葉にメリッサがため息を吐きながら言う。

 正直、想像も出来ない強さであろうモンスターを自分ひとりで戦ってみたいという気持ちもないとは言えない……これくらいならまだ一人でも行けると思うんだよね。


 だけど、それで魔力を使い切ったりした次の階から迷惑をかけることになっちゃうよね……。ちょっと残念だけど……。


「協力してたおそっか」

「お、一人じゃなくていいのか?」

「うん、まだこの後4階層も残ってるし」

「確かに、ここでへばっちまったら元も子もねぇか」



 私の言いたいことを理解してくれたのか、クルードは槍を構える。



「ま、待ってください!」



 私もバトーネを構え、ドラゴンに目線を移したところで、後ろにいたシルネアが声を上げた。



「ん、どしたの?」

「私に戦わせてもらえませんか?」

「おい、シルネア」

「兄さん、お願い」



 私にってことはシルネア一人でってことだよね?確かにシルネアも邪鬼なのであるなら相当強いと思うけど……。



「私の力もカモメさん達に見てもらいたいの……」

「はあ、解ったよシルネア。お前の気の済むようにしろ」



 私の力……ということはシルネアは何かしらの天啓スキルを持っているってことかな?確か天啓スキルを持っていないって言っていたけど。

 諦めたようにクルードがため息を吐いた……やっぱりクルードはシルネアに甘いよね。

 シスコンなのは本当なんだろうなぁ。



「カモメさん、私には天啓スキルが無いと言ったことを覚えていますか?」

「うん、もちろん覚えているよ?」

「ごめんなさい……私は嘘を吐きました」

「ううん……でも、隠しておかないといけないようなスキルだったってことだよね?」

「……はい」



 クルードは自分の天啓スキルを隠していなかった。という事はシルネアだって普通の天啓スキルであるなら隠しておく必要はないだろう。ってことは相当変わったスキルなのか、もしくはそれだけ危険なスキルということなのだろうか?



「私の天啓スキルの名前は『滅びの力』と言います」

「滅びの力?」



 随分と物騒な名前のスキルだね……。って私の闇の魔法も大概であるけど……。



「この力の強さは今、お見せしますね」



 そう言うと、シルネアはドラゴンに向かって歩いて行く。

 先ほどのクルードと同じで、シルネアは自分の指についている指輪を外すと、赤い魔力を自分の周りに纏い、髪の色を赤、肌の色を紫へと変化させた。



「……」



 まだ、邪鬼に抵抗があるのだろう。メリッサがシルネアの姿を見て複雑な表情をしている。

 


 赤い魔力を纏いながら近づくシルネアに、ドラゴンが視線を移す。

 歩きながら近づいてくるシルネアに、ドラゴンは息を大きく吸い込み炎のブレスを吐き出した。

 凄まじい火力の炎のブレスがシルネアに襲い掛かる。そのブレスをシルネアは避けることもせず、その火力に飲み込まれた。


「シルネア!?」



 いくら邪鬼だからと言ってあの火力のブレスをまともに喰らっては唯では済まないだろう。

 そう思った私は思わず叫んでしまった。


 だけど、私の心配とは裏腹に、シルネアは炎の中を悠々と歩き、ドラゴンへと近づいて行っていた。

 シルネアには炎が効かない?………ううん、違う……先ほどまであった赤い魔力の色が少し変わっている。赤から赤黒くなっているのだ。それが、炎を防いでいる。



「あれがもしかして滅びの力?」

「ああ、そうだ……シルネアの周りにある炎のブレスをあの力が滅ぼしてんのさ。だからシルネアには炎が届いてねぇんだ」



 滅ぼしている……炎滅ぼすなんて言われてもよくイメージがわかない……けど、あれだけ凄まじいブレスがシルネアには全然と届いていない。滅びの力というのが凄いという事は私でも解る……そう思ったのだが、その次の瞬間、私は滅びの力の本当の恐ろしさを目の当たりにしたのだ。



「ごめんね」



 シルネアが一言呟くと、赤黒い魔力の波がドラゴンへと襲い掛かった……そして、ドラゴンはその力に抗うことも出来ず、いとも簡単に消えてしまったのだ。



「………え?」



 私とメリッサが唖然とする。今のが滅びの力?……私の闇の魔法みたいな変わった魔法なのかと私は思っていた……だけど違う……この力は規格外である。あの力は単純に滅びを与えるものだ……そこに一切の抵抗は許されない。もしその力を向けられればその力から逃れることは出来ない。



「シルネアー!怪我はないか!」

「ないよ、兄さん……もう、心配しすぎだってば!」



 何が心配なのか………ううん、そうだ、クルードは自分たちが邪鬼だと知らせたときもシルネアが私達と一緒にいても心配している素振りが無かった……あんな風に過保護なクルードがおかしいなと思ったけど……そうか、クルードは本気でシルネアを心配しているわけじゃない……ただ、自分の可愛い妹を愛しているから言葉を掛けているだけで、本気で彼女の命を心配しているわけじゃないのだろう……ううん、そこまで極端なことじゃないんだろうし、クルードがシルネアを愛しているのは嘘じゃないのだろうけど……もし、あの時私達がシルネアに攻撃を仕掛けてもシルネアが傷つくとは思っていなかったのだ……。



「カモメさん……これが私の力『滅びの力』です」

「すごいね……この力ならこのまま簡単にクリアできちゃうんじゃない?」

「え?……えっと、はい」


 いや、もう……凄いとしか言いようがない力だよね……。

 なんか、シルネアが驚いたような顔してるけど、すごいとしか言いようがないよ。



「えっとあの……怖いとかそう言うことは……?」

「へ?」

「えっと……いえ、何でもないです」



 今度は何やらホッとしたような表情をするシルネア。

 怖いって……滅びの力がってことだよね。確かにすごい力だし、自分に向けられたら怖いと思うけど。

 だからって、シルネアが怖いわけじゃないしね。



「はあ……それより、7階に行こうぜ」



 クルードが私を見て溜息を吐く。なんか、またやれやれって感じで溜息を吐かれたんだけど……どういう意味かな?


 頬を膨らませた私を尻目に、クルードは次の階への扉を潜っていったのだった。


シルネアの力を見たカモメ。

その滅びの力はカモメの想像を超えるものであった。

果たして、カモメは無事にこのダンジョンをクリアできるのだろうか?

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