第二十二話 辱め
真理愛──
~クリスマス翌日~
あの後ハルくんのところに戻ったけど、顔を見られなかった……気分が悪くなって、ごめんねと帰らせてもらった……。
ハルくん、怒ってたな……。
あと、今日も君のことを裏切ることになって、本当に……ごめんね……。
今、私はコーキくんの家に向かっている。
気分が重い。行きたくない。なんでこんなことに。
ずっとそれが頭をグルグルしてる。
コーキくんの家はハルくんの家の隣の駅からの方が近かった。降りたことのなかった駅。降りても彼はいなかった。10時って言ったよね……。
スマホを開くと、今起きた。買い物してきて。って……ほんとうに最低……。
ハルくんなら……!……ハルくんもデートに遅刻する人だった……友達って似るのかな。
私はこんな時に思い出しちゃいけない幼馴染のことを思い出す。
彼氏と他の人を比べるなんて……最低だよね……でもがっくんなら、絶対に待たせなかった。
文庫本を読んでたり、周りを散歩してたり、私が待ち合わせ場所に行けばいつも先にいた。
この前会ったけど、しばらく話してなかったな……。
駅前のドラッグストアに寄る。リストになかったけど絶対に無いと困るからコンドームを籠に入れた。
飲物、パンとカップ麺。お菓子を入れて会計に行く。
コーキくんって家族が忙しいのかな。……今日いないよね。
私はドラッグストアを出て、緊張してコーキくんの家に向かって歩き始めた。
歩いて5分くらい。メッセージで共有された住所は……割と高そうなマンション。
でも、家族向けっていうよりかは単身向け?嫌な予感がする。
『部屋番403で鳴らして』とメッセージが届いていた。
こういうところ来たことないから戸惑ったけど、エントランスにある数字の書かれたインターホンに入力する。数秒待つと、自動ドアが開いて『入って』とコーキくんの声がする。
自動ドアをくぐり、道なりに進んでエレベーターに乗る。4Fを押して動き始めたところで、本当に何しているんだろう……と後悔する。
帰りたい。けど帰ったらハルくんにバラされて私は終わる。恋人としてだったらまだいい。浮気もばれたらクラスの居場所は?学校の居場所は?と考えると私に取れる選択肢はとても少ないことに気づく。
いつの間にか4Fについて、扉が開いていた。故障してくれたらよかったのに。
401……402……403。あっという間についてしまう。ドラッグストアのビニールをぎゅっと掴み、インターホンを鳴らす。
カチッと鍵が開いて、ガチャリとドアが開けられた。眠そうな顔のコーキくんがそこにいた。
「……ふ~ん、かわいい恰好してきたんだ」
最近の服はハルくんの好みに合わせていたから、手持ちはみんな可愛いコーデになっている。だからそれを着てきただけだ。コーキくんに見せるためじゃない。
「あの……ご家族は……?」
「言ってなかったっけ?ここ、俺ひとり。親は妹の学校関係で西の方」
緊張が一段強くなる。
「まぁ入んなよ」
「……おじゃまします」
「念のため言っておくけど、これは防犯のためだから」
カチッと鍵をかける音。
「そう……」
「帰るときはここ開ければ出られるから。下も自動ドア」
「帰っていいってこと……?」
「好きにすれば」
と彼は笑う。意味は、とても嫌だけど理解した。
「じゃあ、さっそく……」
ビクリと体が揺れる。
「飯ちょうだい」
お腹を押さえるコーキくん。
リビングに移動し、ドラッグストアの袋をコーキくんに渡す。
1人……なのに部屋が広い。私はなんとなく部屋を見渡した。
オシャレなキッチンに家具が揃ってる。散らかってるのかなって勝手に思っていたけど、とても整理されている……。
「おーありがとー」
コーキくんは袋を受け取ると中身を確認する。カップラーメンを取り出し包装をビリビリ破きお湯を沸かし始める。パンとか他の買ってきたものを確認している。
「さんきゅー、レシートはこれね。……はい、買い物代」
パッと財布から5千円札を取り出し渡してくる。
「多いけど?」
「良いっしょ。俺細かいの嫌いだし」
自分の財布にそれを入れようとして、油断した。彼の目的は理解していたはずなのに。スカートをめくられる。
「やめてっ!」
言っててわかっていた。やめるわけはない。彼は今日この場の王様なのだから。
「ずいぶん可愛いパンツはいてるじゃん。マリーちゃん、今日もやる気満々だね」
馬鹿だった。普通のパンツで良かった。見られるかもとハルくん用に買った下着をつけてきてしまった。
ゾクリとする。またあの冷たい目だ。
「……こっちにお尻向けてよ」
コーキくんはしゃがんでスカートを持ち上げる。
「いいねぇやっぱりセーナよりお尻おっきくてふわふわしてる」
無遠慮に私のお尻を撫でてくる。
体を強張らせていると、手が離れてコーキくんがキッチンに戻っていった。
沸かしていたお湯のスイッチを消す音がした。
少しホッとした。
「メシ……いいや……」
「……えっ?」
「……やっか」
こうして悪夢は始まった……。
全部が終わった後、タオルで拭かれて……ドライヤーで髪を乾かされて……服を着せられる……。
3時間くらい……だと思う。時間の感覚もおかしくなっていた。
私はコーキくんのおもちゃにされた。
「パンツは生乾きだけど勘弁」
もうどうでも良かった。
「あのさぁマリーちゃん。今度4人で旅行しようぜ」
帰る支度をしていたら、ふいにそう言われた。
絶対に何かする気だ。でも……断ったらどうなるか……。
「ハルの爺ちゃんの家がさ、爺ちゃん亡くなってから別荘みたいになっててさ」
「……」
「嫌だよね?でも断れないよ」
またニコニコ笑う。
「マリーちゃんも協力よろー♪」
ただ……頷くことしか出来なかった……。
コーキくんが疲れて寝るというので、私は部屋を出た。
誰もいない廊下を歩きながら、涙がこぼれる。
「誰か……私を助けてよ」
静かな廊下に声が響くけど……その声は誰にも届かなかった……。
学──
~12月5週目~
例のファミレス
「おっすー」
「また遅刻か」
「いや、昨日は楽しみすぎました(笑)」
「はいはい。で、どうなった」
「同意おっけー、いけるっしょ」
「わかった。じゃあ4人でいろいろ予約を進めておく」
「年始旅行楽しみだね~♪」
「お前にはいつも助けられるよ」
「いいってことよ?」
「お前は夏に旅行したんだっけ?」
「うんにゃ、だから初旅行だね」
「じゃあまぁ4人で楽しみますか」
「夜もね~」
「こういうところでは控えろ。誰が聞いているかわからない」
「あいあい~」
幼馴染は順調なようだ。まだ、幼馴染を気にする気持ちが残っていたようだ……。
折れた折れた全部折れた。もう今更なんだろうけど、どうか真理愛、君は幸せになってくれよな……。




