氷の壁
クリスは、一度家に帰り、塔へ行く準備を始めました。
『冬の女王…。』
手袋をはめながら、呟いたクリスの表情は、何故か悲しそうでした。
『早く、行こう…。』
どうして、あんな事を言ってしまったのか…。
本当は、冬の事が大好きなのに…!!
家を出て、塔まで走る青年は、一体何を想っているのでしょうか…。
吐く息は、白く冷たかったけど、立ち止まっている訳にはいきません。
『はぁ…着いた…。』
塔は、お城から少し離れた場所にあります。
その塔は、今では真っ白な雪が覆い被さっていました。
階段を昇りながら、謝ろう…と青年は、思っていました。
扉の前で、深呼吸をして扉を開けて、中へ入りました。
鍵はかかっておらず、簡単に開きました。
『…ゆ…雪の女王…?』
扉を開いた瞬間、冷気が青年を襲ってきました。
「…。」
雪の女王は、部屋の入口にいる青年を見ても、何とも思いません。
『雪の女王、ごめんなさい…。僕が、あんな事を言ったせいで…。』
クリスは、どこかを見ている女王へそう言いました。
そして、女王が座っているベッドまで近付こうとしましたが、行けませんでした。
『…?』
壁みたいなものが、雪の女王と青年の間を遮っていたのです。
だけど、その壁は雪の女王がつくりだした心の壁でした。
『…冷たい…。』
その壁は、まるで氷のように冷たかったのです。
「…私は、嫌われ者よね…。今まで、ごめんなさい…。」
雪の女王は、涙を流しながらクリスを見つめて言いました。
『違う…。僕が、悪いんだ…。』
「…もう、いいの…。帰って下さい…。」
雪の女王は、話を聞こうとしません。
クリスは、仕方なく帰る事にしたのでした。




