↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
姉と妹が国民的女優ですが、俺は機械をいじっていたい  作者: よんまるよん
第二部「世界が広がっている」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
74/279

春を告げる鐘 台本 Part3

S-20 茉莉の部屋 朝 (5月)

茉莉、目を覚ます。

天井を見る。

頭の奥に鈍い痛みがある。

起き上がる。サイドテーブルから薬を取る。水で飲む。

窓の外。光が入っている。

ナレーション(茉莉)

「薬を飲んでいる間だけ、自分が病人だと思う。

それ以外の時間は、できるだけ忘れることにしていた」

茉莉、立ち上がる。制服に着替える。

鏡を見る。一秒だけ。

鞄を持つ。


S-21 病院・診察室・回想 (転校前・冬)

白い部屋。

茉莉、椅子に座っている。両親が隣にいる。

向かいに医師。

医師、ホワイトボードに何かを書く。

カメラ、ホワイトボードに寄る。

「神経膠腫 グレードⅣ」

医師、続けて話している。声は聞こえない。

図を描く。脳の断面図。腫瘍の位置を丸で囲む。

カメラ、茉莉の手元に寄る。

膝の上で、手が静かに握られる。

医師、別の紙を出す。数字が書いてある。

母、その紙を見た瞬間に顔を伏せる。

父、壁の方を向く。

茉莉、二人を見る。

それから医師を見る。

うなずく。

回想、終わる。


S-22 茉莉の部屋 朝 (現在に戻る)

茉莉、ドアを開ける前に少し止まる。

茉莉

(小声で)「今日も、忘れる」

ドアを開ける。


S-23 ダイニング 朝

母、朝食を用意している。

茉莉、席に座る。

母

「今日、しんどくない?」

茉莉

「大丈夫」

母

「昨夜、起きてたでしょ。音がしてた」

茉莉

「ちょっと眠れなかっただけ」

母

「……病院、来週だよね」

茉莉

「うん、分かってる」

間。

母

「学校、楽しい?」

茉莉

「楽しい」

母

「友達は?」

茉莉

「いる。葵ちゃんって子と毎日帰ってる」

母、少し表情が和らぐ。

母

「そっか」

茉莉、トーストを食べる。

母、茉莉の横顔を見ている。

茉莉、気づいているが、何も言わない。


S-24 登校・校門

茉莉、歩いてくる。

葵が校門の前にいる。

葵

「遅い」

茉莉

「ごめん、薬探してた」

葵

「頭痛薬?」

茉莉

「うん」

葵

「毎日飲むの?」

茉莉

「必要な日だけ」

葵

「今日は必要な日だった?」

茉莉

「……うん」

二人、並んで歩き始める。

葵、それ以上聞かない。


S-25 教室 授業中

茉莉、板書を写している。

隣の葵が見える。

ノートを取っている。何も考えていないような顔。

ナレーション(茉莉)

「葵ちゃんには時間がある。

それが当然だと思っている。

その『当然』が、私には眩しかった」

授業が続く。

先生の声。チョークの音。

茉莉、窓の外を一瞬見る。

また板書に目を戻す。


S-26 非常階段の踊り場 昼休み

茉莉と葵、弁当を食べている。

茉莉

「葵ちゃん、将来どうするの」

葵

「まだ分からない」

茉莉

「何か興味あることは?」

葵

「特にない。茉莉はどうするの」

茉莉

「どうしようかな」

葵

「続きは?」

茉莉

「ない」

間。

葵

「……似たようなもんじゃん」

茉莉

「似てないよ」

葵

「どう違うの」

茉莉

「葵ちゃんはこれから決まる。私は……」

茉莉、少し止まる。

茉莉

「なんでもない」

葵

「なんでもなくなかった」

茉莉

「なんでもない」

葵、茉莉を見る。

茉莉、弁当に目を落とす。

茉莉

「ごめん。変なこと言った」

葵

「謝らなくていい」

間。

茉莉

「葵ちゃん、やりたいこと、早く見つけてね」

葵

「……なんで急に」

茉莉

「見てたいから」

葵、返事をしない。

風が来る。

二人、しばらく黙って食べる。


S-27 放課後・帰り道 夕方

葵と茉莉、歩いている。

茉莉

「葵ちゃんって、誰かのために何かしたことある?」

葵

「どういう意味?」

茉莉

「自分が消耗してでも、その人のためにやりたいと思ったこと」

葵

「……分からない」

茉莉

「そっか」

葵

「茉莉は?」

茉莉、少し間を置く。

茉莉

「ある。今もそれをやってる」

葵

「誰のために」

茉莉

「ひみつ」

葵

「……なんで聞いたの」

茉莉

「気になったから」

葵、返事をしない。

「今もそれをやってる」という言葉が、葵の頭に残る。


S-28 帰り道・住宅街 夕方

葵と茉莉、歩いている。

茉莉、少し後ろに遅れる。

葵、気づかず歩いている。

茉莉の視野の右端が、一瞬白くなる。

茉莉、立ち止まる。三秒。

葵、振り返る。

葵

「どうしたの」

茉莉

「なんでもない。転んだかと思って」

葵

「転んでないじゃん」

茉莉

「転ぶ前に気づいた」

葵、少し見る。

茉莉、笑っている。

葵、それ以上は聞かない。

二人、また歩き始める。


S-29 分かれ道 夕方

葵

「また明日」

茉莉

「うん。また明日」

茉莉、歩き始める。

少し行ったところで、振り返る。

茉莉

「葵ちゃん」

葵

「何」

茉莉

「今日も来てよかった」

葵、返事をしない。

茉莉、また歩き始める。今度は振り返らない。

葵、その場に立ったまま見ている。


S-30 茉莉の部屋 夜

茉莉、机に向かっている。日記を開く。書く。

ナレーション(茉莉)

「葵ちゃんに話したくなった。

でも話せない。

話したら、葵ちゃんが変わる。

葵ちゃんが普通でいてくれるから、私もここにいられる。

やりたいこと、早く見つけてね、と言った。

見てたいから、と言った。

これは本当のことだ。

嘘じゃない」

茉莉、ペンを置く。

日記を閉じる。

電気を消す。

暗転。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。