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  作者: 恵樟 仁
アンダールシアの危機
13/29

第二幕 5章 10話 グラゴスト

10話になります。



「人間にしては楽しめましたねぇ……」

「ぐはっ!」



 悠然と立つ邪鬼の前に、三人の男女が倒れていた。

 フィルディナンド、コハク、そしてララ王女である。



「くそっ……アタシの鉄で傷もつけられないなんて……」

「僕の弓も届きません……」

「邪鬼というのはここまでのものなのか……」



 ボロボロになった三人を見ながら邪鬼は愉しそうに笑う。

 すでに三人とも力を使い果たし、邪鬼に牙を向けることも出来ないだろう……だというのに、邪鬼はトドメを刺す気配がない………。



「さて、もう終わりかな?」

「くそっ……」

「ふむ、本当に終わりのようですね……もう少し遊べると思ったのですが……おや?」



 一歩、一歩とフィルディナンドに近づいていた邪鬼の脚が止まる。

 そして、邪鬼はラリアスの街の方向を向くと眉を顰める。



「街に行った二人の気配が無くなりましたね……作戦が失敗したというのですか……」

「街に行った二人だと………まさか、お前以外にも邪鬼がいたというのか……」



 フィルディナンドの問いに邪鬼は答えない……だが、彼の反応からそうであることを容易に想像できた。そして、目の前にいる邪鬼が自分たちを相手に遊んでいた理由もう想像できた。この邪鬼は囮だったのだ、別の邪鬼がすでにラリアスの街に潜入しており、その者たちが街を破壊する。

 そして、街の強者たちを引き付ける役をこの邪鬼がしていたという事だろう……ということは街に残っていたレディが邪鬼を二体も倒したという事か……?



「あの二人を倒すほどのものがいるとなると、私一人では手に負えないかもしれませんね……ここは一度、引くべきでしょう……」

「逃げるつもりか……貴様らの目的は一体何なんだ!なぜこの街を襲った!」

「理由ですか?……そんなもの邪魔だからに決まっています……我らが王……我らが神の復活の邪魔になるかもしれないものはすべて滅べはいいのです!」

「邪鬼の王……魔女殿が言っていた邪神というやつか……だが、それの復活と我らと何の関係がある!」

「あなた方が闇の魔女と呼ぶ少女は少々厄介ですのでね……その魔女の拠点であるこの街を壊してしまおうと思ったのですが……どうやら失敗のようですね」



 随分とぺらぺらと喋る……ここまで素直にしゃべってくれるとは正直フィルディナンドも予想外であった……予想外すぎて、彼が言っていることはすべて嘘なのではないかと思ってしまう程である……だが、嘘を言う理由もないはずだ……それともその理由を自分がしらないだけなのだろうか……。



「さて……作戦が失敗したのでしたら早々に立ち去るとしましょうか……恐らくこのまま襲っても街を潰すことは出来ないでしょうから……でも……もう少しくらいは恐怖を与えておきたいですねぇ」

「何?」



 そう言うと、邪鬼は指をパチリと鳴らす……すると、邪鬼の後ろに現れた渦から魔物が3匹現れた。



「なんだ……この魔物は……」



 フィルディナンドが驚愕するのも仕方がない……一国の王であり、博識の王でもあるフィルディナンドですら、今、目の前に現れた魔物が何か知らないのだ。

 フィルディナンドはもしや、この大陸にのみ生息する魔物なのかと思い、ララ王女の方を見るがララ王女もフィルディナンドと同じように驚愕していた。



「この魔物ですか?……これは私が作った魔物ですよ?名前は決めてなかったのですが……そうですねぇ……グラゲシュペンスト(食べる化け物)とでも名付けましょうか?……いや、長いですね……グラゴストにしましょう……ふふふ」



 食べる化け物と呼ばれたその魔物は、近くにいた兵士を掴み上げると、そのまま丸呑みをしてしまった。そしてまた、近くにいた兵士を次々と丸呑みしていく……食べる化け物の名に恥じない程の大食感である。



「さて、私は帰りますが……あなた方はもう少し恐怖を味わってくださいね……それで少しは私の溜飲も下がります」

「ふざけおって!」

「では、失礼しますね」



 邪鬼はその場から消え、残ったのは暴れまくる三匹の魔物……そして、その魔物に追われる兵士達と傷つきその場から動けなくなってしまっているフィルディナンドたちだけであった。

 召喚された三匹の魔物が食べるのは人間だけではなかった、同じ魔物であるオーガやゴブリンたちもその腹の中に収めていく……彼らは食べることしか考えていないようであった。



「どうする!フィルディナンド殿」

「とにかく、全戦力であの魔物を倒すほかあるまい!」

「リーナ!フィルディナンド王の回復を!」



 コハクがリーナを見つけると、声を上げ呼びつける。

 その声を聴いたリーナは急いでフィルディナンド王の元へと駆け寄ると、治癒魔法をかけ始めた。



「見境なく暴れやがって……」



 傷ついた彼らは、兵士たちを貪るように食す魔物を見ていることしかできなかった。

 不幸中の幸いといえることは彼らは一人一人食べていくという事だろうか……魔物も食べていることもあって、兵士たちを食べつくすには何時間という時間を労するだろう……すぐさまラリアスの街にあの化け物が行くという事はない……だが、それでも自分たちの無力を嘆くことしかできないこの状況にフィルディナンドたちは奥歯を噛むほど悔しさを覚えるのであった。


魔族を退けるとこには成功をしたフィルディナンドたちであったが、脅威はまだ続く。

果たしてグラゴストを倒すことは出来るのだろうか?

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