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  作者: 恵樟 仁
アンダールシアの危機
17/29

第二幕 5章 14話 圧倒的な力

14話になります。


「なっ……新たな化け物だと!?」


 グラゴストを吹き飛ばすほどの力を見せた女性を見てセリシアナは驚愕の声を漏らす。


「誰が化け物よぉおおおん!」

「ひっ!」

「レディさん!」



 セリシアナの声が聞こえたレディが鋭い眼光を放ちながら吠えるとその迫力に普段とは似使わない可愛らしい悲鳴をセリシアナが漏らした。



「リーナちゃんに呼ばれて来たわよぉん♪」

「間に合って良かったです」



 空間魔法の渦から遅れてやってきたリーナが安堵の息を漏らしながら近づいてきた。



「よくやってくれたリーナ……街の方はどうだった?」

「はい、犠牲はあったみたいですがほとんどの魔物は駆除されておりました」

「そうか……さすがレディだな」



 その功績のほとんどは自分では……だが、そのことを教えることの出来ないレディは心の中で溜息を吐いた……そして、先ほど自分が殴り飛ばした敵を見ると、その敵は先ほどの攻撃でもダメージを受けていないのか平然と起き上がるグラゴストの姿があった。



「馬鹿なあれでも無傷だというのか……」



 その姿に驚愕するセリシアナ……だが、当の攻撃した本人であるレディは自分の攻撃が全く効いていないというのにまるで気にしてない様子であった……いや、むしろそれを喜んでいるかの如く口端を上げる。



「頑丈ねぇん……でも次はどうかしらん?」



 そう言うとレディは一瞬にしてグラゴストとの間合いを詰める。

 そして今度は手に持っていた斧を振り上げ、グラゴストの脇腹へと振りぬいた。

 振りぬかれた斧はグラゴストの脇腹へと食い込み、緑の血しぶきを上げる。

 はじめてその肌を貫かれたグラゴストが、悲鳴を上げた。



「あの皮膚を貫いた……」



 今まで、自分たちのどんな攻撃でも傷一つ付けることの出来なかったグラゴストの皮膚が初めて傷を負う……だが、レディの攻撃はその一撃で終わらない。

 脇腹に刺さった斧を引き抜くと、次は上へ振り上げグラゴストの肩口へと振り下ろす。

 これもまたグラゴストの皮膚を抉る……そして振り上げ振り下ろす、振り上げ振りぬく……それを何度も繰り返すのだ。



「うっふううううん!!」

「………」



 一方的なその光景にセリシアナは身を震わせた。

 一体どちらが化け物なのか……いや、何でもない……もしそれをまた口に出せば今度はあの斧がこちらに飛んでくるかもしれない……そう思うと、肝が冷えた。

 実際はレディがそんなことをするわけがないのだが、レディとかかわったことが殆どないセリシアナにはレディの性格は解らないのだ。



「とどめよぉおおん!!」



 レディが大きく斧を振り上げ、渾身の力を込めてグラゴストの頭へと斧を振り下ろす。

 グラゴストはその一撃を止めようと両腕を頭の前へと突き出すが……レディの斧はその腕を切断し、そのままグラゴストの頭へと振り下ろされた。


 頭を砕かれたグラゴストは重力に任せるまま背中からその場に倒れるのだった。



「倒した……圧倒的に……」



 その光景を見せられたセリシアナ……それにララ王女も唖然と口を開けていた。

 今まで、自分たちが苦労したのは一体何だったのだろうか?と思う程レディは圧倒的力を見せつけたのだ。レディの攻撃力はそれほどまでに高いのだ……だが、一概にグラゴストを圧倒的に倒せたからと言ってレディがララ王女よりも圧倒的に強いと言う訳ではない。もちろん、総合的にもレディの方がララ王女よりも強いのだが格段にレディが上の部分がある……それは攻撃力だ。攻撃力だけをみればレディはカモメ達の中でもトップクラスの力を持つだろう。そして、今回のグラゴストが鈍重な出来だったのもレディにしたら戦いやすい相手であった。レディの攻撃力を躱さずそのまま受けてくれるのだから。


 その結果がこの圧倒的な勝利であったのだ。

 それはきっとララ王女たちも解っているのだろうが……それにしてもあの攻撃力は異常すぎた……なぜ、殴り飛ばしただけであの巨体が吹っ飛んでいくのか……自分たちの眼を疑う程、レディの攻撃力は凄まじかったのだ……そして二人は心の中で同じことを思う……「さすがは魔女の一味」と……。



「みんな無事でよかったわぁん♪」

「すまないなレディ……お前に頼りきりになってしまった」

「そんなことないわよぉん」



 謙遜だなとフィルディナンドが返すが、レディは心の中で本当にそんなことはないのよぉんと返していた……。

 レディが倒れたグラゴストに背を向けフィルディナンドたちの元へ近寄ろうとすると、首から上を粉砕されたグラゴストがいきなり立ち上がる。



「馬鹿なっ……頭を吹き飛ばされて生きているなど……っ!」



 セリシアナがそう言った瞬間、グラゴストの腹が裂け、そこに新たな口が生まれた。

 そして、その口はレディへと迫る……レディを喰う気だ。

 頭を吹き飛ばされるという程のダメージを負ったグラゴストはその本能である食べるという衝動でレディへと襲い掛かった。レディもまさかあれで倒せていないとは思っていなかったのだろう。完全に不意を突かれてしまい、避けることも防ぐことも出来ずにその口の接近を許す。


 次の瞬間にはその腹の口がレディを捕食するといった瞬間……いきなりグラゴストは灰のようになり消えてしまった……。



「な……何が起きた?」

「グラゴストが消えた……?」

「ふう……恐らく、レディの攻撃でほぼ消滅しかかっていたのだろう……力を振り絞りレディに襲い掛かったがレディに辿り着く前に消滅してしまった……ということではないか?」



 フィルディナンドがそう言うと、他の者も納得した……レディを除いて。

 レディは今の敵の滅び方に覚えがある。

 そう、邪鬼と戦っていた時にシルネアが使っていた滅びの力である。

 そのことに気づいたレディが辺りを見回すと、街の門の下にシルネアが立っていた。

 


「まったく、お人好しねぇん」


 

 シルネアの横ではクルードが辺りを気にしながら頭を抱えていた。

 どうやら、他には人がいないようだったので安堵の息を吐いている。


 レディはそんな二人に頭を下げると、シルネアはブンブンと顔の前で手を振りながら照れていた。

 お礼を言われるのに慣れていないのかしらぁんと思いながらもレディは笑った。






 ――――――――――そう、確かに周りには誰もいなかった……地上には。


 今の光景を、空中から見ていたものがいた。

 その者は赤い髪を靡かせながらにやりと笑う……。



「良いものを見つけたわね……なかなか使えそうだわ」



 そう言うと、彼女―――災厄の魔女はその場から消えたのだった。

グラゴストを倒したレディ。

そして、レディのピンチを再び救ったシルネア。

だが、その光景を見て笑うものがいた……彼女は一体なにを考えているのか?

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