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日記の後始末  作者: huya
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運動ⅬV1

大学に入って初めての春休み。

部屋で見つけた昔の日記に書かれた失敗談。

それを克服するために奮闘する城先 ゆかりと助っ人の木之下 亜黄あき

二人の小さな挑戦にはどんな意味を纏うのか。

それを見つけに行く物語です。

見つけた。いや、見つけてしまったの方が正しいか。

私は目の前にあるノートを手に取りそう思った。


私は城先 縁。大学1年生、だと言いたいが今は大学生になって初めての春休みだ。自分の所在が分からずただひたすら休みを消費していた。

大学1年の初めは緊張と期待があったものの蓋を開けると授業にやる気のない周りに流されるがまま単位を取って、サークルも入らずバイトに打ち込んでいた。

なんとなく。この言葉が私の大学1年の生活を端的に表現している。それ以上でもそれ以下でもないのだ。

そんな調子の私は早くも2か月ある春休みの8分の1を惰性で過ごしていた。

さすがの私でもこの状況はよくないと思い、頑張ろうとした結果が部屋の掃除である。

あいにくアウトドアな趣味を持っておらず、奮起したものの外出もままならない引きこもりぶりだがなんとか行動できた。

こんな過去の話はどうでもいい。それよりもこの目の前の物体が今、私を葛藤させる。

これはおそらく日記だ。小学生の頃に書き留めようと思い3年ほど記した日記だ。

結局、見返すことがなくなり、飽きてページを更新しなかった。故に忘れていた。

これは私の失敗談が書かれている。昔は克服しようと一部見返しては達成してきた。

子どもの私は律儀に初めから挑戦していき、克服したものにはチェックを入れてくれている。

ここだ。ここで飽きたんだ。いや、飽きたといえば少し格好よく聞こえるかもだが、克服を諦めただけだ。


〇月×日 体育の授業で一人で逆上がりができなかった。


まあ、当時小学生の私が書いたのだ。この程度の悩みだろう。

私は日記を閉じようとしたが、少し思案する。

どうせ目的もない大学生活。惰性で過ごしても秒で社会人だ。

それなら惰性は惰性でもできることが増えるような生活をするべきでは?

なんとなくそう思った。


とりあえず、あの頃の続きからと思い、近くの公園へ向かった。しかし、昼過ぎに起きて掃除していたためかもうすでに小学生のたまり場だ。

こんな中一人で逆上がりの練習とか何時代の拷問だ?

私は日を改めるべくその日は帰った。

帰ってから公園でできることをリストアップした。

ー逆上がり

ーリフティング10回

ーシャトルラン30回

今見るとしょぼいな。何ができていたんだ私。

まあいい、明日予定の空いているを友人を巻き込んで進めていこう。

今日は最近にしては珍しい日を跨がない就寝となった。


次の日、8時にアラームが鳴り、目を覚ました。覚ましただけだ。

9時にベットから体を起こして雑に準備を済ませて家を出た。


「ごめん、ギリセーフ?」5分ほど遅れた私は友人の木之下に言った。

木之下は私の中学からの友人だ。

本名は木之下 亜黄。

大学ではテニスサークルに所属しており、私より随分運動ができる。

結構何でも話せる上に、本人がフッ軽ってやつだ。

今回の挑戦にはうってつけの人間だと思う。

「時計見せようか?これは余裕でアウトでしょ。」

そして生真面目。

「家が遅延しまして、、」

見苦しい言い訳をした後、私は今日の目標を共有した。


「目標って、今日はそれだけ?」運動のできる木之下は自信ありげに言った。

「小学生の時の悩みだし。足りなければ後で足していけばいいよ。」かくいう私も余裕だと思っている。

「余裕こいてると痛い目みちゃうよ。」木之下は私を見くびっているみたいだ。

いくら運動音痴でも何年生きてきたと思っている。

「年齢が当時のダブルスコアだ。今の私の方が二倍すごいはず。」と言い返した。

「二倍でいいのか、、」

木之下が何か言った気もするが気にせずまずは鉄棒に向かった。

「とりあえずやってみてよ。失敗したらアドバイスするから。」

木之下は私に失敗前提で話してきた。

先程まで余裕綽々だった私もいざ鉄棒の前に立つと握り方や立ち位置が掴めない。

1分ほどだが悩んでいると木之下が

「先お手本するよ。」とささっと逆上がりをしてみせた。

「なかなかやるな。」私も今更ながら平然を装う。

「何がなかなかよ。あんたがやらんだけでしょ。」

そうこうしてるまに私のターンが回ってきた。

「ええいままよ。」私は気合を入れて鉄棒に飛び掛かった。

足が地面と平行になったところで鉄棒が空に浮かんだ。正確には私が重力に撃ち落されたのだ。

「なかなかやるな。」まだ強がってみた。

「蹴る方向がおかしい。上方向に蹴るイメージ。」木之下は一度見ただけで的確にアドバイスをくれた。

「私が習った物理では円運動はこんな動き方をするぞ。」一応の反論だ。たいして覚えてもいないことを口にしてみた。

「そしたら肘に負担かかるでしょ。向心力に成り得る運動能力を持ってから言ってよ。」

言い返された。これ以上は理科が得意な彼女のペースだ。

逃げるように鉄棒に向かう。

指示通りに体を動かすといつの間にか地面に足が着いていた。

「いけちゃった。」

あまりにぱっとできたので驚くと木之下は

「優秀な先生がいてよかったね。お給料もらえるレベルでしょ。」と得意げだ。

まあいいこの調子ならすぐ終わりそうだ。


次はリフティングだ。

中学の体育以降はまったくといっていいほどサッカーをしていない。しかし、今の私は無敵だ。

が、一応、アドバイザーのレベルも知っておこう。

「木之下はリフティングできるの?」

「あんまやったことはないけど、10回ならいけるはず。」

「とりあえずやってみなよ」と木之下は言い、

お手本なしで私のターンになってしまった。

運動を普段していない仲間には是非ともこの感覚を共有したい。

「ボール上げて蹴るんだよね?」

目標と相対した瞬間に己の無力さを感じるこの感覚を。

「一応地面においてからでもできるけど、少し難易度上がるんじゃない?」

と木之下が答えたが、今の私にそんな高等テクはいらない。

私はすぐに集中してボールをおもむろに上げた。

身長を優に超えたボールは私の足にめがけて飛び込んでくる。

1回、2回と奇跡的ともいえる挙動をして私のテリトリーを超えて飛んで行った。

「「まじか」」同時に声を出した。

私たちは難易度の高さに絶望した。

「お手本をお願いします。」私はコーチに縋るしかなかった。

「コツを掴めば何回もできるはずだから、、」木之下はそう言って20回ほど続けた。

「力みすぎだと思うから、まずは頭ぐらいの高さを目安に飛ばせるようにしよう。」

私は言われるがままに練習した。

太陽が活気づいたのか、それとも私が動いているからなのか汗が少し滲む。

少し休憩と称し、上着を脱いで適当なベンチに腰を掛けた。

「高さはともかく向きが難しい。あれってランダム?運ゲー?」

鉄棒がうまくいった分こちらの挑戦に対して少し投げやりな気持ちになってしまった。

これが当時の私が諦めた気持ちか。そう思ったのも束の間、

「いったん次の項目消化しない?走りだったら成長も加味して達成しやすいかも。」木之下が提案してくれた。

「そうだね。」

人を誘っておいてよかった。一人ならやめているところだ。

「ただ、シャトルランってむずかしいよね。どんな感じにする?」

そんなに広くもない公園な上にそのグラウンドを大学生二人が昼間から独占するのもなんだか忍びない。

「いっそ体育館とか借りてみんなでシャトルランしない?」木之下は妙案だと言わんばかりだ。

だが、シャトルランだぞ。あの。

「それで食いつく物好きはいるのか?ただ、イベントの1部分として開催するのはありだね。」

「しかし、いきなり二つはスキップか。幸先不安だな。」あまり芳しくないなと思った私はネガティブな調子で言った。

「いいじゃん。練習期間ができたと思えば。ポジティブも大事だよ?」木之下はおそらくこのシャトルラン30回も余裕なのだろう。それが声色からわかる。

しかし、木之下の言うことはもっともだ。

練習をする必要があると思った。

「もう少しリフティング練習してからお昼食べに行こう。今日はそれで撤退だ。」

いつの間にか正午になっていた。とりあえず今日は今までの私の生活とは一線を画しているだろう。十分だ。

「あと、走り込みの練習も考えようね。」木之下は当たり前のように言った。

「え、」

シャトルランはいけそうと木之下が言うものだから時が来るのを待とうと思ったがそれが許されなさそうだ。

「試しにさ公園内を3分ぐらい走ってみようよ。」

しかも今から練習するみたいだ。

手元のスマホで調べると、だいたい30回にかかる時間は2分程度だそうだ。

余裕の目標越えじゃないか?そう思って一縷の望みを信じて時間短縮を図った。

「30回ってだいたい2分ぐらいらしいよ。3分長くない?」

「でも、ターンとか止まる必要ないから意外と走りっぱなしの方が楽なんだよ。ペースも上げなくていいし。」

その理論は運動の苦しみを一度乗り越えられるものの特権だろとは思ったが反論する元気を走りに回そうと思いここは素直に従った。


3分完走は散々だった。

厳密にいうと2分でリタイアしたから完走ではないが。

始め、私はペースがわからなかった。ただこの感覚は今日3度目。

さらに隣には木之下がいる。ペースメーカーにしてやるぜと思った。

1分耐えた。そこから30秒は突き放され、等加速度運動で減速していき、2分を回るころには静止した。

言葉にはならなかったが大学でもテニスをしている木之下との明確な差を感じた。

テニサーは飲みサーじゃないのか?それともポテンシャルか?

「大丈夫?立てる?」木之下に介護された。

私はまだしゃべることができなかったため、感謝の意を込めて合掌だけしておいた。


帰宅した。今日という日が大学生活で一番しんどかったのではないか?

そうに違いない。筋肉痛を久しぶりに思い出すだろう。

あの後は私の限界を感じ取り、お昼ご飯を食べて少し買い物をしてから解散した。

「これ明日もするのか。」

目の前には借りたサッカーボール。手元には日記。

明日からが少し不安だ。木之下がいなければなにもクリアできなかったのでは?

どうしようか。クリアできなくても行動することを忘れないようにしたい。

あることを思いつく。

「日記の続きを書こう。」

これを習慣化させて朝と夜に現状確認だ。

自室の中途半端に片づけが行われた状態を見て、これも記そうと思った。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

2月10日 今日の目標 ー逆上がり

            ーリフティング10回

            ーシャトルラン30回

      達成 ー逆上がり

      明日の目標 ーリフティング10回

            ー走り込み

            ー部屋の掃除

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

こんなものだろう。もう少し他の目標も見たかったが体に余裕はなく力尽きた。


ありがとうございました。

御意見・御感想あれば是非コメントをお願いします。

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― 新着の感想 ―
「家が遅延」などといった登場人物独自のキャラクター性が確立されていて面白かったです! 続編待っていますので遅延には気を付けてください。
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