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(連載)乙女だけどBLゲームの世界に転生した。  作者: トイレの芳香剤は、金木犀の香りに限る。
高宮まどかの場合。
3/11

3 ルームメイトでアッー!

 ーー夜。シロが何度も寝返りを打つ。ーーゆえに、五歩離れた位置の高宮マドカは、眠れない。

 マドカは、ごそごそと身を起こす。


「ーーシロ? 眠れないのか?」

「う……ううっ」


 すごい寝汗だ。思わず、シロの額に手を伸ばすマドカ。熱はなさそうだがーー

 シロがうめく。


「ーーと、となりの部屋の二年生ーー」

「?」


 シロの特殊能力について、今のマドカには理解がない。

「ーーさっきから、ヤッてる……」


 ばばっ!! 慌てて、壁の方向を凝視するマドカ。ーー何もない。ギシギシともアンアンとも、ハァハァすら聞こえない。


「ーー声を殺して、それでなおかつ燃えるゥ、とか思いながら……ッ」

「シロー! しっかりしろシロっ! 

 隣の部屋のアツアツ・カップルはわたしが殲滅してくるッ!! だから安らかに眠れ!!」


 銃ーーシグザウエルP220を手に取りフランス国歌『ラ・マルセイエーズ』を鼻歌で歌う高宮マドカ。誰か止めろ。彼女は本気だ。


「……ボ、ボクのことは気にしないでッ、ゼェゼェ、マドカちゃんはッ、明日の試験に備えて、やすんで……」

「馬鹿を言うな!! 戦友を見殺しにできるものかっ! ここにカール・グスタフ無反動砲がなぜかあるんだ! 徹底抗戦だ! な、シロ! 撤退など、ありえん!」


 人の脚ほどもある巨大砲身を肩口でかまえるマドカ。


「ーーあ、キミの声がうるさいらしい……、すこし、向こうがしずかになった……」


 スゥ、と寝入るシロ。一日中この調子なので、彼に寮生活は辛かろう。



 クラスメイトである。高宮マドカは、窓側から三列目、前から四番目という、微妙な位置にいるのだが、授業中、こっそりと周囲を窺う。ーー美男揃いである。ひそかに、オトメ情報サイトに載るだけのことはある。教師も美男。理事長もナイスミドル。クラスメイトも美形ばかり。最初の友人にしてルーム・メイトのシロですら、童顔ではあるものの、整った顔立ちをしている。つい、前の席の後ろアタマなど、凝視してみる。シャンプーのいい香りがする。ーーふいに湧く、衝動。


 もふもふしたい。


 このアタマをわしづかんで、思う存分わしわし、したい。ヘッド・ロックをキめつつ、わしわししたい。したい。したい。したい。ーー 一度そう思うと、もうダメだ。もふもふ。わしわし。もふもふ。わしわし。


 ガタンッ!!


 急に前の席のアタマがーーもとい、白野陣が立ち上がった。

 しんなりと、水をしぼられたキュウリみたいになりつつ、片手を挙げる。


「……せ、先生。気分が悪いので保健室に、ウッ」

 唐突に、口元を抑えてしゃがみ込むシロ。


「どうした白野~。無理はするな」

 四角フレームのメガネをかけた数学教師イケメンが、無駄に白い歯を光らせながら、シロに肩を貸して支える。


「ヒッ!! だ、だいじょうぶ……!! せんせい、ボクは大丈夫ですから、だからお願いだから触らないでッ!!」

 様子がおかしい。マドカは席を立った。


「先生。白野くんはわたしが保健室に連れて行きます」

「……あ、ああ。頼んだよ。しっかりするんだ、白野」

「……ハイ。」


 蒼白である。冷や汗をだらだらと流している。マドカに支えられながら廊下に出、扉を締め、ようやく少し、ホッとした顔になる。そして、ふたりで廊下を歩き、どのクラスの教室からも離れた頃。

 ようやく、シロの顔色には赤味がさしてきた。

「もう大丈夫」


 シロの体重を支えるのに必死だったマドカは、肩にかけていた腕を外されてようやく、シロの回復に気がついた。


「……本当かっ!? 即効性の毒物でも摂取したみたいだったぞ!?」

 迫るマドカを、まぁまぁ、と手で制し、シロは中庭を親指で示す。


「とりあえず、あっちに行こう。保健室は今、どこかのカップルが使っているよ」

(カップルーー)


 その言葉を改めて吟味し、マドカは顔を赤くする。そしてシロのツッコミ。


「保健の先生も男だよ」

「は? はい??」


 きょとん、と目をまたたくマドカ15歳。説明しなければ判らないらしい、とシロは息を吐く。


「つまりね、男と、男がーー」

「きすをしているということか。」


 マドカの言葉に、コクリと頷く、白野陣。

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