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  作者: 恵樟 仁
アンダールシアの危機
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第二幕 5章 16話 友好

16話になります。


 私は今、鬱蒼とした森の中を歩いている。

 森の中の道を歩いているのではない……道なんてない……あるのは獣が通った後だと思われる、所謂、獣道だ。なぜこんな場所を歩いているのかというと、簡単な事である……目的地である女神と話すことの出来るダンジョンがこの先にあるからだという。



「ねえ、クルード……確認のために聞くけど……ほんっとうに……この先なんだよね?」

「ったく、だからさっきから言ってるだろうが、間違いなくこの先だってよぉ」



 うう……でも、この森、道も何もないから目印になる物もないし……同じ場所をぐるぐるしているような気になるんだよね……。


 私が、シルネアの方に視線を向けると、シルネアも困ったような顔をしながら間違いありませんと頷いて返してくれた。



「メリッサ、大丈夫?」

「は、はい……大丈夫で……わきゃっ」



 私に肯定の返事を返そうとしたメリッサが木の根に足を捕られ見事に転ぶ。



「だ、大丈夫ですか?」

「あう……大丈夫です……ありがとうございます、シルネアさん」



 転んでしまったメリッサをシルネアが支えて起こす。

 はあ……本当にこの道、あってるのかなぁ……。

 私がそんなことを考えていると、前を行くクルードが声を上げる。



「お、見えてきたな」

「え、着いたの!」


 クルードが進んだ先に駆け足で近づくと、そこは少し開けた場所に出た。

 そこには、大きな湖があって、とても幻想的な雰囲気である。

 確かに、これなら女神につながるダンジョンがありそうかも……、そう思って私はあたりをキョロキョロと見回す……だが、ダンジョンらしきものは見当たらない……もしかして、湖の中に沈んでたりするのかな?


 私がそんなことを考えているとそれが顔に出ていたのだろう。

 クルードが訂正をしてきた。


「ああ、すまん……着いたって言ってもダンジョンに着いた訳じゃねぇ……ここが大体中間点くらいだ」

「ええええええ!?………まだ、半分なの……」



 クルードのその言葉を聞いた瞬間、私の後ろでメリッサが地面に倒れる……ああ、やっぱり、きつかったよね……。うん、仕方ない……歩きにくいし、虫は多いし、魔物も多かったし……この中間点に来るまででほぼ一日経ってしまっているし……こんだけ歩いてまだ中間点なんだ……とほほ。




「仕方ねぇだろ?空を飛んで行っても木々が邪魔でよくわからねぇし、歩いて行くしかねぇんだからよ」

「メ、メリッサさん、大丈夫ですか」

「あうう……」



 最近逞しくなってきたけど、元王女様にはきついよね……いや、ぶっちゃけ冒険好きの私でもキツイって……何より、この開けた場所に出るまで火の光もとおらない程、鬱蒼としていて、すごい暗かったし……気が滅入ってくるもん……。

 というか、なんでクルードとシルネアは平気なのさ……。



「だらしねぇなぁ」

「もうっ、兄さんと一緒にしちゃ駄目でしょ!」



 いや、シルネアも大概だからね……。



「んじゃ、とりあえず、ここで今日は野宿だな」

「あ、ちゃんとキャンプの準備はしているので安心してください」



 ああ、それでクルードは凄い荷物の量だったんだ……あんなの持って良く歩けるなぁと思ったけど必要なものだったんだね……。

 私も一応、寝袋くらいは用意してたけど、テントがあるならそれを使わせてもらおうかな。



「それじゃ、準備をするから、その間に火を起こしておいてくれ」

「了解、燃えそうな木の枝を拾ってくるよ」

「それなら私も……」

「大丈夫、メリッサは休んでおいて」

「あ、じゃあ私が手伝います」

「ありがと、シルネア」



 私とシルネアは木の枝を拾いに移動する。

 魔法で乾燥させれば普通の木の枝でも良く燃やせるようになるので、特に選んで拾ったりはしない。

 こういう時、魔法は便利だねぇ。

 


「そういえば、ごめんね。案内なんてさせちゃって……」

「え、いいえ。お役立てて嬉しいです。それに、カモメさんには以前助けていただきましたし」



 そう言えば、シルネア達とあったのはオークの村だったっけ……あの時、シルネアはオークたちの襲われてピンチになっていたのを私達が助けたんだった。



「そういえば、シルネアはなんで冒険者になったの?」

「私は……その……人の役に立ちたくて……」



 確かシルネアは天啓スキルを持っていないと言っていた。

 この大陸に来た頃の私達は天啓スキルの事を良く知らなかった為、特に気にしてもいなかったのだが……この世界の人々は全員と言ってもいいほど、天啓スキルを持っている。

 それを考えると、確かにシルネアは珍しいのだろう……でも、結界の中の私達からしてみればそんなものが無い方が普通なのである……もしかして、シルネアは結界の中の人間だったんじゃないだろうか?……さすがに違うか……お兄さんのクルードはちゃんと天啓スキル持ってるみたいだしね。


 あ、もしくはドーガ達みたいに、解りにくい天啓スキルなのかもしれないけど……。

 でも、どちらにしても戦闘向きのスキルではないだろう……それなのに、人の役に立ちたいからと冒険者になろうと思ったシルネアは立派だと思う。

 他の冒険者に無能などと揶揄されているにもかかわらず、シルネアは自分の信念の為に自分の道を曲げることはない……それって凄く大変な事だと思う……だから私はそんなシルネアを応援したくもなるのだ。



「そっか、何か手伝えることあったら言ってね?」

「すみません、私が弱いばかりに」

「何言ってるのさ、別に同情したわけじゃないよ?シルネアが立派だと思うから手伝いたいの……それに、友達だしね♪」

「え……あ……ありがとうございます」



 私がそう言うと、頬を赤く染めて照れながらお礼を言うシルネア。そのしぐさが同じ女の私から見ても可愛いと思ってしまった。



「さて、こんだけ枝を集めれば十分でしょ」

「そうですね、兄さんの所にもどりましょう」



 そう言うと、私達は来た道を戻るために踵を返す……私たちの目的はあくまで女神に話を聞くことだ……だけど、この旅でシルネアとクルードとももっと仲良くなれたらいいなぁ。

 私はそんなことを考えながらメリッサたちのいる湖へと足を進めるのであった。

シルネア達と共にダンジョンを目指すカモメ達。

険しい森を進む中、シルネア達と心を通わせるのであった。

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