来たのはゴブリン
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「とりりゃっ!ちょいさっ」
僕が能力のネタばらしを受けて十数分後。僕は身体能力がどの程度向上したのか検証していた。結論から言わせてもらうと元世界での人間の限界くらいは超えた。今の僕ならボルトすら余裕綽々に陸上で勝てる。とゆうか全力で走ると、あまりの速さで曲がることができない。他の脚力自慢なら直径2mくらいの木を全力で蹴ると真っ二つに吹っ飛ぶとか、思いっきり地団駄を踏むとクレーターができたとか。流石に戦慄した。
脚力がこれほど上昇しているのならば全身の筋力もこのくらい伸びてるだろってことで先程から投石をしている。これは楽しい。抱えるくらいのサイズの岩が発泡スチロールかってくらい軽いし、投げたらかなりの飛距離が出る。ポンポンポンポン投げていると、ふと何かが近づいている音が聞こえた。
足音、葉の茂みが揺れる音、息遣いまで明瞭に聞こえる。そういえば、この厄介だと思っていた聴力だが集中すると案外様々な音を聞き分けられる。この短時間でこうなのだからもっと経てばさらに使いやすくなるだろう。…!来た。直ぐ側まで来ている。攻撃手段なら収納鞄にいくつか石を忍ばせているから、それでいいだろう。なにが来た…?
「ぎぎゃっ!グギャッ!」
それは一匹だった。大きさは小さく幼児くらいで体色は深緑。ギョロりと大きい目ん玉に巨大な鼻。分厚い唇から漏れる唸り声は嗄れた声。醜悪な顔つきのこれは人型。ここまで言えば分かるだろうがこいつはーー。
「ゴブリン来たあああああ!」
そう、ゴブリンだ。
大声を上げるとビクッとした。キメぇ!そして片手には棍棒を持ち、薄汚れた腰巻きを身に付けている。
そのゴブリンは棍棒を片手にこちらを警戒するようにじりじりと近寄ったり、離れたりを繰り返している。これが子犬だったりしたら可愛らしいのが、いかんせん人のような顔と気持ち悪い体色が相まって非常に、なんていうか、無理。あとめっちゃ臭い。近寄んな。
貧弱な装備や体躯を見る限り死に至るようケガは受けないと思うが、こちらもある程度は警戒するべきだろう。膠着した状況が続く。するとゴブリンが我慢しかねたらしくこちらへ突っ込んできた。だが。
「遅ッ!!!」
どうやら動体視力も上がったらしく僕の『マサイアイズ』(こう呼ぶことにした)は遅緩なゴブリンの動きを優々捉える。やはりこの世界でもこのゴブリンは貧弱な生物のようだ。警戒を解いた僕は近付いてくるゴブリンを、目を細め標的を定める。よし。僕は肩をしならせ冷静に石を投げる。
「やっ!!」
あ、外した。だが投げた石は凄まじいスピードでゴブリンの直ぐ側を一直線に飛んでいった。そして木々をいくつか吹き飛ばした。
「マジか?!」
自分でも予想以上の威力。ゴブリンもその投石に驚いたのか足を止め、後退する。こちらを窺いながら先程と同じ様な行動を始める。だが、僕の戦意は無くなりかけていた。少し考えれば分かる。これがあのゴブリンに当たれば間違いなく死ぬ。鳩に石を投げて遊ぶ感覚だった。だが間違いなくこの「遊び」でゴブリンは確実に命を落とす。可哀想とかそういった心持ちでは無く、生命の奪うことに対して忌避感がある。というか気持ちが悪い。明らかに人では無いとはいえ、人型の動物を簡単に殺すというのはーーー。
「ギャルルルルル…」
はっと顔を顔を上げる。風切り音。棍棒がこちらへ投げられていた。顔を狙ったそれを首を曲げて避ける。まだ、ゴブリンは僕を倒そうと目論んでいるようだ。そうだ、殺すことだけが自衛な訳じゃない。戦意を喪失させれば、追っ払えばいい。
そうだ、それがいい。追っ払うだけなら簡単だ。よし、ならこうしよう。
「おりゃっ!」
僕は地面を少し弱めに蹴った。クレーターが出来るほどの脚力だ。地を蹴れば少ない力でも粉砕する。粉砕した破片はゴブリンに吸い込まれるように飛んでいった。破片程度なら大夫なはずーーー
ーーーそして、ゴブリンは死んだ。