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幼馴染が急に距離を置き始めたので、少林寺拳法始めてみました  作者: 10kg痩せたい
幼馴染篇

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第三話 分岐点

学──


~5月2週目日曜日~


 幼馴染が俺の家を訪ねてきた。


「あのね、がっくん。この前のカラオケ行ってきたよ!」


 幼馴染がとても楽しそうな、いつものにへ~っとした笑顔で俺に報告してくる。


「そうか、よかったな。真理愛!」

「うん!」


「これからもね、たまに遊ぼうってうちのクラスの日外さんとか西片くんに言われたんだ!」


 すぐさま俺は脳内データベースにアクセスする。

 日外(あぐい) 聖奈(せいな)さん。真理愛の一番仲の良いクラスメイト女子。真理愛よりも頭半分くらい背が高くて茶髪ショートボブ。少し話してみたが、活発的な印象があって男子ともスポーツの話題で仲良く話すような子だった。

 西片、名前はしらん。興味もない。幼馴染につく虫だ。殺虫剤を撒いてやれ。男、サッカー部、陽キャ。死ねばいい。


「そ、そうなのか。たまになら……参加してもいいんじゃないかなぁ!」

「うん!」


 努めて明るくそう言った。笑顔がきちんとできていたかは自信が無い。幼馴染はというと、いつもの笑顔で日外さんとあれを歌ったこれを歌った、帰りに二人でアクセサリーを見に行ったという話題だったので俺は安心した。


 でも俺は……。

『行ってみても良いんじゃないかな!』

 自分が発した発言を今になって後悔していた。


 俺の幼馴染は控えめに言っても超可愛い。顔に幼さが残っているので黒髪ロング清楚系でも可愛い感じだ。道行く人に聞いても100人中100人が彼女を可愛いと言うだろう。なぜなら俺とのデートの時、彼女を見て振り向かない男はいない。なんだったら若い女性やお爺ちゃんお婆ちゃんも彼女を見て笑顔になっていた。

 正直俺は不安を抱いていた。


「ねぇ、また今度、がっくんともカラオケ行こうね!」

「いく♪」


 俺の心配は霧散した。




~5月3週目土曜日~


 約束通り、俺と幼馴染はカラオケに行った。

 この前来た時と同じサイズの5人くらいが定員の部屋だ。俺が適当に座ると……幼馴染が真隣に座ってきた。幼馴染はいつものにへ~っとした笑顔で俺のことを見上げていた。

 ぴったりくっ付いたまま歌ったり、俺がマラカスで応援したり、ちょっと疲れて雑談したり……その間ずっと幼馴染はピッタリ俺の横にいた。最近変えたと匂いを嗅がせてきたシャンプーの香りがした。

 いやあの俺も年頃の男子高校生なんですけど。ふとももくっついてるんですけど。なんだったらたまに……胸、当たってるんですけど。これはちょっと気を付けてもらわないと危ないぞと俺は言葉を発する。


「真理愛、ちょっと距離近い」


 ポッと顔を赤らめる幼馴染。うつむいてしまい、か細い声がギリギリ俺の鼓膜を刺激した。

「ごめんね、でもがっくんだけだからね」


 俺はラブソングを熱唱した。




 まだまだ盛り上がりはこれからだというところで休憩タイムを取ることにした。

 幼馴染がトイレへ行き、俺もドリンクバーを取りに外へ出た。俺がジンジャエールに幼馴染はメロンソーダだ。

 注ぎ終わって戻ろうとしたところ、通路の先で幼馴染が誰かと話している。少しチャラい明るい茶髪の男だ。

 ナンパ……ではなさそうなので、クラスの友達か?……何を話しているのかは聞こえないが……立ち聞きはマナー違反かと先に部屋へ戻ることにする。




 幼馴染が帰ってくるまで時間にしたら2~3分のはずだけど……もっとずっと長くに感じた……。

 ドアを開けぴょこんと幼馴染が入ってくる。


「クラスの西片くん達もカラオケ来ていたみたい~」

 にへ~っとした笑顔で幼馴染が報告してきた。

 可愛い幼馴染を見て心がほんわかしたが……俺はモヤモヤした気持ちを捨てきれないままだった……。




~5月4週目~


 それからも幼馴染が我が家へ遊びに来る度、クラスメイト達と遊びに行った報告を受けた。基本的には女の子同士で。たまに女の子グループの中に男子が混ざったりということだった。


 俺はある程度安定した幼馴染との関係に油断していたんだと思う。

 ある土曜日、幼馴染がお出かけした帰りにそのまま俺の家に寄ることがあった。


 俺の部屋に入ってきて、5分ほど俺の様子を伺っている。

 ようやく踏ん切りがついたのか、幼馴染はこう言った。


「あのね、クラスの男子が私にこ……好意をもってくれているみたいなの……」


 震えた声で……少し頬を赤くし、うつむき加減で俺に伝えてくる。相手は聞くまでもない。西片くんだろう。

 どういう会話があったかはわからない。ただ「女の子として興味あるよ」と言われたそうだ……。

 たしか西片くんとやらは、やたら美形な幼馴染が俺のクラスいて、こっちのクラスに来ることもあった。てっきりそっちと付き合っているものだと思っていたから寝耳に水の報告だった。


「この前のカラオケでもね、隣の席に座っていっぱい喋ったんだ……どうしたらいいかな?」


 俺は頭が真っ白になり俯いて……何も答えられなかった。


 ……30分くらい幼馴染は俺に話しかけたり様子を伺っていたが、「うん」とか「あぁ」くらいしか答えられない俺を見て……。


「ごめんね。……帰るね」


 俺は返事も、見送ることも……できなかった……。




~6月1週目~


 平日の放課後。帰宅中に幼馴染がこう切り出した。

「あのね、がっくん。……西片くんに映画へ行こうって誘われたの」

「やめてくれ」


 俺は一息も間を空けず幼馴染に強く声を上げてしまった。


「そ、そうだよね!断るよ!」

 幼馴染はちょっとびっくりしたものの、どこか嬉しそうな表情で断る、と断言してくれた。




 その週は学校にいても、家にいても幼馴染のことが頭から離れなかった。

 真理愛は俺のだという心と、真理愛は一人の女性だ。自由に友人たちと遊んだり恋愛するべきだ。という心が絶えず争っていた。


 その日、幼馴染はクラスメイトの日外さんと遊ぶと言う事で先に帰った。

 放課後の教室で動き出せずいつまでも悩んでいたら……声をかけてくる人がいた。


「ちょっとお話良いかしら」

 クラスメイトの北条(ほうじょう) 時子(ときこ)、西片くんの幼馴染であった。





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