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  作者: 恵樟 仁
アンダールシアの危機
22/29

第二幕 5章 19話 メリッサの新たなる技

19話になります


 私達はクルードの話通りであるのならボスとの10連続の戦いになるであろうダンジョンへと足を踏み入れる。クルードの言う通り、ダンジョンへの入り口に足を踏み入れると、目の前の景色が一瞬にして変わる。大きな空洞……そして、その中央には一匹のモンスターがいた。



「コボルト……?」

「コボルトリーダーだな」



 コボルト系のモンスターは二足歩行の犬の顔を持ったモンスターである。

 その特徴は個体の強さはそれ程ではないものの熟練の冒険者を騙すほどのずる賢さを持っている。

 普通であれば群れで行動をする魔物であるのだが、この大きな空洞を見渡す限り、一体しかいないようだ。



「仲間が隠れられそうな場所って……ないよね?」

「だろうな……だだっ広いだけだしな……まあ、強化されてはいるだろうが一階からそこまで強いモンスターは出てこねぇよ……俺たちが入った時も強い敵が出てきたのは5階からだったからな」

「そうなんだ……」



 また違和感である……まるでクルードはコボルトリーダーが大したことないと言っているかのようだ……確かに、そこまで強いモンスターではない。ランクで言えばDのモンスターだ……クルードの冒険者ランクはC……普通に考えれば強化されているのであれば単純にランクが一つ上がったコボルトリーダーは苦戦する相手だと思うんだけど……クルード実は強かったりするのかな?……うーんでも、わざわざ自分を弱く見せる必要ってなんだろう?



 私がそんなことを考えていると、メリッサが声を上げる。



「カモメ様!気を付けてください……様子が変です!」

「ググ……ガガ!」



 モンスターがこちらに気づきその眼をこちらに向ける……だが、その眼は血走り、とても普通の状態ではなかった。



「強化されるとあんな感じになってるの?」

「いや?……あんな感じじゃなかったと思うが……なあ、シルネア?」

「はい、以前戦った敵はあんな風に異常な状態ではありませんでした」



 ということは、このコボルトリーダーが普通じゃない状態という事だろうか?

 少し、雲行きが怪しいね……とにかく、何かされる前に倒してしまった方がいいだろう。



「いきなり決めるよ!闇の刃(オプスラミナ)!!」



 闇の刃が、コボルトリーダーの首を捉える。

 普通のコボルトリーダーであればこれで一撃で終わるだろう……多少強化されていてもその結果は同じである……だが。



「え!?」


 

 コボルトリーダーは私の闇の刃を軽々と躱すと、ものすごいスピードでこちらへと突っ込んできた。



「速い!?」



 確かに犬の頭を持っているだけあってコボルトはスピードの速い魔物である……だが、それでも私の闇の刃を軽々と躱せるほど速いわけでは無い……なのに、この敵はそれを行い、予想以上のスピードでこちらへと突っ込んできた。


 だが、そのコボルトと私の間に一つの影が躍り出る。

 そして、コボルトリーダー放ったシミターの一撃を持っていた剣で受け止める。



「メリッサ!」

「カモメ様……この敵は私に任せてもらえませんか?」

「え?」

「ドーガ様から頂いた力を試してみたいのです……それに、新しく考えた戦い方も……」



 コボルトリーダーの強さが解らない以上、それは危険だと思う……が、この先の魔物もこのように予想以上の強化をされているのならメリッサの力を理解していないといけない。

 いざ共に戦うときにどこまで任せて大丈夫なのか分かっていないと、最悪彼女の命を散らせてしまうかもしれないのだから……。



「解った……メリッサの新しい力……見せてもらうよ!」

「はい!」



 メリッサは力強く返事をすると、コボルトリーダーのシミターを押し返す。

 


「グルルルル」

「行きます……炎よ、我が剣となせ!」



 メリッサがそう言うと、メリッサの持っている剣に炎が迸る……なにあれ?



「はああああ!!」


 メリッサはその燃える剣を振るうと、コボルトリーダーはその攻撃を躱す。

 だが……。



「風よ!」



 メリッサが再びそう叫ぶと、突き出した手の先から風を発生させ自分をコボルトの移動した方向へと射出した……器用な事をするなぁ。



「ガウッ!?」



 いきなり自分へと猛スピードで突っ込んできたメリッサにコボルトは驚き、慌てて持っていたシミターでメリッサの剣を弾き返そうとするが、メリッサの剣と交わる瞬間、あっさりとその刀身が折れてしまう……いや、斬られてしまった。



「うわ……すごい……」

「炎に変えた魔力を剣に宿して、攻撃力を上げたのか?」

「ううん、多分それだけじゃないよ……あれ……刀身を魔力で作ってるんだよ」

「あん?なんだそりゃ?」



 恐らく、先ほどまで普通の剣に見えたのは土の魔法で本物のように見せかけているだけの魔力で出来た刀身だったのだろう……本来、あの剣には刀身が無いのだ。



「なんで、わざわざそんなことをするんだよ?」

「多分、剣を魔力で包むより、魔力で刀身を作った方が威力が高いんだ……それだけ、メリッサの魔力が上がっているんだよ」



 いや、それだけじゃない……私も光と闇の合成魔法で似たようなものを作ったことがあるが、あれは制御がとても大変だった。ただ、放出するだけでは普通に魔法を放つのと変わらない。研ぎ澄まされた刃のようにするには余程の集中力と技術力が必要なはずだ……集中力と技術力で言えば確かにメリッサは持っていた……それだけの努力家だった……それがドーガのお陰で魔力を持つことが出来てここまで強い力を手に入れることが出来るなんて……すごい……本当にすごいよメリッサ。


 私は炎で出来た剣を持つメリッサを見て心の底から彼女を褒め称えるのであった。



 

新たなる力をつけたメリッサ。

彼女の力はどれほどのものなのか?

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