決めた事
真っ赤な絨毯の上を歩きながら、青年は夏の女王へ話し掛けました。
『あの、夏の女王…。どうして、僕の事を…。』
夏の女王は、振り返ってこう言いました。
『あなたが、冬の女王を出てこなくさせた原因だって知っているからよ…。春の女王に、聞いたの…。』
どうして、春の女王がそれを知っているのか青年は、びっくりしました。
『僕のせいで、ごめんなさい…。』
『許してあげるわ。あなたは、王様に嘘をつかずに、説明しようとしていたもの。』
僕の事を許して下さるなんて、夏の女王は何とお優しいんだろう…。
『着いたわ…。』
夏の女王が立ち止まったのは、可愛いお花で飾り付けされたドアの前でした。
『ここは…?』
『ここは、春の女王の部屋よ。この中に、春の女王と秋の女王がいるわ。あなたは、どうしてあんな事を冬の女王に言ったのか…説明をお願い。』
『…分かりました…。』
きっと、お二人共すごく怒っていらっしゃるんだろう…と青年は落ち込みました。
ドアを開いて入ると、落ち込んでいる春の女王と青年を見つめている秋の女王がいました。
『あの…僕はクリスです。冬の女王に、悲しい想いをさせて…ごめんなさい…。』
頭を下げて、謝りました。
『頭を上げて下さい。』
落ち着いた雰囲気の秋の女王が、そう言いました。
青年は、恐る恐る頭を上げて秋の女王を見ました。
『どうして、あんな事を言ったのか…説明して下さい…。春の女王は、たまたまその場面を見てしまったみたいなの…。冬の女王にお話があって、塔へ行ったら…あなたがいて、酷い事を言った…と。』
『…はい…。僕は、あんな事を言ってしまい、とても後悔しています…。冬の女王は、僕の…死んでしまった…姉に似ているんです…。冬の女王を見る度に、苦しくて…冬になると、凍えそうでした…。』
『…そうだったの…。あなたのお姉さんは、どうして…お亡くなりになったの…?』
秋の女王は、悲しそうな顔をしてそう聞いてきました。
『…5年前の冬、強盗が入って…姉は刺されて死んだんです…。その時僕は、冬の景色を見に行っていて…家にいなかったんです…。
本当は、冬の事…大好きなんです…。
だけど、今年は…姉の事を思い出して…苦しくて…あんな事を…。』
『…。』
『…あの犯人は、お城で処刑された殺人犯だわ…。』
夏の女王が思い出したように、言いました。
春の女王は、オレンジ色のくまを抱っこして下を向いています。
『…だからって、冬の女王に…あんな酷い事を…。さっき、塔へ行きましたが…駄目でした…。全部、僕のせいです…。』
『じゃあ、私が行くよ!!』
この場面に似合わない、元気な女の子の声が聞こえました。
『…?』
『あっ、ベア…。普通の人の前で話したら、駄目でしょ。』
ベア…?夏の女王は、一体、誰の事を言っているのでしょうか…。
『ごめんなさい…。春ちゃん、私に行かせて?』
春の女王を見ると、抱っこしているくまが話していたのでした。
『…えっ、くまが…しゃべってる…!?』
『…ごめんなさいね。この子は、春の女王の手作りで、命を吹き込んだ子みたいなの。』
秋の女王は、申し訳なさそうに謝りました。
『…い…え…。』
『あなた、私を塔へ連れて行って…?』
オレンジ色のくまが、真剣な目で青年にお願いをしてきました。
『…はい…。僕のせいで、巻き込んで…ごめんなさい…。』
『…あなたのせいじゃない…。』
ぽつりと呟かれた言葉は、春の女王によるものでした。
『…。』
『悪いのは、その殺人犯…。私、あなたから話を聞くまでは、あなたが悪いと思っていた…。だけど、あなた…可哀想…。』
春の女王の黄色の目が涙ぐむのを見ながら、青年は悲しくなりました。
『僕の事で泣かせてしまい…ごめんなさい。春の女王を、塔へ行けなくさせてしまって…。』
『もう一回行ってきたら…?今度は、ベアと。』
夏の女王がにっこりと笑って言いました。
『はい。行かせて頂きます。』
『私も、準備しなくちゃ。春ちゃん、待っててね。』
『うん…。』
春の女王も、さっきまでより元気が出てきたようでした。
青年は、冬の女王に話を聞いてもらえるように頑張る事を決めました。




