第2話 キヅタ
下川原達は2年4組の教室前で台町ら――地元の同級生グループに遭遇した。
「げっ……」
逸果が不快感を露わにした。彼女に対し、同級生グループは楽しそうに笑っている。
「ちょうど話してたんだよぉ。あれからなんか分かったのぉ? 探偵さんっ」
「澄那ちゃん、じゃなくて……祖志継さん、ヤバすぎ〜」
「ドクなんちゃら食べたっつうの、どうなったか聞いてない? 聞いてるっしょ?」
「ほーらっ、慧都もなんか聞きなよ! 携帯いじってないでさぁ……祖志継さんの事、めっちゃ気にしてたでしょ?」
「そうだった。ねぇ、澄那さんって……あっ、みんな」
台町、同級生達が頬を赤らめた。1組のかっこいい男子が通り掛かる。
「ん? 台町、浦小路達と居んの珍しいな! 澄那の事か?」
「あっ! そ、そうなの。浦小路君達、澄那さんと仲いいから……なんか、聞いてないかなって」
「確かに。浦小路、どうなんだ?」
浦小路が1組の男子と台町、同級生達に、澄那が学校へ戻ってくる日を伝えた。
「そうか……ついでに、浦小路借りるぞ」
1組の男子が浦小路を連れ出した。彼らはとても仲が良く、2人でなにか喋り込む事が度々ある。
「あ〜あ、行っちゃったぁ」
「慧都羨ま〜」
「部長ぉ〜」
拗ねている同級生はお構いなしに、夏芽が下川原を呼んだ。
「話長いよ? 次、移動なのに……地元の事だし、しかたないかもしんないけどさ」
冬美が小言を並べる。
「悪い……逸果、理依、放課後な。うらっちも」
下川原は5校時の準備を急ぐ。
5校時が終わり、休み時間。下川原は学校裏サイトと、ある事件のインターネット記事を照らし合わせていた。
『祖志継澄那さんは2人を殺した祖志継某さんの親戚です。事件の後、近所で澄那さんや、澄那さんのご両親が祖志継某さんについて、よく取材されていました。親子揃って「私達は関係ありませんから」と話していたのを覚えています。こんなの、責任逃れじゃないですか? いじめの傍観者と同じ事です。祖志継澄那さんも、殺人犯です』
『――男女2人を殺害したとされる祖志継容疑者について、宮城県大崎市に住む親族は「私達は関係ありませんから」と話し、取材に応じませんでした』
(あれだな)
澄那の親族による殺人、その件について澄那と彼女の両親がマスコミから取材を迫られていた事、そして、その様子を嘲笑うように見ていた――詳細を書き記す事が出来る人物は、下川原に限らず、同じ中学校出身なら誰もが知っている。
(そうなると……こいつだって)
スマートフォンに学校裏サイトを表示させる。
『母から聞いた話です。今朝、澄那さんご一家がドクニンジンを食べて、病院に運ばれました。ご両親は深刻な病状ですが、澄那さんは大した事ないそうです。本当は、ご両親を殺すつもりだったのでは? なんといったって、あの清楚ぶった悪女は人殺しですから』
「下川原ぁーっ!!」
4組を仕切る女子に抱き付かれた。
「下川原の地元の子、超怖い! 1組に、浦小路と仲いい奴居んじゃん? あいつと同中ってだけで絡まれたんだけど! 私、更進祭で彼に告白するから横取りしないで〜、って!」
「怖っ! 怖えよ……そいづ誰や?」
下川原は女子に絡んだ人物の名前を拝聴した。
(……やっぱり。自分で動機バラしてやんの)
間もなくチャイムが鳴る。
放課後、伸葉探偵団は2年4組の教室に顔を揃えた。浦小路には逸果が連絡してくれていた。
「も、もう、分かってんだよなぁ?」
逸果の気が逸る。
「分がっでる……ん? 待っで」
下川原は廊下を覗くと、同級生グループが耳を立てていた。
「見えでっぞ」
「ごっ、ごめ〜ん!」
「うちら疑ってないよね!? いくらなんでも、あんなの書かないかんね? 普通に犯罪だし」
「あんなお堅いの書ける頭ないし〜」
「そっ、そういう事だからっ! ……だからやめようって言ったじゃん! 慧都来ないし、行こっ!!」
同級生グループがずらかった。
「逃げねぐでもいいのに……」
下川原はぼやいた。
「逃がした!? って事は、あいつらじゃねぇの? やっぱ――」
台町、と逸果、下川原の声が重なった。