第二幕 4章 53話 彼方からの声
遅くなりました。
52話になります。
「殿下!どこにいらっしゃるのです!」
シグレ達は連れ去られたドーガを探してローランシア城までやって来ていた。ここに来るまでの道もくまなく探してきたのだがドーガの姿は見つからずここまで来てしまった。
「もし、ここにいなかったらレンシアかアンダールシアに連れ去られたのかもしれないわね」
ディータの言う通り、この城の中にもドーガが捕らえられていなければそう言うことになるだろう。誰もがそう考えた時、クオンが何かを発見した。
「あれ……誰か倒れてる」
「殿下!?」
クオンの言葉を聞き即座に倒れている者にシグレが駆け寄った。
誰もが最悪の結果を予想し、シグレの後を追う。
だが、その予想は外れてくれた。
そこに倒れていたのはギャーゴである。白の傭兵団であり、命を持たない人形でもあった男だ。
「こいつ、何でこんなところで倒れているのかしら?」
「わからない、だけど誰かにやられたのは間違い無さそうだ」
ギャーゴの体を見てみると鋭い無数の何かに串刺しにされていた。恐らく、何者かの攻撃で反撃をする間もなく破壊されたのだろう。
そして、その傷跡にクオンとディータはある魔法を思い出す。
そう、以前カモメが『魔』と戦っていたときに相手が使った影の魔法だ。カモメはうまくかわしていたがもしまともに当たればこんな感じの傷跡がつくのではないだろうか?
その事にすぐ思い至ったのは『魔』との戦いがそれだけ熾烈だったことと、最近、他に影の魔法を使う者の話をカモメから聞いていたからである。
「根暗坊主、これって……」
「うん、不味いかも知れない……」
クオンとディータが二人で話しているとどういう事です?とメリッサが訪ねてくる。それに気づいたシグレもなんの話かと近くに寄ってきたためクオン達は自分達の考えを話し危険を知らせた。
「で、ですが、それなら尚更このまま殿下を放っておくわけにはいきません!早く見つけなければ!」
確かに、そうである。
ドーガが捕らえられている以上、ここで逃げだす訳にもいかないのだ!
「大丈夫です!殿下には女神の祝福という素晴らしいスキルがあるのですから!」
「女神の祝福?なんなの、それ?女神の加護とは違うのよね?」
「違います!ただ……その……効果は分からないのです」
効果がわからないとはどういう事なのかとシグレに問いただすディータにシグレは今までその効果が発揮されたことがないからと答えた。名前だけ聞けば凄そうなものなのだが……。
「効果が分からないのではアテにはできないわね」
「で、ですが……」
(…………めよ………だ)
「あら?」
「どうしたの、メリッサ?」
いきなり、不思議そうに声を上げたメリッサにディータが声をかける。だが、メリッサは声がと言うだけで辺りをキョロキョロと見回す、すると何かを見つけたのか「あっ」と声を上げた。
「あそこに階段があります!」
「本当だ……登り階段の裏に扉と地下に降りる為の階段
……怪しいね」
シグレにこの先を聞くがシグレもこんなものがあったことを知らなかったようだった。
クオンが先行し階段を降りていくと、少し降りた先に大きめの部屋が存在した。
部屋に入って先ず目に入ったのが、男の死体である。
クオンとディータはその姿を見てそれがドーガを連れ去っていった男であることにすぐに気づいた。
「こいつがここで死んでいるということは……」
やはり嫌な予感がする。それは、シグレもおなじなのだろう……辺りを必死に探し始めた。そして……
「殿下!……そんな……そんなあっ!殿下……嘘ですよね……殿下ぁ!」
見つけてしまった……冷たくなり動かなくなってしまったドーガの姿を。
「そんな……」
「くっ……」
メリッサが息をのみ、クオンは地面に拳を叩きつけた。
ディータはドーガの遺体に泣いてすがりつくシグレを見ながら悔しそうに目を伏せるのであった。
シグレの泣き声が木霊するなか、メリッサの耳に何かが届いた。それに気づいた瞬間、メリッサは意識を失いその場に倒れるのであった。
「メリッサ!?」
倒れたメリッサにディータが駆け寄り声をかけるが、いくら声をかけてもメリッサの目が開かない。まるで眠っているかのように静かな寝息をたてているのだった。
ドーガの遺体を見つけたシグレ達……そして、いきなり眠りについてしまったメリッサに何が起きたのか?