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Inferno  作者: はぐれイヌワシ
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孤独なふたり

その子は、父たる宣徳帝とも、母たる孫皇后とも違う髪の色をしていた。

太子たる祁鎮本人は何の疑念も持っていなかったが、宮中の者達は、皆『孫皇后は母ではない』と噂していた。


――后の地位が喉から手が出るほど欲しかったのはわかる。

――先の后は、あの女より先に子を産めなかったばっかりに廃后されたからな。

――さて、あの子を産んだ女は今頃何処にいるのやら。


祁鎮にとっては、母というべき女は孫皇后一人だった。

だのに、どうして皆はこの親子関係を否定しようというのだろう。

疑念は渦巻き、何時しか母『である筈の女』に甘える事が出来なくなっていた。


后とは別の、身分の低い女から産まれた弟・祁鈺が、何の屈託もなく『母』と戯れるのを見て、なんとなく渇いた。


祁鎮が弟と違う点は、もう一つあった。

将来、帝位を長男である祁鎮が引き継がねばならぬ日が来るので厳格な教育がなされた。

宦官達が、祁鎮を取り囲んだ。


その中に、男とも女ともつかぬ

―――宦官とはそういうものだが、その者は元々男として誕生した事すらも読み取れなかった―――

経書に通じた宦官・王振がいた。


王振は過去を多くは話そうとしなかったが、元々は科挙による立身を目指していたらしい。

それ故に知識は他の宦官の比ではなく、何時しか王振の事を彼は『先生』と呼ぶようになった。


ある晴れた日に、祁鎮は王振と共に紫禁城内を散策していた。

何時しか自らの住まうこの城の事を隈なく知り尽くしたくなった祁鎮は、王振の制止も聞かずに、その日の勉学や武芸の稽古の予定も全て取り消しさせて駆け回った。


日が暮れるころに、予想以上に広かった城に驚愕し、その半分も廻れぬままにクタクタに成りつつ東宮へ戻ろうとする祁鎮と、結局彼の我が儘に最後まで付き合い、施設の一つ一つを解説して廻った王振は、北東の地点で、一つの小屋を発見した。


「あっ、いけないわ!その小屋には近づいちゃ駄目よ!!」

―――王振が叫んだ時には既に遅く、祁鎮は小屋の格子の向こうの―――二つの眼球に目を合わせてしまっていた。


―――眼球の主は、王振に勝るとも劣らない容貌で、吃驚した様子でこちらをただ見据えていた。


四つの眼球は、しばし視線を動かせなかった。

慌てた王振が彼を引き戻さなければ、どれだけの時間見つめ合っただろうか。


「ねー先生、あの中にいたのはなーに?」

王振は、聞こえないふりを暫く続けていたが。

「ねー、答えてよ」

「…………」


「知っているんでしょ!そんな顔しているよ!」

「…………」


「答えてくれなきゃ、あの小屋の事父上に言うよ!」

それを聞いて顔色を変えた王振は、立ち止まって祁鎮の視点まで頭を下げた。


「絶対に他の誰にも言わないでね。言ってしまうと、私はもう貴方の側にはいられなくなるわ」

耳元に、口を近付け。


「いい?一度しか言わないわよ」


***


その夜からである。

祁鎮の耳元に、どこからともなく千字文を諳んじる者の声が聞こえるようになったのは。



あーあ、更に視点が増えちゃったよ!!

英宗は、明のこれまでの皇帝や皇室(含む弟)とは髪の色が違う設定です。

そして後には彼の髪色が嫡流を証明するようになります。

彼にとって『母』とは孫皇后一人ですが(嫡母と生母なんてわけがわからないよー状態)、孫皇后からすればいろいろと複雑な『我が子』だったでしょう。


宦官達は、謎皇子の秘密を永楽帝系統のネットワークで知っている設定です。


王振の過去について色々と調べたら、中文wikiで恐ろしいエピソードが見つかったので

中国語よく解らんのに思わず載せます(以下グロ注意?のため要スクロール)。























王振は宦官でありながら、当時の進士と同レベルの学識があった。

史書では『元々進士志望でありながら門が狭き故に絶望して自ら去勢して宦官となった』と書いてある。

しかし、当時の知識人達は宦官を蔑視し、科挙に受からないからといって宦官の道を選ぶ者はごく少数であった。

で、こんな噂話がある(ここから本番)。


王振は科挙を目指して学ぶ身でありながら博打にどっぷりはまっていた

大負けして借金を返せなくなった

借りた相手が彼の下半身を力任せに蹴った

きゅうしょにあたった! こうかはばつぐんだ!

おうしん の きゅうしょ は くさってしまった!

名医に頼ったけど結局取るしかなくてその家族や弟子から噂が広まり、学問仲間からの笑い者に

いたたまれなくなって学堂をリタイア、宦官の道へ。以後進士を嫌悪する様に


…いくら嫌われ者でも、ねぇ。




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