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(連載)乙女だけどBLゲームの世界に転生した。  作者: トイレの芳香剤は、金木犀の香りに限る。
高宮まどかの場合。
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7 体育倉庫でアッー!

『体育倉庫でアッー!』


「センパイ・・・」

「マドカ君・・・」

 体育倉庫で二人きり。他の生徒たちはもう下校してしまっている。

 体育倉庫に特有の、ボールのゴムや、埃の匂い。

 センパイの顔が近づいてくる。

 センパイの手が太ももに触れる。

 センパイの脚がーー


 ガラリ。


「・・・よっしゃ やっと帰れるーー!! ・・・なにやってんのお前ら?」

 葉山ゆうきである。熱血バスケット少年。一年生エースである。片手にボールである。マドカは、シグザウエルP220で即座にそれを射抜いた。

 ぱぁん! ボールが爆ぜる。突如爆発したバスケットボールを、不審げに眺める葉山。


「死ね! 死をもって償え!!」

 もう片手に、ショーティ・フォーティ(拳銃の一種)を取り出し、口元にくわえた手榴弾のピンを抜くマドカ。燃える瞳は葉山をまっすぐににらみ、今にも蒸発させそうだ。


「ちょ、高宮! 何怒ってんだよ!! 生理か? あの日なのかッッ??」

「セーリごときでここまでキレる女子がいるかァアアアアッ!!!」


 不運な少年である。葉山ゆうきは、日頃鍛えた脚力でもって全力で逃走した。

 50メートルをわずか3秒で駆け抜ける。世界新だ。

 体育館の入り口ドアを慌てて閉める。高宮マドカが眼前に迫ってくる。ホラーだ。今の彼女は貞子より怖い。

 廊下を駆け抜ける葉山。

 アサルトライフルを乱射するマドカ。

 はじけ飛ぶ窓ガラス。--儚い乙女ごころのように。

 センパイとあんな雰囲気になるまで、何日も何日も待った。ようやく既成事実を作るチャンスだった。


「センパイ、あたし、妊娠しちゃったの。セキニンとって。って迫れば男なんて・・・ッ」

 叫ぶマドカ。甘い気もするがどうなんだろう。


「助けて白野ーーっ!!!」

 500メートルほど離れた敷地に建つコンクリート4階建てに飛び込む葉山。


「高宮がご乱心なされたぞ!!」

「ほんとだ! 今度は誰にふられたんだ??」

「数学の狩野? 国文の鈴村? 寮長の闇野?」


 ドアを開け顔を出し、教師の名前を次々に挙げる、無責任な寮生たち。ーーいずれも美男。高宮マドカの銃乱射事件は、もはやこの学校の名物・・・らしい。誰がもみ消しているのか想像すると、その心労に胸がはりさけそうになる。ガンバレ、高宮の伯父。

 対空砲が火を吹き、世界は終わりを告げる。その火は夕暮れよりもなお赤く、葉山ゆうきを赤々と照らし出した。


「--さあ、追い詰めたぞ、葉山。もう逃げ場はない・・・」

「たすけて白野~」

 しがみつく、自分より背の高い葉山を、かばうように立つ白野陣。

「・・・マドカちゃん」


「さあ、シロ。葉山を引き渡せ。そいつはわたしに対しテロ行為を働いた憎むべき悪漢なのだ。大量破壊兵器も使用した。あまつさえ、核兵器を保有し、国民を情報操作によって騙し、国外からの支援で私服を肥やしている。--そのような暴挙を許せるほど、わたしは出来た人間ではない」

「・・・ていうかあのさ、ボク、早く明日の宿題終わらせたいんだよね。葉山、そこどいてくれない?」


「ヒデェ!!? 白野ぉ。ともだちだろぉ。海の見える教会で葬式を挙げようって誓い合った仲だろぉ?」

「そんな事実はないよ。マドカちゃんも。早く片付けないと、夕飯が食べれなくなっちゃうよ?」


「--!!!」

 マドカの目に、理性の光が戻ってきた。

「・・・ユウ、ゴハン・・・」

「そう。夕御飯だ。今夜は、特製コロッケ・カレーだよ」


「コロッケ・カレー・・・。ワタシ、ハ、今までなにを・・・」

 突如、周囲の惨状に気付くマドカ。

「葉山! その怪我はっ!? 誰にやられたんだ!?」

(お前だよ。)


 その言葉を、葉山はぐっとのみこんだ。--友達だから。そう。友達だからーー。このくらい、笑って許せるんだ。

「--いいんだ。高宮。もう、何もかも終わったんだーーだから、英語の辞書、貸してくれ。もう、ラクガキしないって約束する。だから。--」


「葉山! 死ぬな葉山ーー!!」

 マドカは親友の手を握り締めた。後から後から、涙があふれてくる。思い出すのは、楽しかった思い出ばかりーー。

 葉山ーー。

「葉山ァアアアアア!!!」



 その日の夕飯は、めざし一匹だったと云う。

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