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出会い

僕は自分の名前を見つけることができなかった。今日は高校の入学式。新入生の僕は昇降口に張り出されたクラス発表の紙を見て立ち尽くしている。混乱していてうまく頭が働かない。何かの間違いだと思い直し、もう一度紙を見る。「あ、あった。」まるで入試の合格発表のような声をあげてしまい、周りの生徒からの目線が痛い。視線を紙に戻して自分の名前がまだちゃんとそこにあることを確認する。一年三組出席番号二番。僕はどのクラスでも自分の名前が一番上に書かれているのだと思っていた。しかし違った。十五年間生きてきて初めて自分の名前が名簿の一番上にないことに悔しさ、もっと言えば絶望さえも感じていた。特に取り柄というものがない僕にとって密かに優越感に浸れるものが出席番号だったのだ。舌で、乾いた唇を濡らす。そして自分の上に書いてある名前を見上げる。〈阿井 京香〉この子とは仲良くできそうにないなと考えながら、どこからか吹き抜ける風に身を縮めながら教室へと向かった。

ホームルーム開始三分前。誰もいなくなった昇降口に一人の女の子が息を切らして走ってくる。彼女は自分の名前を数秒で見つけると、教室へと走り抜けていく。

僕の目の前の席はホームルーム開始二分前だというのに空席だった。入学式に欠席するなんてどんな子なのだろう。と思っていると勢いよく教室の扉があき女子生徒が入ってくる。そして僕の目の前に座った。教卓にいた担任であろう先生は、彼女が入ってきたことを確認すると立ち上がり喋り始めた。しかし彼の頭の中は目の前の阿井京香のことを考えていた。ギリギリに入ってきた彼女はまだ少し息が乱れている。寝坊したのだろうか、いやそれにしては髪がきれいに整いすぎているな。などと考えていると、点呼が始まった。阿井京香の名前が呼ばれ彼女が返事をする。その声があまりにも綺麗で僕は驚く。綺麗というか耳に心地よい、永遠に聞いていたいようなそんな声だった。自分の名前が呼ばれていることに気が付き慌てて返事をしようとして変な声を出してしまった。まだ話したこともないクラスメートたちが微笑する。教師は淡々と名前を呼び続け、全員の名前を呼び終わると教師に廊下に並ぶように指示され、入学式へと向かった。


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