蒐集
一日一筆複数連題です!
お題「未来へ続く戸棚」「神代DNA」「絵の具」「予測還元システム」「消去と削除」
望んだ物が手に入るのが人生として恵まれているのなら今の彼の生涯はとても恵まれているが恵まれている大前提が本人の満足とするならば彼の生涯に今現在「恵み」なんて二文字は似合わない。貪欲と言えば聞こえはいいが彼の本性は我儘を極めた傲慢そのもので自らの力を加えた自らの力以外の全てをもって彼の人生は豊かになり続けている。
そんな彼の豊かであれど満足はしない傲慢な人生はいつの間には蒐集という形に代わり彼の自宅を潤わせた。未来へ続く戸棚「クローズイット」。この戸棚は「予測還元システム」と呼ばれる、未来に起こるいくらかの事象を収束し無きものにすることができる。そして未来へ続く戸棚とは言ったもののこれには裏技があり、「今現在も過去の未来」と定義づければ今起こっている事象も収束できないわけじゃない。
そんな「クローズイット」の隣、大小見境なく置かれてる影響で見事に大小の順番で置かれた小さなもの。
赤とも青とも緑とも黄色とも茶色とも白とも黒とも言い難い奇妙な色を零した絵の具「神代DNA」。この絵の具は「神の唾液」と称され、一滴口に含んだだけで人智を超えると言われている。その怪しき逸話からマニアックな蒐集家は喉から手を出して欲していたが喉から伸びた手が一番長く素早かった彼がこの「神代DNA」をショーケースに並べることとなった。
そんな蒐集家、彼の人生で唯一の誤り。それは、蒐集物を甘く見たことだった。
風の強いある日彼はいつも通りショーケースの中身を掃除しながら同時に世界に広がるいわく付きを調べていた。丁寧に拭きながら画面に広がる嘘や真を見分け気になったら即買って金を動かす。そうやって今まで生きてきたことが癖になり些細な誤算を生んでしまう。
この日買ったのは存在と記録を司るレコード「消去と削除」。いささか機械的な命名であるのはこの蒐集物が最近見つかったものだということを表せしている。そしてそんな近いうちに掘り出されたものを中心に(しかしあくまで見境なく)彼は蒐集していた。
後日彼の邸宅に一枚のレコードが届く。彼はそれが「消去と削除」だと知っていたからショーケースの空き番号のスペースにこれを置き、「消去と削除」の名前を書き入れた。そして彼の習慣として、一度はその蒐集物の真価を試すというものがある。
「クローズイット」でこの一日で発生する事件を収束させた。多くの人間の生命が守られた。
「神代DNA」をラットに含飲させた。低いうめき声と共にラットは言語を話すようになった。
では、「消去と削除」は?
レコードに置き、回すことで存在もしくは記録を消すという一品。多くは使用者の望んだ物を消すらしいがある一定の条件が揃うと使用者の融通が利かなくなるらしい。あまりにも不確定な情報。しかし蒐集物の実行が一つのルーティンとなっている彼にとっては恐怖はあれど抵抗はなかった。それに、以前の持ち主から成功した発動方法は教えられている。鼓動を速めながら彼はショーケースから「消去と削除」を取り出し、レコードに設置した。
蒐集物を甘く見るというのはどういうことか。それは蒐集物の使用を軽率に行うことではない。蒐集物の運命の流転に、無情にも引き込まれることである。
偶然は時として悪魔の顔を有する。そしてそんな悪魔の顔は、彼に首を擡げた。
「譲り受け、同じ方法で使用すること」が、「消去と削除」の、一定の条件。
彼はそれを知らず今。レコードを回し瞬間刹那彼の視界が歪んで回って目の前に並んだそうそうたる蒐集物たちが音もなく消えたのも束の間景色すらも段々といや彼にとっては段々に見えていただけで実際は零コンマ一秒にも満たないスピードで雲が加速し擦り切れて地面は成長と老朽を一気に果たし空は空気に貫かれ破れて地獄絵図なんて言えるような状況じゃないほど世界は崩壊し残っているのは「消去と削除」とレコードと彼だけかと思いきや彼の眼尻に存在した「消去と削除」とレコードすらも消えてしまって彼の思考は当たり前と言えば当たり前なほど停止したがこの時の隙間で自分が一定の条件に抵触したぐらいのことは理解した彼は藁にもすがる思いでたった今まで存在していた「クローズイット」を用いこの事象を収束させ「消去と削除」の使用を禁じるかそれが駄目ならここで「神代DNA」を全て飲み神となって時を司ろうと考えたが時すでに遅し。
手を伸ばした先には「クローズイット」も「神代DNA」もなく、彼はただただ手を伸ばそうと考え始めるところで、自身の存在すら消去されてしまった。
思考を失い、自我を失い、すでに存在を消去されてしまった彼の心の内は、不思議と満足で溢れていた。
如何でしたか?
最近お題を一気に放出気味ですが、それは一日一筆複数連題の締めくくりを見始めているからです。
不具合とかはありませんでしたし順風満帆な企画なのですがいかんせんこれからの生活で継続していけるかどうか。己に課したものなので最後までやりつくして終わろうと思ってます。大学に入ってからはほかの企画をやるだとか気ままに書くだとかで、今とは違う楽しみを見つけていこうかと思います。




