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僕らの春雨園  作者: 土車 甫
プロローグ
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プロローグ

 桜が舞い散る春。


 俺、北谷颯音きたやはやとはついに高校一年生になった。


 そして、それは俺が今までお世話になった児童養護施設、春雨園から卒園することを意味している。

 原則、春雨園は中学校を卒業して、高校に入るこの春に、出ていかなければいけないことになっている。


 しかし、まだ俺の住んでいるところは春雨園で、全く変わっていない。


 なぜなら――春雨園で働いているからだ。


 正規ではないため、むしろ手伝いと言ったほうがいい位置づけらしい。


 特例として、未成年が春雨園で働く場合、春雨園に住み込むことが許されている。もちろん、俺が行く桃洋とうよう学園の規則に「アルバイト禁止」はない。


現在、春雨園には幼稚園児は四人、小学生が十人、中学生が六人の合計ぴったり二十人。俺が入った小学三年の頃より二分の一になっている。これはいい事だ。


職員は正社員が三人。パートの人が三人、そこに俺が入って合計七人。


職員が少ない、という理由もあって俺は仕事ができることになったのだが、やはり人数不足ですごく忙しい。


朝、昼、夜。俺も中学から全力サポートをしている。平日は学校があるから昼は無理だが、その分他は頑張っている。


それが原因と言い切れないのだが、勉強する時間もなく、成績は落ちる一方だった。


しかし中学三年生になると、勉強に集中しろと言われて手伝いの一切をさせてもらえなくなった。まあそのおかげで、勉強時間が確保でき、市内で有名な進学校に合格できたのだが。


こんな俺には兄弟……というより、家族はいない。親戚はいるのだが、お金が支給されるだけで、あまり関わりを持っていない。


しかし、妹といえる存在の娘がいる。


その娘の名前は藤井梓ふじいあずさ。現在、中学三年生である。


俺と同じ時期にこの春雨園に入った娘で、ここにいるみんな同じ心境なのだが、お互い似たような境遇であったからか、すぐに打ち解け合い仲良くなれた。


春雨園の最高年である中学三年生の唯一の女子で、みんなのお姉さん的存在である。しかし、そんな凛々しい姿は、みんなの前だけで、俺と二人きりになった時はその凛々しさは欠片もなく、とっても甘えん坊になってしまう。


こんな楽しい春雨園の下で働き、高校生活を満喫する俺の日常が今、幕を開く――


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