第三十一話 へいおん
真理愛──
~1月4週目~
放課後。クラスに居ても、もう誰も話しかけてくれない。
聖奈ちゃんも……目を合わせてくれない……避けられてる……。あたりまえだ。
帰りの支度をしていると、クラスメイトが話しかけてきた。もう1人は、今日はいない……。
「まりあっち~」
「なに」
よく話しかけてこれるよね……人の彼氏と遊んでおいて……。
「あ、あははおこだよね~いやでも今回は有益な情報」
こいつみたいに馬鹿だったらどれだけ楽なんだろう。
適当に遊んで、適当に男に寄生して、何も考えなければどれだけ楽なの……いっぱい考えている私が馬鹿みたい……。
「北条と南雲くんが喧嘩してたんだって」
ふっと顔を上げてしまう。
「お、やっとこっち向いてくれた」
にや~って嫌な笑顔を見せる。むかつく。むかつくけど……今はその情報が必要だった。
「南雲くんがめちゃくちゃ落ち込んでるんだって……今ならチャンスかもよ」
がっくんなら、がっくんなら私のことを……救ってくれる……?
~2月1週目~
あと1か月で学年末試験……がっくんにお願いしたのに勉強会は行えてなかった……。だから、がっくんに勉強を見てもらおうって……そう考えた……。
嘘……がっくんに近づくための口実……がっくんと元に戻りたい。がっくんの彼女になりたい……だから……。
「あのね、がっくん……今日くらいから試験勉強、一緒にしよう?」
今までで一番ドキドキした。
放課後、下校するがっくんを追いかけて、話しかけた……。一緒に並んで帰るのは断られなかった……だからお願いした……勝ち目なんてない。勝手に距離を空けたのは自分。がっくんが、受ける理由なんてない……身勝手なお願い……。
「あぁいいぞ。今日以外はいつできそうだ?俺もバイトあるから……」
いつもの笑顔でそう言ってくれた。泣きそうになった……でも泣いちゃだめ。
「じゃあ……」
スケジュール表を見る振りをして、がっくんから目を逸らした。油断したら泣いちゃいそうだから。がっくんに心配……かけたくないから……。
学──
「あのね、がっくん……今日くらいから試験勉強、一緒にしよう?」
クラスメイトから噂を聞いていた。
真理愛が西片と別れたこと。その後、クラスで孤立していること。仲良くしていた聖奈さんの彼氏とあんなことしていれば……そうだろう。
だから……俺に戻ってきた、戻ろうとしていることも知っていた。
「あぁいいぞ。今日以外はいつできそうだ?俺もバイトあるから……」
俺も大概壊れ始めていた。顔は笑顔、心は阿修羅。
俺から離れなければ良かったのに。1人だけじゃ満足できなくて2人目にも手を出したのか。
そして次は俺か?
嫉妬
俺の言うことを聞かなかったのは自分じゃないか。話しかけることもやめたのは自分じゃないか。
幼馴染と言葉を交わしながらも、心の中が大嵐だった……。
「よろしくね、がっくん!」
気づいたらいつの間にか、家についていた。




