おまけ三話 時子デート
時子──
「デート楽しかったみたいねプクー」
「時子の予定も入れてるぞ」
「え!?聞いてないわよ!」
「言ってないからな(ニヤリ」
「じゃあ行くか!」
「えっ!今から!?」
金曜日の夜。仕事終わりに唐突に始まったデート。
このシチュエーションは、初めてかもしれない。
彼と街を歩くのなんて、いつ振りだろう。
大学の時には、もう無かった。
高校生の……ううん、一年生の夏から二年生の前半くらいだけ。
そこからはもう受験勉強と仕事漬けの日々だったから。
真理愛さんと聖奈のこともあって、本当に忙しくて……でも終わった今考えれば、とても充実していた。
おかげで今こうして、皆で幸せになれている。
で、今日は居酒屋?え!私来たことないけど!ど、どうすればいいの学!ドレスコードはあるかしら!何も知らない!
慌てる私を見て、学は笑う。
時子の初めて、また貰っちゃったって……。
そこは不思議なお店。
道路にテーブルが並べられ、サラリーマンさん達が話してる。
パッと見だけれど、全然違う会社の人なのに。年齢も何もかもがバラバラな人達が楽しく飲んでる。
そして、なんでカウンター席にはバニーさんがいるのかしら?おいしそうに焼き鳥を頬張っている。
ここが美味しいんだ、って学が座る。
私が紙のメニューと格闘している間に、学がいつの間にか注文してくれた。
「ごめんなさい、全然わからなくて」
「あはは、だよな。俺も初めは戸惑ったよ。……ここ実は時文さんに教えてもらったんだ。お義父さんも一緒に来てね」
「え?」
「お義父さんから時子のことを頼むよって、この席で言われたんだ。凄く反省していたよ」
「……そう」
「まぁ、爺さんはいつも通りだったけどな」
……ふふふっ。なんだか、3人で飲んでる姿が簡単に想像できた。
「おっと、この後行きたいところがあるから、お酒は控えめにな」
そろそろ日を跨ぐかなって頃に、ホテルにあるナイトプールというところに連れてこられた。水着なんていつの間に用意したのよ。
それに、貸し切り。本当にあなたは独占欲が強いのね。
「ねぇ、あれしてよ」
「あれ?」
「お姫様抱っこ」
「任せとけ」
これの初めては聖奈に取られちゃった。今思い出しても、ちょっとムカつく。
「ねぇ学、なんでしてくれなかったの」
「え?……あ~~~~~したけど……大体気絶してたな」
「なっ!」
「俺の初めては時子だよ」
こういうところ!こういうところがダメなのこの人!聖奈をあんなにあっさり落として、真理愛さんを蕩けさせた悪い人!
そっと、学が近づいてくる。
「時子、結婚してくれ」
「回答、要りますか?」
「要ります」
「わかりました。簡潔に説明します。私はとっくにあなたのものよ、学」
そして、キスをする。
部屋に戻る。私は学に抱きついたまま。
「今日はずいぶん上機嫌じゃないか」
「だって、だって全部うまく行ったんだもの」
「絶対だめだって思った」
「拒絶されるかもって思った」
「でもそれがうまく行ったんだもの!それにこれからも!」
「……時子は本当に、真理愛と聖奈を嫁にして、よかったのか?」
「ええ、良かったのよ。だって、あなたなら3人とも幸せにしてくれるじゃない」
「それに……私はあの2人にだって負けないんだから」
「……じゃあそろそろ本気を出していいんだな」
「………………………………………………………………え?」
学の熱い手で腰をグッと寄せられる。
目が本気だ。嘘を言ってない。
「待って……学、待って……どういうこと!?」
「そうだな、今までのは、俺の愛の半分くらいだったんだ」
……待って!うそ!あれで半分!?
「ガクガク震えてるぞ、受け止められるのか」
私のことを挑発してくる旦那様。
「わ、私を誰だと思っているの!南雲学の奥さん、南雲時子なんだから!」
「2人も多くお嫁さんを取らせたのに?俺が2人としてても嫉妬しないのか?」
「…………………………するもん」
「ん?」
「嫉妬するもん!私が言いだしたことだけど本当は学の事、独占したいもん!でも、これが……私も含めてみんなが一番幸せになれる形だったんだもん」
学が私の頭を撫でる。
「そうだな、偉いよ時子」
「……………………じゃあ、今晩だけは時子専用になるからな」
そうして、『私たち』は幸せになる道の1歩目を踏み出した。




