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(連載)乙女だけどBLゲームの世界に転生した。  作者: トイレの芳香剤は、金木犀の香りに限る。
高宮まどかの場合。
11/11

11 包囲されてアッー! 後編

キィン!!


日本刀と、ガラケーが、鋭い音を立ててぶつかり合う。

高宮・兄ーー名を夢路というーーは、ハチ公前を疾走していた。

「高宮夢路ーー参るッ!」

神速ーー踏み込みと同時に抜刀し、再び鞘に収める。居合いである。

ポニーテール(?)が、動きをおってなびいた。

ーーそこには、ありとあらゆる美少女がいた。

金髪。銀髪。黒髪。茶髪。

ショートカット、セミロング、ツインテール、三つ編み。

ツンデレ、ヤンデレ、デレデレ、ロリっ子。ネコ耳、ウサ耳、オオカミ耳。エルフ耳。

つり目、タレ目、眼帯、包帯。

ありとあらゆる美少女が、だ。

全員、アサルトライフルと防弾ジャケットで武装していた。


もう、夜である。

ネオンの明かりに照らされた美少女たちが、立て続けに発砲する。あろうことか、仕事帰りのサラリーマンを盾にしている。

ーー心なしか、盾にされている市民は、幸福そうではあるが、きっと、気のせいに違いない。


対し、弓道部の弓と、剣道部の竹刀で武装したフォモたちが特攻する。

「BL万歳ッ!!」

玉砕していく。

「ーークッ、武装が違いすぎる」

その先頭に立ちながら、マドカはホゾを噛んだ。ボーイズラブーー男と男が愛し合うジャンル。それは。美少女にはかなわないのか。

銃弾は、容赦なくフォモたちを粉砕していくーー水晶の夜は、始まったばかりである。

「撤退! 撤退だッ」

よく訓練された動きで、フォモたちが次々に退却していく。それを見届け、マドカはーー


「ーークッ」

膝をついた。

「マドカちゃん!!」

シロが駆け寄る。

「ーーかまわん。行け、シロ。わたしひとりなら、どうとでもなる」

「そんな! ーー君を置いてなんか行けない。ーー言ったでしょ? ボクは、君のことがーー」

刹那。シロの胸を、衝撃が貫いた。

「……ぐ、あっ」

「シロ!!」

マドカは、ぐらりと倒れるその身体を、ほとんど反射的に支えた。

「ーーおいおい。あっけねぇなあ。フォモってのは、この程度の奴らばっかりなのか」

マドカの放ったシグザウエルP220の一撃が、男を貫く。ーーが。

彼は、平気そうに立っている。マドカは、驚きに目を見張る。

「ーーバカな。」

男は笑う。

「ーー愛する者がいれば、勇気100倍。地獄からだって、戻ってこれるのさーー」

「くっ!」

炸裂音。さらに、弾丸が彼を射抜いた。すこし揺らいだだけで、彼は、マドカを見据える。

「効かねぇなあ」


「マドカちゃん、コイツーー」

シロが、辛うじて、声を出す。

が。

「う……!」

男に蹴られ、地面に落ちた。

「シロっ!」

男が、拳銃をマドカの額に突きつけた。

「サヨナラだ。おとこ女」

「ーー!」


響いた銃声は、ふたつ。

「甘い。ーー死ね」

いつの間に背後に回ったのかーー彼の頭蓋骨を、鉛弾が貫いた。



ーーが。

ボコボコと、音がする。傷が再生していく。

「ーーこのッ!!」

さらに銃弾を打ち込むが、大して効いている様子はない。

「……ククク。ハハハハハ!! 俺も昔はフォモだったーーだがな。これが、俺がフォモであることと引き換えに手に入れたチカラだッ」

彼の傷口が完全に塞がった。誰かがこちらに駆けてくる。ーー高宮夢路だ。

「マドカッ! 引け! そいつはーー」

高宮・兄の剣撃が、男を襲う。

マドカは、シロを担いで駆け出した。

ーーここは、引く。だがーー


貴様を許しはしない。

そう、心に誓って。


   ◆


「何なのだ、アイツは!」

悔しそうに、マドカがうめく。

「両刀(バイ)だ」

シズルが告げる。

「バイ、だと? 男でも女でも構わんという節操の無い連中のことか?」

「そうだ。奴らは悪魔に魂を売ったんだーー自分さえ気持ちよければ、相手が男でも女でもいい、とな」

「ーーそれでか。あの再生能力ーー並みの人間ではない」

マドカ、シロ、シズルは沈黙した。正直、勝てる気がしない。

「ーーわたしは、誓ったのだ。高校三年間を、精一杯楽しむ、クラスメイトが、フォモでも構わない。ーーそれなのに」

ユメジの手が、マドカの肩にふれた。

「ーー気に病むな。お前はよくやった。ここで逃げても、誰も責めはしないさ。普通の高校に通って、フォモのことなんか忘れて、普通の女子高生になればいい。」

ぱん! と乾いた音がした。

シズルが、驚きに目を開き、自分の頬を押さえた。

「舐めるな。わたしは、諦めない。フォモたちは、大切なクラスメイトなんだ。」

「マドカーー」

ふ、とユメジはーー諦めたように微笑んだ。

「両刀(バイ)にもひとつだけ弱点がある。ハバネロだ」

「ハバネロ? あの辛い菓子のことか?」

「ーーああ。厳密にはトウガラシの一種だ。ハバネロをかけると、やつらは悶え苦しむというーー」



「うおおおおおお!!!」

鬨の声を挙げながら突進するフォモたち。迎え撃つは、美少女たち。

彼女たちの放つ弾丸が、フォモたちを容赦なく粉砕する。血が飛び散り、千切れた手足が宙を舞う。

「美少女とて無敵ではない! イケメンには弱いッ! 通行人をーーイケメンを盾にしろ!」

指揮するマドカ。

ーーというか、フォモたちそのものがイケメンだが、美少女たちは手加減しないーーフォモでは、意味がないからだ。自分に振り向かないイケメンなど、絵に描いたモチ。撃破するのみである。

そこへーー

「来たッ、『奴』だ!」

この間の男ーースキンヘッドにサングラス、黒いスーツという出で立ちであるがーーが、現れた。

マドカは塹壕から飛び出し、走った。葉山、シロ、高宮夢路がそれに続く。

「覚悟ッ!!」

マドカの放った赤い液体が、男の鼻に入った。咳き込む男。そこを見逃すマドカではない。水鉄砲に詰めたハバネロ・ジュースを、男の口腔に流し込む。

「……が、があ……っ!」

鼻と口を押さえて地面をのた打ち回り悶絶するスキンヘッド。

「兄上! 今だ!」

ユメジの刀が一閃する。

ーー首が、落ちた。


ーーが。

首のない男は、マドカに手を伸ばし、宙に吊り上げた。

「しま、……ッ」

「高宮!」「マドカちゃん!!」

葉山とシロの叫びが、重なる。


男はさらに、手にしていたライフルを撃つ。その先にいたのはーー

「あに、うえーー」

「シズルさんっ!」

マドカは見た。兄が、ゆっくりと体勢を崩すのを。

(兄上っっ!!)

だがーー。

そのまま一歩踏み込み、刀を、抜く。

ヒュウ、と風が鳴いた。

「ーーバカ、なっ! まさか、貴様もーー」

男のつぶやきに、高宮・兄は答えない。ただ、彼の傷口は、皆の見ている前でーーどんどん治っていった。



「ーーそう。俺はバイだーー」

つぶやく高宮夢路。

校門で、葉山とシロ、マドカに見送られながら、最後に言葉を交わす。

「兄上ーー。」

「葉山君、白野君。マドカをーー頼んだよ。君たちみたいな友だちがいれば、俺も安心できる」

「ユメジ」「高宮さんーー」

葉山とシロが、名残惜しそうに、ユメジを見つめる。

「ーー俺みたいには、なるなよ。それじゃーー」

高宮・兄は、ママチャリに颯爽とまたがると、キコキコと漕ぎ始めた。その背中が、どんどん小さくなっていく。三人はその後ろ姿を、いつまでもいつまでも見送っていたーー



『包囲されてアッー!』ーー完。

Thanks for your Read !


 ここまで読んで下さって、誠にありがとうございます!


 中途半端ではありますが、これにてひとまず、完結扱いとさせて頂きます。

 理由といたしましては、ひとえにネタ切れでございます。


 どうもありがとうございました!

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